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28 中津川の戦い ⅰ

いよいよ開戦です

秀次率いる中山道方面軍と鳥居元忠軍は美濃の中津川を挟んで対峙した。


「見た感じ敵は2万もおりませぬ。一気に攻め潰してくれましょうぞ。」


長可が進言した。


「いえ、ここは敵が突っ込んできたところを包囲殲滅すべきです。」


長重が反論した。


「細川殿仰る通り、包囲殲滅なら無駄な犠牲も出ず楽に勝てるでしょう。」


光秀も続いた。


「うむ。武蔵守(長可)には悪いが此度は鶴翼の陣で敵を包囲殲滅しようではないか。先陣右翼は武蔵守、左翼は越中守(忠興)に任せる。その後右翼は四国勢、因幡勢、左翼は左衛門督、越前勢中央の前衛は家政に任せる。皆抜かりなく。」


「ははっ!」


陣にいた諸将が頭を下げた。

秀次勢が鶴翼の陣を展開するのを川の対岸の小高い丘の上から鳥居と直政が眺めていた。


「やはり予想通り鶴翼を敷いてきおったわ。守綱、正成に使者を送れ!先陣をおびき出せとな。」


「では某も準備を始めまする。」


「うむ。気をつけろよ。」


鳥居の命令で徳川勢の先鋒の内藤正成と渡辺守綱が動き出した。


「敵の数はおよそ1500、一気に殲滅するか?」


川尻秀長が長可に尋ねた。

2人は歳も近く織田信長存命中には甲州征伐軍の同僚だった。


「あたりめえよ。猿のおぼっちゃまにいいとこ見せて美濃一国貰っちまおうぜ。」


「いい加減殿下の事をその呼び方にするのはやめたらどうだ?」


「あいつがいくら偉くなろうが猿は猿だ。皆の者!2年前のように徳川勢を粉々にしてやるぞ!かかれぇ!!」


森長可隊5500が一斉に1500の内藤正成隊に襲いかかった。


「よし戦いながら後退せよ。」


内藤は待ってましたと言わんばかりにジリジリと撤退し始めた。


「やっぱ本気出した徳川は強いな。ジワジワと押し込んでやれ!」


長可はそれに釣られて大きく鶴翼の形から外れた。


「殿、森様と敵が接触。我らの方向にも1500程度の敵兵が向かってきおります。」


松井が報告した。


「森殿には負けておれぬ。責め潰してくれるわ!」


「お待ちくだされ、ここは迎え撃つべきかと。」


長重が止めようとしたが長可に功を奪われるのを嫌がった忠興は聞く耳を持たなかった。


細川隊も大きく鶴翼の陣から外れた。


「よし。平岩に伝令を送れ。ワシらも動くぞ!」


次に鳥居本隊5000と平岩隊3000も動き出した。


「仙石殿、敵が接近しております。如何なさいますか。」


十河存保が四国勢の大将仙石秀久に聞いた。


「何故敵が来ておる。武蔵守殿は何をしておる!」


信親が反応した。


「黙れ小僧。武蔵守殿は敵を追撃しておられるのだ。左様なことも分からぬのか?」


「しかしそれでは鶴翼の陣が崩れるではないか!武蔵守殿の位置に今から長宗我部勢が向かう!」


「勝手なことをするな!敵を目の前にして怖いのか?土佐の兵はとんだ臆病者じゃのう。」


「なんじゃと!?大して実力も無い成り上がり者の録取り大名が!」


「今なんと言った!もう一度申してみよ!」


「ああ何度でも言ってやる!大した軍才も無いのに殿下に早く仕えただけで大名になった録取大名じゃ!」


「このガキが!ここで首を跳ねてくれるわ!」


「御二方ともやめぬか!過去に色々あったとはいえ今はお味方同士、争われてどうする!」


十河存保が二人の間に入った。


「十河殿の仰る通り、若殿も少し頭を冷やされよ!」


親茂も信親を叱った。


「ふん!大将はワシじゃ!全軍突撃せよ!あのような小勢瞬く間に討ち取ってしまえ!」


信親がまた反論しようとするのを親茂が制止した。


「あの男には軍才のぐの字もあらぬ!どう考えても我らをおびき寄せて陣に穴を開けるつもりであろう。」


「しかしここで勝手な行動をして長宗我部が罰せられる事の方が問題で御座います。ここは大人しく従っておく他ありませぬ。」


「まああんな小勢一気に粉砕してやるから安心しな。」


福留が大太刀を舐めながら言った。


「福留、忘れたのか、此度の先陣は桑名でお主ではないぞ。」


「おいおい、ほんとかよ……」


「若殿!仙石殿から早く出陣しろと。」


「ああ分かってる!桑名隊前へ!」


四国勢と平岩隊が開戦した。


平岩隊の4倍近い四国勢だが長宗我部と仙石と十河という1年ほど前まで敵同士だった寄せ集めでしかなく士気は低かった。


「このような浮き足立っている兵では三河武士には勝てぬぞ!投石用意!」


武田家の投石部隊を応用していたのは長可だけでは無い。

徳川勢も投石部隊を編成していたのである。


「ギヤァァ!」


仙石大将は3500に大量の石が直撃し仙石隊は混乱に陥った。


「おのれ!怯むな!進め!」


仙石が檄を飛ばすと仙石勢は石の雨の中を進軍した。

するとつぎは1人また1人と兵が転けていくではないか。


「なんじゃ!何が起きておる!」


転んだ仙石兵は皆黒い液体を浴びていた。


「あれは罠じゃ!燃やされるぞ!」


それに気づいた長宗我部軍の桑名親光が叫んだものの時すでに遅し。


徳川勢の火矢が仙石兵に襲いかかった。

爆音と共に火が上がり仙石隊の先陣部隊は燃え上がり兵達の断末魔が戦場に響いた。


右翼が大混乱に陥る中、堀勢に鳥居勢が襲いかかった。


「はなてぇ!!」


利三が命令すると新型鉄砲を構えた鉄砲隊が一斉に鉄砲を発射した。


その威力は凄まじく命中した鳥居兵は吹き飛ばされた。


「第2隊!撃ち方初め!」


利三が再度命令すると第1隊がと第二隊が入れ替わり再度鉄砲を放った。

さらに第3隊が攻撃し鳥居勢は引き気味になった。


「着剣用意!かかれぇ!」


それを逃すまいと堀勢は鉄砲の先端に刀をつけ突撃を始めた。


「いやぁ見事なものです。さすがは雑賀衆の訓練でござる。」


「うむ。思った以上の成果じゃ。」


光秀も秀満も鉄砲隊に感心していた。


「殿!大変です。森勢、細川勢、四国勢、それぞれ敵におびき寄せられ陣が乱れておりまする!」


「何!?囮戦法かもしれぬ!直ぐに秀次様にお伝えせねば!」


「殿。某が行ってまいります。」


作兵衛が前に出た。


「わかった。道中気をつけるのだぞ。」


「ははっ!」


秀次の元へ向かう作兵衛を眺めながら光秀は危惧していた事態が起こりつつあることに焦りを覚えた。

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