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29 中津川の戦い ⅱ

「逃げるだけじゃなくてちっとはかかって気やがれ!」


ゲリラ戦術を展開してくる徳川勢に長可はイライラしていた。


「ちっ!つまんねえ奴らだ。」


「殿!一大事でござる。戦場中央に敵勢が現れました。本陣に向かってまっすぐ進んでおります。」


「何!?まさかこれまでのは罠だったってのか?」


「恐らくはそういう事だ。今すぐ戻らねば!」


長可と川尻の会話は徳川の忍者集団によって筒抜けだった。


「今じゃ!総攻撃だ!」


内藤が命じると徳川勢は一斉に森勢に襲いかかった。

油断していた森勢は一気に大混乱に陥った。

これは細川勢も同じような状況で秀次勢を守るのは入国したばかりで未だ安定していない越前勢と少数の因幡勢だった。


「皆の者!今こそ2年前の恨みを果たす時ぞ!誇り高き赤備えよ!かかれぇぇぇ!」


ついに井伊直政率いる赤備えが動き始めた。


「秀政様!物見によると赤備えが猛進しているとの事!如何致しますか?」


「まずい!やはり罠だ!早くここを片付けて包囲するぞ!」


「しかし敵勢の攻勢は強まるばかりでございます。ここで動けば背後をつかれ大変なことになります。」


「おのれ!全軍で殲滅せよ!」


「ははっ!」


光秀は秀満に命じるとまっすぐ進んでいく赤備えを眺めた。


(ここで秀次が死ぬのも良いかもしれぬ………)



赤備えはまず因幡勢と激突した。


「まずいな……」


「ああ……やべえよ。」


それを眺めるふたりの若者。


秀吉の親戚で子飼いの福島正則と加藤清正である。

2人とも蜂須賀家政と共に従軍していた。


「なぁ虎之助(加藤清正)、因幡の連中は耐えれるか?」


「無理だ。あんなんに突っ込まれちゃ俺たちゃ死ぬぞ……」


清正の予想通りだった。


因幡勢に襲いかかった直政は亀井茲矩、南条元忠を瞬く間に討ち取り大将の宮部継潤の陣まであと僅かだった。


越前勢が止めに入ろうとするも側面の防御も固く簡単に跳ね返された。


赤備えがどんどん近づいてくるにつれて清正と正則は焦りだした。


「おいおいどうすんだよ!あんな野郎俺らでは止められねえよ!」


「だからって道開ける訳には行かねえだろ市松(正則)!」


「蜂須賀様より伝令!加藤殿、福島殿は撤退し秀次様と合流し防備を固めよとの事です。」


「家政の野郎……くそっ!」


蜂須賀の命を受けた加藤、福島隊は撤退を始めた。


「邪魔じゃァァァァァァ!」


その頃直政は宮部継潤を討ち取りまたもや攻めかかってきた長谷川秀一隊に鉄砲の集中砲火を浴びせこれも討ち取り木村重茲隊を壊滅させた。


「弱い!これが天下の軍か!」


「信親様!本陣が攻撃されている模様!既に因幡勢、越前勢は壊滅し諸将は討死の模様。」


「それはほっておけぬ!桑名隊3000はこのまま仙石を助けよ!残りは敵勢を後方より攻撃し本陣を助ける!行くぞ!」


「いいのかい?若大将。」


福留が尋ねた。


「本陣が壊滅すれば意味が無い!構わぬな親茂?」


「構いませぬ。」


親茂は止めても聞かないのを分かっていた。


「よし!行くぞ!」



「秀一が死んだか……」


長谷川秀一は堀秀政とは同僚でかつては信長の小姓を務めていた。

光秀もよく知っていた。


「今は感傷に浸っている場合では無い!もはや待てぬ!利宗と直政は集中砲火を浴びせ続けよ!我ら本軍は井伊直政隊を背後より攻撃する!」


こうして堀勢と長宗我部勢が井伊直政隊を追撃するために動き始めた。


「申し上げます!蜂須賀家政様ご討死!」

「我が軍の先陣が敵と交戦し始めました!」

「先陣の山内一豊様!ご討死!」


壊滅やら討死やらそんな伝令ばかりが秀次の前にくる。


「もはやこれまでやもしれぬな。」


「何を申されます!我が軍は20000、向こうは5000。数の上では有利にございます!今ここで弱音を吐かれてはいけませぬぞ!」


「田中よ、周りを見てみよ。皆恐れおののき士気が下がっておる。」


「しかしまだ市松と虎之助がおりまする。あの者らにかけましょう」


田中吉政が最後に掛けた2人は


「これ俺たちが止めるのか……」


「止めるしかねえだろ!行くぞ市松!」


「もうやるしかねぇよ!」


槍を手に取り馬に跨り戦い始めた。


「こっちへ来るなぁァ!」


清正が片鎌槍を振りかざし正則は日本号で敵を叩きつけまくった。


しかしせいぜい1500程度の加藤、福島隊が5000の士気の高い赤備えを止めることなど出来なかった。

しかし少し赤備えにも疲れが見え始めた。


「間に合ったか!土佐のいごっそうども!敵を討ち取れぇぇぇぇ!」


その隙にを逃すまいと赤備えに追いついた長宗我部隊が攻撃を始めた。


「長宗我部に遅れをとるな!鉄砲隊、撃ち方始め!」


さらに光秀も到着し鉄砲で赤備えに鉛玉を喰らわせた。


「殿!もはや持ちませぬ!包囲される前に撤退しましょう!」


「おのれぇ!2度も敗北するとは!」


これはまずいと気づいた直政は包囲される前に撤退し始めた。


「何!?」


だがそんな赤備えの前に大量の鉄砲が待ち構えていた。


「ふん!良くも下らぬ罠を仕掛けてくれたものじゃ!もう逃がしはせぬぞ!撃ち方始め!」


罠を突破し怒りに怒り狂った忠興が命令すると赤備えがバタバタと倒れ始めた。


「このようなところでは死ねぬ!」


それを間一髪でかわした直政は僅かな供回りと共に落ち延びて行きもはや戦況は秀次軍に傾いていた。


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[一言] 赤備え恐るべし こんなにバタバタ味方がやられまくるとは
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