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34 龍造寺

「父上!豊後で島津勢1万と長宗我部勢1万が激突いたしたそうにございます。」


「それでどうなった!?」


豊前小倉城の本丸で寛いでいた官兵衛に長政が使者からの報告を教えた。


「お味方の大勝利だそうで敵の大将島津家久はほうほうの体で逃げ帰ったそうにございます。」


「それは誠か!?まさかこうなるとは……」


「こうなるとは?」


「いやお主は気にせんで良い。それより殿下よりこれより20万の軍勢を動員して九州に向かうとのことじゃ。我等はこれより諸城を調略するぞ。」


「何故調略なのです?力で捩じ伏せてしまえばよろしいでしょう。」


「長政殿はお若い故そう考えられるかも知れぬが此度の戦は殿下による天下統一事業の一環でござる。あくまで戦わずとも殿下のご威光の前に敵が従うという形をとる方が今後の豊臣家の安泰に繋がると官兵衛殿はお考えなのです。」


階段を上がってきた小早川隆景が官兵衛の代わりに答えた。


「左様。左衛門佐殿の仰る通り我らはあくまで殿下に花を持たせなければならぬ。」


「なるほど!某の考えが浅そうございました!」


長政はそれに納得し父と隆景の知略を尊敬した。


「それでお主は肥前の龍造寺のところに行って欲しい。龍造寺が豊臣家に従えばあの辺りの勢力はほとんどが我らに降る。」


龍造寺は先代龍造寺隆信の時代には肥前を中心に6カ国を治めていたが隆信が島津家久に討ち取られてからは重臣鍋島直茂がほぼ実権を握っていた。

その際に島津家に降伏していたが先代の仇である島津家と運命を共にするはずはないと官兵衛は見抜いていた。


「承知致しました!」


長政は大役を任され笑顔になり早速、肥前の村中城へ向かった。


「そちが豊臣家の使者か。かような小僧が使者とは龍造寺も舐められたものよ。のう直茂。」


「政家様。このお方は殿下のご使者ですぞ。左様な言い方はおやめなされ。」


若干20歳の長政を遣わされ龍造寺政家は不満に思ったが重臣の鍋島直茂がそれを抑えた。


「それで長政殿と申されましたな。遠路はるばるご苦労でございます。殿下は我らになんと?」


「はっ。龍造寺家は肥前32万石を安堵いたすとのことでございます。」


「32万石!?」


政家が怒鳴った。


「我ら龍造寺はかつては92万石を領していたのであるぞ!毛利は120万石を安堵されたように龍造寺もその領地を安堵されるのか筋ではないか!?」


「政家様、それは流石に無茶でござる。今の龍造寺家は島津家の家臣、つまり敵でござる。それでも32万石を与えられたとなれば勿体ないくらいでござる。」


直茂がまた政家を抑えた。


「豊後の大友義統も豊後一国37万石のみでございます。どうが抑えてくだされ。」


長政が頭を下げた。


「大友も豊後一国じゃと?なら島津は我らより格下の大名になるのであろうな!?」


「おそらくは薩摩一国、若しくはおとり潰しかと……」


「ならまあ仕方あるまい。ワシらは豊臣についてやる。」


何とか政家を説得した長政は直茂の部屋に案内された。


「先程は我が主君がご無礼を働き申し訳ありませぬ。」


30歳も年下の長政に直茂は深々と頭を下げた。


「いえ。お父上を討ち取られ島津に所領を奪われた政家様のお気持ちはお察ししておりまする。」


「お気遣い無用でござる。我もできる限り政家様の事は補佐するのでどうか龍造寺の事よしなにお頼み申し上げる」


その後直茂に見送られ長政は小倉城に戻った。


「政家は面倒だったじゃろ。」


「はい父上。未だに先代の所領を狙っておるようです。」


「長政よ。豊臣家にはそういう者共が沢山おる。織田、毛利、上杉、長宗我部、そして徳川。この者らから目を離してはならぬぞ。」


「はっ!」


その頃大坂城では


「いやぁ久太郎殿!68万石の大大名とはおめでとうございまする。」


光秀の越前加増転封を聞いた氏郷が光秀を祝った。


「いやいや、嬉しい事ばかりではござらぬ。我らは2年前に丹波に移ったばかり、これではせっかく造った城下町なども水の泡じゃ。それに長重殿に合わせる顔もない。」


「丹羽殿の事は仕方なき事にござる。」


「しかしやはり亡くなった惟住様に面目が立たぬ。」


「あのお方が大切にされた越前を継げるのです。きっと惟住様もお喜びでしょう。」


「だと良いのですが。」


光秀の中で30年前の忌々しい記憶が蘇った。


(秀吉もいずれは高政のようになるのか……いやもっと酷い目に会うに決まってる。)


かつての光秀の幼馴染の斉藤高政もかつて明智家古来の明智城から光秀を加増転封しようとしたことがあった。

その後光秀は斉藤家を追われたが高政はその後まもなく死去し斉藤家は信長に攻められ家中は乱れ滅びた。


つまり秀吉さえ死ねば確実に天下を取れる、光秀はそう思ったのであった。


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