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31 終戦

本来ならここで終戦ではなかったのですが葵徳川三代を見てるとどうしても豊臣政権における徳川家康を描きたくなったので予定を変更しました。

しかし史実よりも弱体化した家康がどこまで史実に近づけるでしょうか?

「あーあー暇だねぇ。」


「人の船に乗り込んでおいてお主はなんなのだ……」


三河湾を埋め尽くすほどの秀吉水軍の中でもひときわ巨大な船、毛利家の日本丸で元親が暇そうにしていた。


「いやぁ戦国最強だった毛利水軍の船にも乗ってみたくてね。」


「なら九鬼殿の鉄甲船の方が良いだろう。さしずめ我らの船の調査でもしに来たのであろう。」


「用心深い左衛門佐殿はそう考えるやもしれぬが残念ながら俺に船の知識なんてほとんどない。無論ここにいる俺の家臣もな。」


元親は煙草を吸いながら言った。


「なんだそれは、煙たくてしょうがない。」


隆景が咳き込みながら怒った。


「ああこれか。煙草と言って体に良いらしい。堺で南蛮の商人から貰った。」


「体に良いかは知らぬがともかく毛利の船で吸うのはやめろ!」


「ああこりゃすみませんね。」


隆景が声を上げると元親は大人しく懐に煙草を戻した。


「隆景様!前方に敵襲を確認!目下100艘ほど。」


乃美宗勝が隆景に報告した。


「あらら。じゃあ俺らは自分の船に戻って攻撃の準備をとるからここら辺で。もてなしどうも。」


そう言うと元親とその配下はさっさと舟に帰っていった、


「殿、結局小早川殿の所に行った用はなんだったのですか?」


長宗我部水軍の大黒丸に戻った元親に甥の吉良親実が聞いた。


「んなもん毛利の船を知るために決まってるだろうよ。いずれはぶっ倒さなきゃいけない相手を今のうちに調べておく訳よ。」


「しかし叔父上は水軍に関して知識はあるのですか?」


「なんのために5年も初陣もせずに土佐をほっつき歩いてたと思ってる。まあ弱点は見抜けたわ。」


「元親、九鬼殿より攻撃の指示が出ている。」


孝頼が走ってきた。


「任された!砲撃準備!よく引きつけて木っ端微塵にしてやれ!」


この当時の海戦は船に乗り込んで戦うのが一般的であり徳川水軍は武田水軍の流れを含む東国風の戦い方であった。


対して織田家の九鬼水軍やその九鬼水軍に大敗した毛利水軍は砲撃と銃撃による遠距離戦闘を主に置いていた。

情報戦に優れる元親はそれ知るや否や雑賀衆の使用する大筒や南蛮で使われる石火矢を入手し更に日本丸に匹敵する大船、大黒丸を作らせていた。


「聞いたな!砲撃用意!」


孝頼が再度命令すると兵達が慌ただしく動き始めた。


徳川水軍は白兵戦をするつもりでどんどんと長宗我部水軍に近づいて行った。


対して長宗我部水軍は一切進まず皆銃器を構え待ち構えた。


その距離は200メートル、150メートル、100メートルとどんどんと近づいていく。

そして50メートルになったところで


「よっしゃぁ!放てぇ!」


大量の銃器が鈍い音を立てながら徳川水軍に襲いかかった。


古い木造の安宅船は一溜りもなく燃えたり木っ端微塵になったり穴だらけになったりして兵達のうめき声や悲鳴がこだました。


まもなく撤退の太鼓が鳴り徳川水軍はしっぽを巻いて逃げて行った。


「装備が時代遅れなのだよ!はっはっはっ」


高らかに笑う元親だったが孝頼はそれを呆れて見ていた。


(僕達の軍だってほんの前まで時代遅れだったじゃないか……)


その頃浜松城では


「中山道方面軍及び我が水軍は壊滅とのこと。もはや勝ち目はございませぬ。」


参謀の本多正信は冷静に事態を分析していた。


「左様、もはやこれ以上の無駄な戦は兵を消耗しお家を苦しめるだけでござる。ここは降伏しかありませぬ。」


本多重次も続いた。


「しかしそれでは死んでいった者共が……」


酒井忠次が言い返そうとした。


「お言葉ですが酒井殿。この戦が始まる前にも我らは同じことを言い秀吉に挑みこの現状でございます。ここは大人しく降伏すべきかと。」


奥平信昌が反論した。


「しかしそれで御家が守られるとも限らぬ。これは思案のしどころでござる。」


高力清長がそう言うと一同も納得した雰囲気なった。


「無念じゃが致し方あるまい、ワシ自ら降伏を伝えに参るとしよう。」


家康がそう言うと皆危険だと止めようとした。


「いや、ワシの意思は変わらぬ。ワシが行くぞ。まずは使者を秀長殿に送ってくれ。」


占領した岡崎城の秀長の元に家康からの使者が到着したのは翌日発送の事だった。


「これは良い報せでござる。無駄な戦をせず敵が降伏するならそれこそが最善の道でございます。」


氏郷が言った。


「どうされるか決めるのは殿下でござる。まずは殿下にこの事を報せましょう。それから各軍の諸将も集め1度相談すべきでござる。」


官兵衛がもっともなことを言うと秀長もそれに頷いた。


報せを聞いた秀吉は早速岡崎城に2万の軍勢を率いて堂々と入城した。まだ光秀も秀次と共に岡崎城に入城した。


そこには秀吉、秀長、秀次、官兵衛、生駒親正、前野忠康、池田恒興、宇喜多秀家、小早川隆景、長宗我部元親、織田信包、蒲生氏郷らが並んでいた。


「さて各々方を集めたのは他でもない。徳川三河守がワシと話をしたいそうじゃ。お主らの意見が聞きたい。紀伊守(恒興)はどう思う。」


「ははっ。中山道の戦を見れば分かる通り、徳川勢は強く団結力も高い。戦いには我らは勝つことが出来ましょうがやはり被害も大きくなるでしょう。ここは無駄な血を流さぬが得策かと。」


「私も紀伊守殿に同じく。三河守は街道一の弓取りにござる。ここで生かしておけばこれより先、殿下のお役に立つかと心得ます。」


隆景も続いた。


「しかしお味方にここまで損害を与えておいた家康をこのまま許すわけにもいかぬでしょう。やはりここは首を斬り所領は没収すべきです。」


宇喜多秀家は家康を殺すべきと考えているようだ。


「宇喜多様、お言葉でございますが飴と鞭という言葉がございます。飴と鞭を交互に与えることで大人しく従わせるやり方でござる。以前我らは逆らった柴田勝家、織田信雄、信孝兄弟を滅ぼしました。しかしここにいらっしゃる宮内少輔殿は以前殿下と敵対した御人、ここは家康には飴を与えるべきかと考えます。」


官兵衛が秀家に言った。


「某も黒田殿に同じく。家康は甲信の所領を召し上げた上で三河、遠江、駿河を安堵し来る北条征伐における先陣として使いましょうぞ。」


光秀も官兵衛に続いた。


「それと三河守を服従させるためにも殿下の妹君の旭様を家康に嫁がせるのは如何でしょう?」


官兵衛がそう言うと氏郷が真っ先に反対した。


「敵対したものに関白殿下ともあろうお方の妹君を嫁がせるなど聞いたことがありませぬ!少し飴を与えすぎでは?」


「飴を与え一門に組み込めば三河守は殿下に感謝し忠節を誓うでしょう。それにいくら三河守とはいえ70万石では何も出来ませぬ。」


「うむ!官兵衛の考える気に入った!早速家康に使者を送るだで。」


秀吉は官兵衛の意見を採用すると家臣の石田三成を使者として向かわせた。


この処分に家康は大変感謝し翌日岡崎城に家臣達と共に訪れた。


「この徳川三河守家康、これよりは関白殿下の家臣としてより一層精進していきとうございまする。」


「うむ!妹の事も頼むぞ。」


「ははっ!ところで殿下にお願いの儀がございます。」


「なんじゃもうしてみよ。」


「殿下の陣羽織を頂きとうござりまする。いつ何時でも我ら徳川家は殿下の先陣を務める所存。」


「おお!左様か!ほれこれはお主に与えようぞ。」


家康からのまさかの要求に秀吉は機嫌を良くして陣羽織を与えた。


こうして徳川征伐は両軍に多大な被害を与えながらも徳川家康の降伏という形で幕を閉じた。


この年の9月、秀吉は朝廷より豊臣の姓を与えられ豊臣秀吉となった。

そして豊臣秀吉の次なる敵は九州であった……。

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