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25 米五郎左

お久しぶりです



鈴木重秀による鉄砲隊の訓練が行われる中堀家に驚きの情報が入ってきた。


「なんと!秀吉様が近衛前久様の猶子になられたか!」


近衛前久の猶子になるということはすなわち秀吉が関白になるに等しい事だった。

これには朝廷内の次の関白を巡る対立があった。

秀吉はこれを抑えるために近衛前久の猶子となった。


「秀吉様は朝廷を乗っ取る気か……」


数日後には秀政ら羽柴家の家臣は京に呼び出された。


二条城に諸大名が並び秀吉が現れると皆一斉に頭を下げた。


「みなよう聞け。ワシはこれより関白藤原秀吉となった。それゆえお主らにも官位を与えることになった。玄以、読み上げよ。」


朝廷担当の前田玄以に秀吉が命令すると前田玄以は諸大名の官位を発表し始めた。


池田恒興、森長可、蒲生氏郷、細川忠興、そして光秀ら旧織田家の家臣は従四位下侍従の官位を与えられ秀政は左衛門督にも任ぜられた。


信包を初めとした織田家の一門も秀吉から官位を与えられた。これは織田家が完全に秀吉政権に組み込まれたことを表す。



「それともう1つ伝えることがある。官兵衛、説明せよ。」


「はっ。依然として越中の佐々成政は徳川家康と組み我らに抵抗しております。

来たる徳川征伐に向けまずは越中を落とすことと相成った。これより陣立てを発表いたす。」


諸大名がざわついた。

ほんの数ヶ月前に紀州を攻撃したばかりだったからだ。


「関白殿下!先陣は某にお任されくだされ!」


そんな中前田利家が先陣をすると言い出した。


(まあ利家と成政は古い付き合い故滅ぼすなら自分にやらせてくれと言ったところか。)


光秀は内心そう思った。


「無論、筑前(利家)に任せようと思うておる。」


「おう!」


その後官兵衛から発表された陣立ては以下の通りである。


1番隊

・前田利家 10000

2番隊

・丹羽長重 20000

3番隊

・木村重茲 3000

・堀尾吉晴 1000

・山内一豊 700

・その他 600

4番隊

・加藤光泰 1000

・森長可 6000

・稲葉典通 1500

5番隊

・蒲生氏郷 5000

6番隊

・宮部継潤 2000

・細川忠興 2000

7番隊

・堀秀政 9000

本隊

・羽柴秀長 10000


これだけで成政の動員できる兵力の3倍近い兵力だった。


衆寡敵せずとみた成政は光秀や秀長が越中に入る頃には降伏し越中の内一群だけを残された。

これで信長直臣の大名は全て秀吉の配下になった。


「成政殿も呆気ないものだったのう。」


「しかし柴田殿や信雄様のように抵抗して死ぬよりマシでしょう。」


光秀は戦後丹羽長重の居城、北ノ庄城に立ち寄って長重と酒を飲んでいた。

長重は光より2回りほど若かったがしっかりしており父譲りの才があった。


「そういえば父上が左衛門督殿にお会いしたいと。もし宜しければ父上に会って下さらぬか?」


「越前守(長秀)様が某に?こちらこそお会いしとうござる」


「父の部屋まで案内致します。」


長重に案内され光秀は長秀の部屋に入った

布団に入った長秀に米五郎左の面影はなくもはや死を待つばかりの老人であった


「長重よ。お主は席を外せ。」


「はっ。」


「さて久太郎、いや日向守よ。久太郎を乗っ取ってまで生きておったか。」


「よく分かったな。どこで知った?」


「細川殿から聞いたのじゃ。」


(藤孝殿は何を考えておるのだ!)


光秀は内心藤孝に腹を立てた


「まあ老い先短いワシに伝えたところで何も変わらん。それにお主には聞きたいことが山ほどある。」


「なぜ殿を殺したかか?」


「上様と考えが合わなかったのであろう。お主のように温和で保守的な人間と上様のような過激で革新的な人間とではいずれ亀裂が生じるなど少し考えたら分かる。」


「ではお主は某が憎いか?」


「憎いといえば憎い。じゃがワシはそれ以上に猿とワシ自信が憎い。」


「筑前の乗っ取りか。」


「左様。信雄様も信孝様も確かに上様や若様(信忠)程の才覚は無かったかも知れぬ。じゃが滅ぼす必要などなかった。そしてそれに気づかずワシは権六(柴田勝家)までも……」


長秀と柴田勝家は信長を早くから支えた古い同僚だった。

旧友を攻め滅ぼした長秀の心の痛みは相当なものだろう。


「それでお主に頼みがある。今からここでワシは腹を切り腹の中にある虫を取り出すゆえそれを猿に渡して欲しい。」


「分かった。介錯はいるか?」


「取り出すだけじゃ。暫くは死にはせぬ。」


すると長秀は短刀を取り出し腹を自分の腹を切り裂いた。

長秀は苦しみながらも腹の中からスッポンのような塊を取り出した。


「これを…猿に渡してくれ。」


長秀は片手で腹を抑えながら袋に塊を入れ光秀に渡した。


「織田家の真の裏切り者はお主ではなく猿じゃ。猿を滅ぼし織田家を復活させてくれ……そうすればお主の言う平らかな世を作るがよい。さらばじゃ日向守!」


そう言うと長秀は痛みに耐えられず気を失った。


「父上!左衛門督殿!一体何を!?」


「越前守様は虫に殺されまいと腹を切り虫を取り出された。まだお命はご無事じゃ。」


「なんて無茶なことを。」


長重や家臣たちが騒ぐ中、光秀は大坂城へ向かった。


「ほう、越前がこれをワシに。」


秀吉は長秀の腹の中にあった塊を興味津々に眺めていた。


「それで越前はなんと?」


「非常に珍しいもの故最期に関白殿下に献上したいと。」


「彼奴とは昔から色々あった。これは大事にしておく。もう帰って良いぞ。」


光秀が退室すると秀吉は官兵衛を呼んだ。


「これが丹羽長秀から送られてきた。恐らくワシを舐めておる。丹羽家は適当な理由をつけて減封させようとおもう。」


「良きお考えにございます。畿内の近くに120万石もの大領を復活させてくれ抱える織田家の旧臣がいるのは厄介だとわしも考えておりました。長秀が死ねば佐々攻めの際に家臣が内通していたとでも理由をつけましょう。」


「いくらくらい減らそうか。」


「若狭一国のみとするべきかと。」


「それで決まりじゃ!」


秀吉と官兵衛の不敵な笑い声が大坂城に響いた。


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