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38 不穏

「佐々様はどうなるのでしょうか?」


光秀が恐る恐る聞いた。


「腹を斬らせる。」


秀吉から笑顔が消え冷酷な顔になったを


「待ってくれ!成政に肥後を治めるのはやはり無理だったんだ。俺が変わりに行くから成政は許してやってくれ!」


光秀が口を開く前に利家が言った。


「又左!あいつは太平の世には必要ない!また許せば何をしでかすかわからん。それが分からぬお主ではないだろが!」


「せめて出家か蟄居にしてやってくれ。頼む!」


利家が頭を下げた。


「ダメじゃ。決めたことは変えぬ。それに見せしめにもなるしのう。」


「藤吉郎……」


「すまぬ。又左、許せ。」


(前田はいずれ使えるな。)


光秀にとっては佐々家も今後の立ち回りの上で重要だったが前田家も重要だった。


息子の利長は氏郷と親しいので役に立つのは分かっていたが利家がどの程度織田家から離れているか確かめたかった。


翌月佐々成政は秀吉に謝罪するために大坂城へ向かうものの面会を許されず尼崎に監禁された。


「佐々殿、殿下から切腹せよとの下知がくだりました。」


石田三成からそれを聞いた成政は全てを受け入れた顔をしながら言った。


「猿も随分酷くなったもんだ。あの時富山で切腹しておけば良かった。」


「猿とは無礼な。口を慎まれよ。」


三成が成政を見下した目で言う。


「お前みたいな奉行には武士の苦労は分からんだろうな。例えお主が殿下の側近であろうと官位も禄高もワシの方が上。その態度ではいずれ身を滅ぼすぞ。」


成政の注告を無視し三成は出て行った。


数日後成政は切腹し肥後は北部25万石を加藤清正、南部20万石を小西行長が治める事となった。


その後も九州各地で一揆が起きたが全て鎮圧された。

これにて秀吉の九州平定は完全に終了し西に不安はなくなった。


その年の春秀吉は聚楽第に後陽成天皇を招きもてなした。

その席には豊臣政権の諸大名がずらりと並び再度豊臣政権への忠誠を誓った。

光秀には新たに正四位下右近衛少将と豊臣の姓が与えられた。

この席を前後して豊臣政権の家格が明確に決まった。


この席において光秀は氏郷と共に一門以外では徳川家康、前田利家に次ぐ席を与えられ毛利輝元、上杉景勝より上位となった。


「なぜあの二人があの位置に……」


夕食の席で忠興はまたイラついていた。


「まあ殿下が最も信頼を置く2人じゃ。仕方ないだろう。」


輝政が宥める。


「しかし久太郎殿はともかく氏郷よりもお前ら2人は石高は上だろ。殿下に媚び売るのが下手くそなんだよ。」


長可が2人を小馬鹿にする。


「しかしもっと不満に思っておるのはお主だろう。」


長重の方を見て利長が言った。

またもや長重は秀吉に難癖を付けられ加賀4万石にまで所領を減らされていた。


「もうここまで来ると殺されなかったら何でも良いです……」


織田時代の同期達がぼやく中、足利将軍家に仕えており68万石の光秀はともかく氏郷は戸惑っていた。

それもそのはずで信長の弟織田信包や大大名毛利輝元、上杉景勝らより自分が上座にいるのである。

焦るのも無理はなかった。


「氏郷殿、あまり固くなるな。お主の功を殿下は正当に評価されておるということじゃ。」


「いやぁ。やはりこのような上座に私が座るのは……」


「お前はいつまで経っても真面目だな。気にせずともお前は豊臣家の重臣だろ。」


利家が氏郷の背中を強めに叩いた。


「前田様にそう申されると少し安心致します。」


「前田様なんぞ俺とお前は今や同格、呼び捨てでも構わんぞ?」


「呼び捨ては言い過ぎでしょう……」


光秀がツッコむ。


「ああ堀殿もそのように呼ばれても構わぬぞ。」


「では筑前守殿とお呼びしましょう。」


利家が呼び捨てではなく丁寧な呼び方をしてきたので光秀も官位名で呼ぶことにした。


だが光秀や氏郷より下座に置かれた毛利輝元は面白く思わなかった。


(私は120万石の大名であるぞ……。石高ではあれば最も上座では無いか……)


「毛利殿、お顔を悪くされて気分が優れませぬか?」


不満そうな顔をしている輝元を見て上杉景勝が尋ねた。


「上杉殿、心配には及びませぬ。輝元殿はいつもかようなお顔をされております。」


隆景が輝元の機嫌を察し景勝に説明する。


(また小早川はワシに代わって……。)


輝元は光秀と同じくもう35歳である。

だが光秀と違い今だ叔父の小早川隆景に政に口出しされ不満ばかりだった。

そんな輝元にとって光秀は憧れでもあり嫉妬の対象であった。



もう1人光秀を睨みつけている男がいた。

徳川家の中で従五位下侍従に任ぜられた井伊直政である。


「井伊殿、何を怖い顔をしておる。酒が不味くなるではないか。」


前にいた龍造寺政家が声をかけるも直政には聞こえていない。


(堀秀政……いずれ殺す。)


直政の復讐心に燃える目に気付くものはほとんど居なかった。

一部を除いては。


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