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19 崩壊

小牧・長久手編の最終回です。

本多忠勝率いる奇襲部隊は忠勝が討死したあと森勢の激しい追撃により壊滅した。

また竹ヶ鼻城も水攻めには耐えられず開城した。

これにより徳川、織田勢の士気はかなり下がり始めた。


「えぇい!お主の兵達は何をしておった。わしも三七郎(信孝)のように腹を斬るのは嫌じゃぞ!」


信雄が家康を怒鳴りつけた。


「もうお主は要らぬ!さっさと駿府へ帰れ!」


家康はただ頭を下げているだけだった。


「何を申される!長久手の戦であっという間に壊滅したのは信雄様ではありませぬか!?そもそも此度の戦がなぜ起きたのか分かっておられるのですか!」


直政が立ち上がり反論した。

家康も忠次も止めようとしなかった。


「お主何様のつもりじゃ!ワシは今家康に言っておるのじゃ!お主は黙っておれ!」


「承知致しもうした。信雄様のご武運をお祈りしております。」


「もうお主に用はない。去ね!」


直政も呆れてもう反論する気すら起きなかった。

こうして徳川勢は駿府へと撤退していった。


「殿!なぜ撤退するのです?本多様や榊原様の仇は!?」


直政が家康に問いかけた。


「ワシらは信雄様に頼まれて羽柴と戦っておるのじゃ。信雄様が帰れと仰せならワシらに羽柴と戦う大義名分はない。」


「しかし!」


「直政、お主の気持ちはよくわかる。私も小平太や平八郎の仇は討ちたい。じゃが今はその時ではないのだ。お主も耐えよ。」


そう言われると直政も反論出来なかった。


徳川勢の撤退から数日後。

岐阜城に羽柴方の諸将が集められた。


「信雄めが講和を申し出てきおった。ワシは講和しようと思うがお主らの意見が聞きたい。」


秀吉は諸将に意見を求めた。


「某は賛成でござる。これ以上織田家の中で無駄な血を流す必要はござりませぬ。」


氏郷が真っ先に秀吉に同意した。

長重と秀長も同意した。


「待たれよ。そもそもは此度の戦は信雄様が起こされたこと。それを苦戦した途端講和しろなど勝手が過ぎまする。それにこれから羽柴様が天下を統一される上で羽柴様が諸大名に甘く見られるやもしれませぬ。ここは攻め滅ぼすべきでしょう。」


「しかし信雄様を滅ぼすとなれば織田家に対して……池田殿はどうお考えでしょう?」


氏郷が反論し恒興に意見を求めた。


「ワシは久太郎の意見に賛同する。今の織田家の当主は三法師様じゃ。それに弓引いた信雄様を許す訳にはいかぬであろう。」


森長可も同意していた。


「官兵衛はどう思う?」


次に秀吉は官兵衛に意見を求めた。


「堀殿の仰ることまさにごもっとも。これから殿が日の本を統一される上で厳しさも時には必要でござる。」


「三十郎殿もそれで構わぬか?」


最後に秀吉は信雄の叔父の信包に聞いた。


「此度の戦は信雄めが自分で招いた戦でござる。ならば自分で責任を取るのは当たり前でござる。清洲を包囲して腹を斬らせる他ありませぬ。」


「信包様まで……」


氏郷も渋々同意した。


こうして清須城に向けて

美濃方面から5万、伊勢方面から4万の羽柴軍が清洲城を包囲した。


「おのれ猿め!織田家に弓引き講和を拒否し我を殺す気か!」


信雄は怒り狂っていた。

しかし怒り狂ったところで状況は一変しない。

しかし信雄も命は惜しいもので助命を条件に開城すると秀吉に使者を送った。


「ならぬ。此度の戦で失われた兵士達に詫びる気持ちがあるなら今すぐ信雄の首を持ってまいれ。良いな!」


秀吉は使者にそう言うとさっさと追い返した。


「如何なさいます。雄利殿。」


使者からその話を聞いた滝川雄利は頭を抱えた。


「ここは我らも腹を括るしかなかろう。」


黙り込む雄利にもう1人の家老の土方雄久が決断を求めた。


「しかし……」


「もはや殿は織田家の当主にあらず。兵達も皆疲れておる。左様なことがわからぬお主ではないはずじゃ!」


「分かった……。」


その夜雄利と土方は10人ほどの刺客を集めた。


「良いか。我らはこれより謀反人となる。その覚悟があるものは残ると良い。覚悟なきものはこの話を信雄様に密告しても構わぬ。それが織田家のためになると思うのであればな。」


雄利が刺客達に言った。

1分ほど経ったが誰もその場から去らなかった。


「皆覚悟は出来ているようじゃな。ではやるぞ!」


清洲城の天守閣では信雄が現実逃避するためか酒を飲んでいた。


「おのれ!おのれ!おのれ!」


「信雄様。よろしいでしょうか?」


「なんじゃ!わしは今忙しい!去ね!」


「左様ですか。」


そう言うと雄利が勢いよく襖を開けた。


「何を刀など持っておる?敵襲か?」


「いいえ。貴方様には織田家のためにここで散って頂きまする。」


「なんじゃと!?」


信雄がそう言って刀を取ろうとした瞬間だった。

雄利は自身の刀を信雄の首に振り下ろした。

信雄は何も抵抗できないまま胴体から首が落ちた。


それから数時間後。

秀吉の本陣に雄利が訪れた。


「その桶はなんじゃ?」


秀吉が聞いた。


「これは我が主君、織田信雄の首にございます。こちらの首を羽柴様にお渡しする代わりに約束して欲しい事がございます。」


「フン!なんじゃ申してみよ。」


「城内にいる城兵の命はお助けくだされ。」


「左様なことワシが許さぬと思ったか?無論城兵達の命は助けよう。」


「有り難き幸せにございまする。」


その日の朝、清洲城は開城した。


こうして小牧・長久手の戦いは織田信雄の死を持って終戦した。

ここから史実をかなり湾曲していきます。

信雄はここで退場ですが織田家は退場しません。

それと滝川、土方はこれからも出てきます

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