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52 秀次事件 ⅲ

元親さんは隠居してからはやりたい放題に遊んでます

「なんと理不尽な!天下を取り仕切る上でこれほどまでに理不尽な事はあってはなりませぬ!力添え致す。」


氏郷は光秀から駒姫の話を聞き、光秀についた。


「最上殿は縁戚の伊達殿や他の東北、関東諸将の元へ行かれよ。与一郎や孫次郎は私が説得いたす故、秀政殿は西国の大名の元へ!」


光秀としても西国の諸大名と関われるのは有難い事なので氏郷に感謝した。


まず光秀は長宗我部信親の元へ向かった。

これを聞いた信親はその沙汰に激怒し力になることを約束した。

同様に薩摩の島津義弘も快諾した。


次に向かったのは立花宗茂の屋敷である。


「何たる事!秀次様を処しても満足いかずその妻子までとは……。これは権力の横暴でござる。無論、私は中納言殿に従いまする!」


「かたじけない。大友殿の事は残念であった。」


宗茂の旧主、大友義統は朝鮮出兵での失態から改易されていた。


「私がおそばに居れなかったからです。されどいずれは豊後に……」


「某がいずれ呼び戻そう。それまでは辛抱なされよ。」


「有難き幸せにございます!」


西国一の武勇を誇る立花宗茂は光秀にとって今も後も重要だった。


次に向かった鍋島直茂、吉川広家、毛利秀元らも秀吉に抗議する姿勢を見せた。


「ああ、堀殿。皆、承知してくれた。これで東国の殿下の子飼いや奉行衆以外は殆どが我らに付きまする。」


「こちらの方も皆、参加してくれる。あとは加賀中納言殿に署名を提出しそれを殿下に届けて頂こう。」


「ああ、お二人共!毛利殿、上杉殿、宇喜多殿も承知なされた。あとは金吾中納言殿じゃ。」


金吾中納言こと小早川秀秋は秀吉の妻、北政所の甥で小早川隆景の養子である。


「なるほど!一門の方の名があればより一層良いですな。」


氏郷が言うと光秀も同意した。


3人は小早川秀秋の元へ向かった。

秀秋は秀次事件に関与した可能性があるとして丹波亀山を没収されていたため不貞腐れていた。


「叔父上の最近の横暴には私も我慢ならぬと思っておったところ。力になりましょう。」


こうして小早川秀秋を始め前田利家以外の年寄衆、伊達、最上、佐竹、池田、織田、森、真田、前田利長、細川、藤堂、吉川、毛利秀元、長宗我部、黒田、立花、鍋島、島津ら有力大名らによる駒姫の助命嘆願が前田利家に届いた。


「殿下よりこれに関しては来週の誓書への署名の際にお下知が下る。それまでは騒がぬようにとの事じゃ。」


利家が光秀、家康、氏郷に伝えた。


皆、ここまでの声があれば何とかなるだろうと考えた。


そしてついにその日が来た。

誓書の提出が終わったあと石田三成が言い始めた。


「先日、提出された駒姫の助命嘆願ですが、殿下は謀反人の一族は全て罰せとのご命令です。これは無論、駒姫も同じく。罪人として処せられます。」


それを聞いて諸大名はざわつき義光は唖然としていた。


「なんと……であればどうかご遺体は最上殿の元へ!」


そう言ったのは政宗だ。

駒姫は政宗の従妹に当たるため、政宗としてもこの決断は不満だった。


「ならん!駒姫は最上の娘ではなく、謀反人の妻として処断致す。これ以上騒ぐなら謀反に力を貸したとして処罰致すぞ!」


中央にいた秀吉が政宗を睨みつけた。

流石の政宗も後ずさりし頭を下げ座った。


「処刑は明日、三条川原で行う!以上じゃ!」


秀吉が去った後、皆黙り込んでしまった。

光秀は義光を励まそうとしたが今の義光には恐らく光秀の声など聞こえないだろう。


「輝政の妹は返したくせに。」


長可が呆れた顔でそう言って出て行くと輝政も不満そうに退席した。

それに続き他の大名らも退席し残ったのは秀秋、家康と光秀と義光だけだった。


「最上殿、力になれず申し訳ない。」


秀秋は義光に頭を下げ謝った。

光秀と家康もそれに続いた。

だが義光にはそれすら届かなかった。


結局その後、義光は一言も発すことなく部屋を出ていき3人は残された。


「誠に無念じゃ!せっかくあれだけの大名が力を貸してくれたのに!」


秀秋は悔し涙を浮かべながら畳を叩いた。


「殿下はお変わりなられた……」


家康が言った。

光秀も同意した。


(どこであそこまで畜生になったのじゃ……)


そして処刑の日が訪れた。

三条川原には多くの見物人で溢れフラフラしていた長宗我部元親も人だかりを見てやって来た。


「おい、そこの小僧。こりゃなにしてんだ?」


「なんや、オッサン。何してんのかも知らんのか?あれ見てみ。」


「オッサンってなんだ?俺は土佐長宗我部家の前当主長宗我部元親だぞ!ってありゃ秀次様じゃねえか。」


「長宗我部の先代ともあろうお方がそんなことも知らないのかい?」


そう言いながらある大男が元親を笑った。


「なんだ、お前、どこの野郎か知らねえがその首落としてやろうか?」


「ああ、こりゃご勘弁!俺は加賀の前田利家の甥で今は旅をしてる前田慶次ってモンだ!見ての通り天下一の傾奇者よ!」


その大男が意気揚々に自己紹介する。


「お前、俺と大して歳変わらねえのにそんな格好して恥ずかしくねえのか?利家も泣くだろう。」


「それを気にしないで欲しいね。叔父貴の今の姿の方が泣けてくるぜ。昔はあんなに自由奔放だったくせに今では猿の犬じゃねえか!」


「おお、これは話しが合いそうだな!んで、誰を処刑するんだ?」


「秀次の妻子達さ。なんでも堀秀政と徳川家康らが最上義光の娘さんを助ける嘆願書を出したのに無視されたらしい。」


「ほぉ、そりゃ可哀想だな。」


聴衆がザワザワと騒ぐ中、一向が連れてこられた。


「まだ子供じゃねえか。殺しても意味ないだろ……」


元親は呆れた。

この男は戦場で女子供を殺すことがあっても戦後は必ず供養し戦外では女子供は愚か人質すら殺さないのである。


「秀吉は農民上がりだからそういう所の分別が付かないんだよ。それであれが秀吉の腰巾着の石田治部、あいつと淀殿が裏で手を引いているらしいね。」


「そういや淀殿と治部は同郷だったな。全くやな野郎だ。」


元親と慶次が見届け人の三成を軽蔑した目で見る。


「そろそろ時間じゃ。始めよ!」


そう三成が命じるとまず子供達が処刑された。

そしてその後その子供たちの母親が処刑され親子が重なるように倒れた。

それを見た民衆はザワ付き罵声を浴びせ始めた。


「そない!残酷なことして恥ずかしないんか!?武士としての情けもないんか!?猿の腰巾着!成り上がりもん!人でなし!」


三成やら秀吉やらの悪口が三条川原に飛び交う。


「四国返せ!ついでに淡路もよこせ!」


それに紛れて元親も秀吉への不満をぶちまけた。


光秀はどうなっているのか気になって訪れてみたらそんな声が聞こえてきたので慌てて元親を連れ出した。


「お主、そんな事言うてとんでもない事になるぞ!」


「どうせ、バレやしないさ。それよりうちで預かってる利三殿の息子と京の町衆の所で預かってる明智秀満の息子、そろそろ2人ともいい歳だしあんたのところで召抱えたらどうだ?」


「ああ、それは良き考えじゃ。というか、今その話は良い!それで何だこの騒ぎは。」


「まあ見てみな。」


元親が指さす方向見ると信長の行った虐殺にも引けを取らない光景が浮かび上がっていた。

三成は死体を見るとさっさと戻ろうとした。


「治部殿!手の1つでも合わせて行かぬのか!?」


「謀反人の血を持つものは鬼に等しき存在!左様なものに合わせる手などありませぬ。」


三成はそう吐き捨てるとさっさと出て行った。


「クズめ……」


余計に民衆の罵声がヒートアップする中で光秀は自然とその言葉が出た。


「ま、とりあえず利三殿の息子については信親に聞いてくれ。都にいるのも飽きてきたし今日から俺はこいつと旅に出るわ。」


そう言って元親は慶次を連れてきた。


「勝手にせよ。だがしかし……」


「言わんくても分かってる。とりあえずこれからは信親に相談してくれ。」


そう言うと元親は慶次を連れて西の方へ向かっていった。


すると毛利秀元と吉川広家が馬を走らせてやってきた。


「おお、これは本庄殿。 ここで何を?」


2人が聞いた。


「ああ、手を合わせようと思うてのう。お主らもか?」


「仰る通りでござる。我々にも駒姫を助けられなかった責任がございます。」


広家が落ち込んで言う。


「そう肩を落とすな。それより秀元殿は毛利の跡継ぎを安芸中納言殿のご嫡子に譲られたそうじゃな。」


「さすがは本庄殿、お耳が早い。無念ですが嫡子を差し置いて私がなる訳には行きませぬ。」


「左様か。いずれ私は貴殿に西国をお任せしたいと思うていた故残念じゃ。」


ここに来ても光秀は野望を捨てていない。

光秀の算段としては秀吉に反感を抱いているこの2人を使い毛利家を分裂させ小早川秀秋を含め毛利の両川体制を破壊させそれぞれ独立した大名として扱う算段である。


それゆえ光秀は2人をべた褒めし手を合わせて帰った。


(そろそろ、重利と利光にも会いに行くか。)


光秀は秀満の息子で自身の孫の三宅重利と利三の息子の利光のことを思い浮かべた。


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