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60 新戦術

とりあえず空いた所領は一旦豊臣家に預かりにし光秀は大老を再招集した。


「次は内府じゃ。以前私が話した通り徳川内府の隠居及び出家、家督は結城少将に譲り江戸中納言(家康三男、秀忠)は廃嫡。所領も三河と遠江に減転封ということでよろしいな?」


光秀が他の大老に聞いた。


「本庄殿に異存無し。」


5人が言う。


「会津殿(氏郷)及び佐竹、伊達、最上などの東北の諸将は内府が抵抗した時に備え軍の準備を。他の方も厳戒体制を崩さないように。」


「上使は誰に致すのですか?」


秀家が聞いた。


「藤堂佐州と大谷刑部にやらせようかと。大谷刑部は奉行衆で一番優れた男と心得ておる。」


それを聞くと他の者も同意した。


「それと私は加賀大納言殿の跡を継ぎ近々大納言に任ぜられる事になった。まずは各々方にお伝えしようと思い。」


「おお、これはおめでとうございまする。」


氏郷が頭を下げると他の者も頭を下げた。


その後氏郷は至急会津へ向かい東北の諸大名と連絡を取りあった。

そして軍の配備が完了したと氏郷から報告が来ると光秀は伏見城に高虎と吉継を派遣した。


「徳川内大臣家康は此度の騒乱にて七将の行動を黙認し石田治部を亡きものにしようとし張本人である。これは惣無事令に違反するものであり太閤殿下及び豊臣家への謀反行為に等しく、江戸130万石を召し上げ三河、遠江54万石へ移封とする。」


高虎がそれを読み上げるとむしろ家康や家臣達はニヤついた。


(ワシが三河を望んでおることを分からぬとは……まだまだ甘いのう秀政。)


「また家康は責任を取り八丈島へ配流し出家せよ。江戸中納言秀忠は家督継承の権利を失い、結城少将秀康がこれを継ぐものとする。」


吉継がそれを言うと皆驚きザワついた。


井伊直政ら家臣が反論しようとするとそれを察知した高虎は


「なお、この取り決めは大老衆の合議によって決定されたことであり反抗するなら明日にも江戸を堀大納言及び蒲生中納言ら東国の軍七万が包囲する。」


そう言われると家康も言い返せなかった。


「また、当主の責任は家老にもあるとして本田佐渡守は土佐長宗我部家にて預かり井伊侍従は九度山にて蟄居とする。以上、豊臣権中納言秀頼。」


誰もが絶句した。


「はめられた……」


家康の口から咄嗟にその言葉が出た。

先の前田利家との揉め事の際、光秀は2人を仲裁した。

つまり光秀に家康を捌く程の力はないと家康は思っていた。

しかし蓋を開けてみれば謀反の疑いというだけでここまでの処罰である。


また光秀は本多正信がいれば危険だと分かっていた。井伊直政が反乱を起こせば厄介だとも分かっていた。

だからこそ2人を切り離したのだ。


「反抗するものがいたら即刻首をはねられれば良い。」


豊臣御所にて光秀は結城秀康改め徳川秀康と酒を交わしていた。


「誠に父が申し訳ありませぬ。今後このようなことがないように家中を統制して参ります。」


「うむ。それで私のところからも何人か家臣をお貸し致す故、お使いくだされ。」


「お気遣いありがとうございます。これで当家も安泰です。」


これで光秀は実質徳川家を傀儡化することに成功した。

その後、三河の武断派の反乱もあったがこれを秀康は見事に鎮めた。

ちなめに家康は失意のうちに翌年病死し、廃嫡された秀忠も家康を追うように自害、井伊直政は娘婿の松平忠吉からの仕送りでなんとか生計は立てているが厳しい生活を強いられた。

だが処分を受けた者の中で本多正信だけが屋敷を与えられ、隠居した元親の話し相手として余生を過ごすことになる。


この事件にて加藤清正討伐の大将を務めた小早川秀秋は筑前名島45万石の大名として復帰し藤堂高虎は徳川家の所領の内、下総に20万石の移封となり加藤嘉明の所領と併せ伊予の内16万石は長宗我部信親に与えられた。

信濃の仙石、浅野領合わせて25万石は森長可に加増し、清須には織田秀則改め織田信則が入った。

また光秀はこの騒動の原因となった、朝鮮出兵における過大報告を行った豊後府内12万石の福原長堯を改易に処しそこに立花宗茂との約束もあり大友義統が入った。

加藤清正の所領は15万石は小西行長に、残りの10万石は蔵入地とした。

徳川家康の所領については相模と武蔵は池田輝政が入り72万石となる。

光秀自身は藤堂高虎と下総を分け合ったのみだったが蒲生氏郷にさらに加増し蒲生家は120万石となった。

なお、石田三成も喧嘩両成敗として奉行衆から外さ佐和山城にて蟄居となった。


このうちの半数は光秀による独断でありこれは石田三成ら奉行衆と氏郷と利長以外の大老からの不満を招いた。

そしてもう1人この裁定に不満を持っている男がいた。

細川忠興だ。

同期の輝政や長可、ライバルの氏郷らは皆50万石を超える大大名なのに自分だけはまだ29万石であり明らかに格下であったからだ。

このイライラを察した藤孝はすぐに光秀の元へ向かった。


「あの倅は機嫌が悪うなると手が付けられん。何とかしてくれ。」


藤孝は呆れ顔だった。


「しかしなぁ。分け与える土地がないのじゃ。飛び地は面倒だろうしあと1.2年待ってくれぬか?」


「1.2年で奴を満足させることが出来るのか?」


「但馬と因幡の代わりに筑前、筑後、豊後でどうじゃ?」


「蒲生に追いつかんと奴は納得しないぞ。」


「さすがに信長様の御息女が妻の会津中納言と婿殿が同列は厳しいぞ。とりあえず官位でも与えてやるか?」


「またワシが骨を折らねばならぬのか。それでどこに入れる?」


「左近衛中将でどうだ?」



左近衛中将は忠興のかつての主君、織田信忠の官位であり忠興もそれなら満足するだろう。


光秀の予想通り忠興はこれに満足し喜んだ。

ただこの任官をよく思わなかったのがやはり石田三成だ。


「おのれ……やはり徳川が消えても奴が第二の徳川になっただけではないか!」


三成は何かを書いていた時にその知らせを聞き筆をへし折った。


「物に当たっても状況は変わりませぬぞ。それよりも協力者を増やすことの方が重要です。」


左近が諌める。


「とりあえず、形部を呼ぼう。病が治った奴なら十二分に力を出せるだろう。」


吉継は最近、病が治り以前にも増してその才覚を発揮していた。


「あとは山城守(直江兼続)殿もお呼びするべきかと。あのお方ならきっと殿のお力になりましょう。」


左近の言う直江山城守は上杉景勝の筆頭家老でありながら米沢に与力を含め30万石の領地を持っており三成とも親しく秀吉からも認められている知略の持ち主だった。


「明日にでも2人を呼び寄せてくれ。大納言め……今に見ていろ。」


三成は佐和山城から京の方向を睨みつけた。


「ヘックション!」


「なんだよ……親友が帰ってきた途端にクシャミかよ。」


くしゃみをする光秀をやたらと奇抜な格好をした元親が苦言した。


「もう秋だし私だって歳だ。それよりも何か収穫はあったのか?」


あえて光秀は元親の服装には振れなかった。


「これが一番俺のお気に入りのピストルという鉄砲じゃ。どうだ?小さいだろ」


元親が見せてきたのは片手で持てそうなくらい小型の鉄砲だ。


「何がすごいって火縄銃よりも早く弾が交換出来る。まあこれはサン・フェリペ号の船員が助けた礼にくれたもんだがな。」


よく見るとアルファベットで長宗我部元親と刻印がされていた。


「それはお主の自慢ではないか。それなら私の家臣のイスパニア人でも出来るぞ。」


「新しい戦い方も教えてもらった。戦列歩兵といって鉄砲の数は必要だがかなり効果的だと俺は思ってる。」


「それは気になるな。教えてくれ。」


元親の説明はこうだ。

まず兵士達は号令に従って鉄砲に弾を装填するそして陣形を維持したまま行進して敵陣へ接近し敵陣との距離が55間ほどになった時点で、行進の速度を緩める。27間ほどになった地点で行軍を停止し、号令に従って鉄砲を敵陣に向け、列ごとに敵陣に向けて三段撃ちを繰り返し、敵陣が充分に混乱して陣形が乱れ始めたら、号令に従って銃剣を装着し突撃という戦法だ。


「随分、鉄砲の数がいるな。それの訓練も必要じゃ。」


「それはそうだ。だがもう四国の兵に関しては訓練を始めている。あの船の船長がなかなか気前の良い奴で優れた軍人も鉄砲も寄こしてくれる。お主の所にも送ってやろうか?」


「ぜひ頼む。それから細川、蒲生、池田、森、徳川ら私に与する大名にも送って欲しい。」


「了解。しかし楽しくなってきたな。一気に滅ぼすか?」


「いや、まずは他の大老共の家を掻き乱すとしよう。まずはこやつじゃ。」


そう言って光秀が地図に小刀を突き刺した。

突き刺されたのは備前。

宇喜多秀家の事だった。


おまけ

大名配置図


挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)

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