47 競合
3番隊が金海城を攻撃するのと時を同じくして釜山に小早川隆景率いる6番隊が上陸した。
「左近殿(立花宗茂)。今のところ戦況はどうなっておる?」
隆景は同じく6番隊の立花宗茂に聞いた。
「小西殿率いる1番隊は破竹の勢いで北進されております。また加藤殿は別進路を取り漢城を目指しておられます。」
「小西殿にあそこまで軍才があったとは驚きました。」
秀包が言う。
「殿下のご期待に応えられるように働いておるのであろう。されど加藤殿が功を焦らなければ良いが……」
隆景は清正が功を焦り失敗することを懸念したがそんなことは無かった。
「鉄砲で押し潰せ!行長には負けてはおれぬ!」
行長へのライバル心からか清正は慶州城をあっという間に落とし1500もの首級をあげた。
しかし同じ日に行長は大邱城、2日後には仁同城を制圧しその進軍スピードに恐怖した朝鮮軍は散り散りに逃げ、行長は残党を掃討しながら尚州を制圧した。
それを聞いた清正も氷川を制圧し行長隊を追いかけ4月29日に忠州にて合流した。
「おい!敵はどこじゃ!小西兵しかおらんではないか!?」
「おおこれは主計殿、援軍に来てくださったのは感謝致すがもう城は落ちておる。」
清正らを出迎えた行長はざまあ見ろと言わんばかりの目で清正に言った。
「貴様!抜け駆けしおったな!我ら2番隊と1番隊で攻めかかると決めておったであろう!」
「戦は早くケリを付けた方がよろしいであろう?それに敵を目の前にして貴殿を待っていては日が暮れてしまう。」
「ワシを馬鹿にするか行長!雑魚狩りをした程度で図に乗るな!」
「童のようにギャーギャー騒ぐならまずは武功を上げられてはどうだ?」
怒鳴り散らす清正に対し行長は余裕の表情だった。
「加藤殿、小西殿はお味方であるぞ。悔しいのはわかるが抑えられよ。小西殿も加藤殿を煽るような物言いはお辞めなされ。」
直茂が二人の間に入り注意した。
「黙れ!外様のものは口を出すな!これは豊臣家の権威に関わることじゃ!」
「何を言うか。鍋島殿も今は豊臣家の一員であられるぞ。田舎者は礼儀の欠けらも無いのう。話しても無駄じゃ。一生そこで文句でも言っておれ。」
直茂にも怒りの刃を向けた清正を行長は軽蔑した目で見たあと城に戻って行った。
それを見て呆れた直茂は1番隊と松浦隆信と今後の進路について相談した。
「このまま進むと南大門と東大門に差し掛かりまする。距離は同じくらいですが南大門はほぼ一直線で進めるのに対し河口付近を渡らねばなりませぬ。対して東大門は道のりは長ごうござるが川を渡る必要はありませぬ。」
松浦隆信が地図を見せて説明した。
「おそらく加藤殿は真っ直ぐ進める方を選ぶであろう。では南大門は我らが、東大門は貴殿らにお任せしても良いか?」
「それでは私は小西殿に確認して参ります。鍋島殿は加藤殿に確認をお願いします。」
「承知した。」
それを聞くと松浦は直茂に一礼して行長の元へ向かった。
直茂も清正の元に向かいその旨を伝えると清正は快諾、行長も同意した。
その頃名護屋城で光秀は秀吉と将棋をしていた。
「久太郎よ。今勝左と元親は何をしておる?」
「勝左様は体調を崩されて寝込んでおられるようにございます。元親殿は隠居されてからというもの堺で遊び呆けておられるようで。」
「なんと!国が戦をしておる時に遊び呆けておるとは武士の風下にもおけませぬ!」
それを聞いて三成は怒った。
「あやつはお主と違うて苦労しておる。まあ1度ここに呼び寄せや。四国統一の話を聞きたい。」
「ははっ。」
三成がそれを伝えに部屋を出た。
「ところで殿下。お聞きしたいことがございます。」
「なんじゃ?申してみよ。」
「なぜ此度の唐入りの先陣を小西殿にしたのですか?加藤殿が怒るのは目に見えているでしょう。」
「あれは、清正を怒らせるためよ。それで清正は行長を抜こうと獅子奮迅の働きをする。そうすれば抜かれまいと行長も働く。こうして競わせることが狙いじゃ。」
「まるでかつての殿下と日向守様のようにござるな。」
信長に仕えていたころ光秀が城を与えられるも秀吉も負けじと働き秀吉が褒美を与えられると光秀もそれに続き2人は競い合っていた。
そして織田家の勢力を広げるのに貢献した。
秀吉は今それを清正と行長にさせている。
「よう分かったな!ワシも信長様を見習ってやったのじゃ。ところで久太郎よ。ワシは信長様を越えられたであろうか?」
突然の秀吉の質問に光秀は戸惑った。
「信長様は日の本全てを切り盛りされた訳では無いので私は答えられませぬ。ただ言えるとすれば信長様にも殿下にも良い所がありどちらも素晴らしいお方だと心得ております。」
光秀は信長を下げることも無く秀吉を下げることもしなかった。
「お主らしい答えだわ。だがワシは信長様のように夢半ばで死にはせぬぞ!」
(その夢を永遠に見させはせぬぞ。)
光秀は笑顔の裏でそう思った。




