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26 開戦の狼煙



長秀はその後まもなく病死し秀吉と官兵衛の策により丹羽家は家臣が佐々家の内通していた疑いから減封され若狭一国12万石のみとなった。


「おのれ筑前!自らの天下の助けとなった丹羽家すらも滅ぼそうとするとは!」


光秀はその報せを聞き抗議しようとした。


「殿、それはお止め下さい。もしここで殿が秀吉にたてつけば我らも危のうござる。」


「左様。ここは辛抱してくだされ。」


利三が光秀を止めようとし秀満もそれに続いた。


「しかしこれではあの世の長秀に示しが付かぬ!」


「秀吉を滅ぼした後に大領を与えれば長秀様への義はなります!そのためにも今は大人しく従うと言っておったのは殿でございましょう!」


作兵衛も続いた。


「そうじゃな。某も少し頭に血が登りすぎた。皆すまぬ。」


こうして堀家のゴタゴタはあっさり納まったが駿河の浜松城では徳川家が真っ二つに割れていた。


「もはや秀吉には抗えぬ!降伏しかない!」


徳川家筆頭家老の石川数正ら融和派は声を揃えて降伏すべきといい逆に酒井忠次や井伊直政は羽柴に小牧・長久手での復讐をすべきだと言うのである。


「お主らは復讐のことしか頭にないのか!もう少し徳川のことをよう考えよ!」


「では戦もせずに降伏せよと申すか!?死んだ大久保や平八郎、小平太はどう言うか考える頭もないのかお主には?」


「もうお主らとは話してられん!ワシは席を外す!」


酒井に呆れた石川は家康がいるにも関わらず部屋を出ていってしまった。


「石川殿はもしや秀吉と繋がっているのでは……」


石川が退出したあと直政が呟いた。


「まさか。石川殿は殿が今川に居られた頃からの重臣でござるぞ。」


本多正信が否定した。


「いや。奴なら秀吉には美味い話を出され我らを裏切るやもしれぬ。殿!ここはワシにお任せくだされ。」


「残念じゃが近頃の与七郎はどうも反抗的じゃ。家中の士気にも関わるゆえここで始末しておくしかないやもしれぬ。小平太、頼めるか?」


「ははっ!お任せくだされ。直政!着いて参れ。」


家康から命を受けた酒井は直政を連れ石川を追いかけた。


「奸臣石川数正!その首貰ったぁ!」


酒井よりも先に直政が石川に斬りかかり石川の首を斬り裂いた。


「この分か……らず……」


石川は最後まで言い切る前に崩れ落ちた。


(これで良かったのじゃ……)


その騒ぎの音を聞いた家康は石川との苦楽の日々や思い出を押しこんだ。


だがこれがまずかった。

石川数正は黒田官兵衛と水面下で和平を画策していたのだ。


その石川を殺すということはすなわち徳川家は羽柴家に宣戦布告したも同然である。


「ついに家康を滅ぼす時が来たな!佐吉(石田三成)、諸大名に触れを出せ、徳川を滅ぼすとな。」


「ははっ!」


早速諸大名は大坂に集められた。


「皆、よう集まってくれた。家康めは先の戦の際に織田信雄に味方し我らを苦しめた。そして此度忠臣石川数正を暗殺した、これはワシらに対する挑戦状じゃ!東海道方面は秀長、中山道方面は秀次に任せる。ワシは朝廷の事で行けぬゆえしっかりと戦うのじゃぞ。」


「お任せくだされ。」


2人とも強く頷いた。


その陣立は以下の通りである。


東海道方面 81000

1番隊

池田恒興 9000

2番隊

森吉成、滝川雄利、土方雄久 4500

3番隊

蒲生氏郷 織田信包 12000

4番隊

筒井定次 6000

5番隊

黒田官兵衛 3000

6番隊

宇喜多秀家 10000

7番隊

吉川元長、小早川秀包 13000

8番隊

前野長康、生駒親正 3500

総大将 羽柴秀長 20000


中山道方面 58500

1番隊 森長可 河尻秀長 5500

2番隊 長谷川秀一 木村重茲 8000

3番隊 細川忠興 丹羽長重 6500

4番隊 宮部継潤 南条元続 亀井茲矩 3000

5番隊 仙石秀久 長宗我部信親 十河存保 12000

6番隊 蜂須賀家政 加藤清正 福島正則 3500

総大将 羽柴秀次 20000


水軍 10000

九鬼嘉隆 小早川隆景 長宗我部元親


北陸方面 30000

前田利家 上杉景勝 佐々成政 真田昌幸


合計18万近い大軍である。

徳川家の総兵力はせいぜい5万

それを3方面から侵入してくる大軍を相手にするのである初めから勝つことが確信された戦だった。


軍議が終わると早速中山道方面の諸将が集められた。


「左衛門督よ、此度も期待しておるぞ。」


光秀を見つけるや秀次は笑顔で光秀に話しかけた。


「ははっ。ご期待に添えるように働きまする。」


「此度の戦はもはや勝ったも同然!大軍を見て三河の田舎侍共は慌てふためくでしょうな。」


二番隊の長谷川秀一が余裕そうな表情で言った。


「長谷川殿。お言葉ですが敵は戦上手で知られる徳川家康でござる。あまり油断なされぬ方がよろしいかと。」


長宗我部信親が長谷川に進言した。


「家康が怖いか?小僧。」


信親を睨みつけながら権兵衛が言い放った。


「油断大敵だと言いたいだけだが?」


信親も権兵衛を睨みつけ言い返した。


「2人ともやめんか。行軍する前から争ってどうする。お主らはもはや関白殿下の家臣だと言うことを忘れるな!」


光秀が2人を諌めた。


光秀にとってこの2人は不安要素でしか無かった。

ほんの1年前まで争っていた同士である。

それに軍才のない権兵衛に歴戦の猛者である長宗我部があっさり従うとは思えない。

それに丹羽長重も光秀は気がかりだった。

120万石から12万石に減封されたのである。

秀吉にいい感情などあるわけが無い。

さらに長重が所属している3番隊の大将は気性の荒い忠興だ。

トラブルが起こらないか光秀は心配でしか無かった。


「直政は細川を、利宗は長宗我部をしっかり見ておいてくれ。何が起きるか分からぬ。」


一応2人の宿老を監視するように命じ光秀達は亀山に戻り戦の準備を始めた。

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