1 麒麟児の復活
「己久太郎め……」
光秀は頭を抱えながら起き上がった
「ここは何処じゃ……?」
周りには無数の遺体が転がっていた
見たところ皆武士のようだ。
紋所は釘抜き
つまり堀秀政の家紋だった。
すると1人の武者が起き上がった
その武者はこちらを見るやいなや
「おのれ堀秀政!光秀様をよくも!」
と叫ぶやいなや刀を抜きこちらに襲いかかってきた。
「ちょっと待て?何を言うておる!我が明智光秀であるぞ!それにお主は堀の家臣じゃろう!」
その男の顔を光秀は何度か見た事があった
堀秀政の従兄弟の堀直政だ。
「何を戯れ言を!ここまで来て命が惜しいか!我は明智左馬助秀満であるぞ!」
「左馬助じゃと?お主はこそ戯れ言を言うであるまい!」
お互いによく分からくなっていた。
するともう1人の男が起き上がり、
「堀秀政に堀直政とは……殿の仇じゃ!」
と言ってその場に落ちていた槍を掴んだ。
「先程からお主らは我の仇、我の仇と何を言うておる!我こそは明智日向守光秀である。お主は堀利宗であろう。なぜお主が我の仇を討つのじゃ。」
槍を取ろうとした利宗が口を開いた
「何故と言われ申してもワシは斎藤内蔵之助利三であるぞ。」
光秀と利宗が睨み合っていると
「なんじゃこりゃぁ!!」
堀直政が水たまりを見て叫んだ。
直政が腰を抜かして佇んでいる横で
光秀と利宗も水たまりを眺めた。
「何!?……」
その水たまりに映っていた顔は今までの自分の顔ではなかった。
その顔は堀秀政の顔そのものだった
「ではお主らは秀満に利三か!?」
「まさか殿が堀秀政だとは……」
利三も唖然としていた。
「もしそうだとして、今はいつでござる?そしてここはどこでございますか?」
気を取り戻した秀満が問掛ける
「それじゃ。ここは明らかに久太郎に襲われた場所ではない。」
すると遠くから
「兄上!兄上!ご無事ですか!?」
と若武者がこちらに向かってきた
「あの男に聞いてみるとしよう。」
光秀達は目を合わせ頷いた。