5 再開
短い割に更新頻度が遅くてすみません
数日後早速秀吉からの使者が到着し秀政達は秀吉が陣を構える大坂城へ3000の兵と共に向かうことになった。
「久しぶりの戦で腕がなりますのう!」
利三は楽しげだった。
「うむ。しかし相手はかの今川義元公と太原雪斎殿が育てた家康ぞ。それに対して筑前はそこまで野戦には優れておらぬ。気は抜かるなよ。」
「それを補佐するのが今の殿の役目でございましょう。」
「直政の言う通りじゃな。」
この時点で光秀は秀満と利三をそれぞれ直政と利宗と呼ぶことにしていた。
「そう呼ばれると違和感がありまする。」
「しかしお主は今は堀直政で内蔵助の弟ぞ。」
「そうでございますな。」
そうこう話しているうちに一行は大坂城へ到着した。
大坂城の広間に入ると既に諸将が座っていた。
最前列には前田利家、池田恒興、丹羽長重、森長可、蒲生氏郷、細川忠興らが座っており秀政もその列の端に座った。
その脇には秀吉の譜代の蜂須賀小六と黒田孝高、そして一門の羽柴秀長と羽柴秀次が控え後方には蜂谷頼隆、金森長近、稲葉一鉄、日根野弘就らが座っている。
稲葉や日根野に対し光秀は決していい感情を持っていなかった。
光秀がまだ斎藤道三に仕えていた頃、この男たちは道三の嫡男で光秀とも幼い頃から親しかった高政を焚き付け道三を討ち自分の叔父の光安を殺したからである。
(道三様を裏切り、齋藤家を裏切り、織田を裏切り……)
「久太郎殿、何をそんなに怒っておられる?」
聞いてきたのは蒲生氏郷だ。
堀秀政とは歳も近く以前は信長の小姓だった事から2人は親しかった。無論光秀はそれを知っていた。
「いや。少し昔のことを考えていただけじゃ。なんともない。」
「ほう、昔の事を。私もたまに考えてそのような顔になりまする。」
「お主は昔何かあったのか?初めて聞くが。」
「それは久太郎殿も同じでありましょう。」
「そうじゃな。」
「お二人共楽しそうで何よりでございますな。」
皮肉を込めて言ってきたのは氏郷の横に座っていた細川忠興である。
光秀にとっては娘婿だ。
「ああ。うるさくしてすまんな与一郎。玉殿は息災か?。」
光秀からしてみれば自分の娘のことが気になるのは当たり前である。
しかし忠興の顔色は明らかに悪くなった。
「久太郎殿。忘れ申したか?与一郎は以前玉殿と喋った庭師を斬ったのですよ。」
氏郷が小声で教えてくれた。
「もし玉に手を出そうものなら久太郎殿と言えど容赦は致しませぬぞ……」
「いや。そこまで玉殿を大切にしておるなら亡き日向守も安心であろう。」
「日向守か……」
中央に座っていた丹羽長秀が寂しそうに呟いた。
すると
「秀吉様がいらっしゃいました。」
小姓の声と共に諸将が一斉に頭を下げた。
「皆の者、おもてをあげよ。これより評定を始める!」
秀吉の力強い声が響き渡った。