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9 四国

史実では多分こんな戦は起きていません。つまり架空の話です。けれどここでの関係がのちのち重要になってきます。

あと長宗我部の武将の喋り方や登場する武将に既視感のある方とは仲良くなれそうな気がします


秀吉軍が出陣した頃

讃岐国にひとつの軍団が上陸した。

その一番前に髭を生やしているもののまだ若さが残る一人の男が呟く


「1年ぶりか……」


その男の名は仙石権兵衛秀久


秀吉の古くからの重臣で堀秀政と同い年だ。


四国は反羽柴の長宗我部元親が親羽柴の十河家を圧倒していた。

それを助けるために昨年仙石は四国に兵を進めた。


しかし圧倒的な長宗我部の大軍の前に敗北した。


「今度こそ、あの田舎モンにギャフンと言わせたる。」


仙石は歯を食いしばった。


今や十河家は居城の十河城のみが攻略されていないものの長宗我部は3万もの大軍を率いて十河城を包囲していた。


「ええか!わしらの役目は十河を逃がすことじゃ。十河を逃がせば長宗我部めの統治は上手いこといかんはずじゃ。分かったな!」


「小僧、おめえが先陣じゃ。長宗我部を煽ってこい。」


「ははっ。」


この小僧は黒田孝高の息子の黒田長政の事だ。

今回、父の命令もあって仙石勢に加わっていた。


長政は2000の手勢を率いて十河城東部に向かった。


既に長宗我部の陣が敷かれていた。


「申し上げます。長宗我部勢は目下5000。後方の仙石様の兵と合わせれば我らと互角かと。」


「よし。父上が仰った通りにやるぞ。井口、任せた。」


長政の家臣の井口吉次に300の兵を預け夜襲を命じた。


ほぼ勝ちを確信していた長宗我部勢は油断しておりまさか羽柴勢がすぐそこまで近づいているとは気づいていなかった。


「よし。かかれ!」


井口が声をかけると黒田の奇襲部隊がいっせいに休憩中の長宗我部勢に襲いかかった。


不意をつかれた長宗我部勢は混乱した


「敵じゃ!敵襲じゃ!」


皆叫び刀を取ろうとするも黒田勢の矢がいっせいに彼らに降りかかった。


「申し上げます。羽柴勢が仕掛けてきました!」


「まさか夜襲をかけてくるとは。」


その部隊の大将と思われる人物の横に控えていた男は少し驚いていた。


「仙石はただの馬鹿かと思ってたがどうやら少しは知恵があったみたいだな。」


大将と思わしき人物が立ち上がった。


整った顔立ちに身長は60寸(180センチ)以上あるであろう若武者だった。


若武者は太刀を取ると


「皆のもの!羽柴勢を押し返すぞ!我に続けぇ!」


馬に跨ると若武者は駆け出して言った。


「また行ってしまわれた。わしの若い頃を思い出すわ。」


「あんたにみてえに本陣に突っ込むんじゃねえか?」


脇に控えていた2人の武将は1人が頭を抱えもう1人は楽しそうだった。


「じゃあさくっとやりますか。」


「ああ。あの方を死なせてはならぬしな。」


その頃戦場では

「頃合いじゃな。引くぞ!」


流石に300で5000は受けきれないと悟ったのか井口が撤退を命じた。


黒田勢が撤退を始めると戦場に到着した若武者は、


「この期を逃すな!仙石を討つぞ!」


その若武者の声を聞くや兵の士気が瞬く間に回復し一斉に黒田勢を追いかけ始めた。


それを見た長政は

「思ったより恐ろしい勢いじゃが何故じゃ……」


「恐らく大将自ら出てきたのでしょう。我らも迎撃の準備は出来ております。」


黒田勢は鶴翼の構えで長宗我部勢を待ち構えていた。


突っ込んでくる長宗我部勢を一斉に包囲殲滅する作戦だ。


撤退した井口達だが長宗我部勢のスピードは凄まじく300の兵に飛びかかった。


「弱い!弱いわァ!これが天下の羽柴軍か!?」

若武者は太刀を縦横無断に振るい黒田勢を薙ぎ倒していく。


しかし井口の部隊は何とか本隊の迎撃地点まで到着した。


「今じゃ!かかれぇ!」

長政が命じると隠れていた黒田勢が長宗我部勢に襲いかかった。


だが若武者は焦る素振りもなく


「面白い!面白い!戦はこうでなくてはならぬ。土佐のいごっそう共!一領具足の恐ろしさ、天下に教えてやれ!!!」


兵たちは「ウォォォォォ」

と叫ぶと黒田勢を迎えうった


「どこじゃぁ!仙石はどこじゃぁ!」


若武者に黒田の足軽たちは皆足をすくめ薙ぎ払われていく。


「おい!これでは我らも危ういぞ。」


「ご安心なされ。まもなく仙石様の部隊が。」

そう言った側近に刃が突き刺さった。


側近は高く持ち上げられ刃から振り落とされた。


「見つけたぞ!仙石ゥゥゥゥ!」


あの若武者だ。


凄まじい剣幕で長政を睨みつけると若武者は太刀を振り落とそうとした。


長政は咄嗟に刀で太刀を受け止めた。


しかし凄まじい威力に長政は耐えるのが精一杯だった。


「去年のように、逃げ出さぬだけ褒めてやる。だがお主はここまでじゃ!」


若武者は太刀を横に降り長政は吹き飛ばされた。


長政の元に多数の雑兵が近づいてくる。


(まずい…!このままでは)

長政が死を覚悟したその時。


銃声が鳴り響き雑兵達が血を流し崩れ落ちた。


「なんじゃ!」

長政が起き上がるとそこには永楽銭紋の旗がたなびいていた。


「危なかったな。小僧!まぁお主を死なせちゃワシが官兵衛殿に殺されてしまうわ!はっはっはっはっ!」


仙石は高らかに笑っていた。


「何故仙石がここに……今仙石は俺が……」


「馬鹿め。ワシがそこまで弱いわけないじゃろが!こやつは黒田孝高殿の嫡子、黒田長政殿じゃ。」


「黒田長政ぁ?」


「そうじゃ!我こそは黒田孝高が嫡男!黒田長政じゃ!」


そう言うと長政は倒れていた雑兵の槍を手に取り若武者に向けた。


「そうか……勘違いか。まあ良いわ!我の名は長宗我部元親が嫡男の信親!いずれこの一騎打ちの決着はつけようぞ!。皆の者、ひくぞ!」


その若武者 長宗我部信親は高らかに笑いながら十河城へと戻っていった。


「待て!」


「追いかけんでええ。あの野郎を殺すと元親は本気でわしらを殺しにかかってくる。いくら武士とはいえおめえも長生きしてえだろ。それに十河は城から落ち延びたそうじゃ。この戦で元親も迂闊に手は出せねえ。お主の手柄じゃ!」


仙石はそう言うと笑いながら戻っていった。


「……我らも引くぞ!」


長政は少し不機嫌になりながらも撤退を命じた。


包囲網に戻った信親を2人の家臣が出迎えた。

「十河城を落ちましたぞ。十河は逃げました。」


「いやぁ鬼神のような勢いでしたな。でも殿は多分お怒りですよ。」


2人の家臣は本山親茂と福留儀重。


本山は当主元親の姉の子で信親の従兄弟にあたる。かつては元親と敵対し元親の本陣に突入したこともあった。

福留は武勇に優れ当主元親から信用されていた。


「殿が至急本丸まで来いと。」


元親に呼び出された3人は早速落としたばかりの十河城の本丸に入った。


当主元親が中央に座り脇には弟の香宗我部親泰が座っていた。

2人とも凄まじい剣幕でこちらを睨んでいた。


「父上……実は……」


信親が説明しようとすると


「楽しかったか?」

元親が質問した。


「そりゃぁもう楽しんだでしょう!何せ敵の大将を薙ぎ倒したんですから!」


「隼人(福留)には聞いておらぬ」


元親は福留を睨んだ。


「楽しゅうございました。敵の大将は黒田長政というものでして俺の一撃を1度受け止めました。」


「で、討ち取ったか?」


「仙石らが現れ見逃しました。」


元親はため息を着くと


「まあお前が楽しかったらそれで良いよ。ただお前は俺の跡を継ぐ大事な存在、命だけは大切にしてくれ。」


先程までの重い空気はあっという間に無くなった。


「詰めが甘いところは兄貴に似てるよね。」


親泰が笑いながら言うと場は一気に和みみな笑った。


「それでこのまま淡路に攻め込みますか?」


もう1人脇に控えていた森孝頼が元親に問いかけた。


「いやぁそれが伊予の金子からの報せで毛利が本腰入れてきたっぽい。小早川隆景まで出てきたらしい。そっちに全力で対抗してまずは四国を統一させる。」


「家康殿には俺から文を出しておく。これでいいんだね?」


親泰が問いかけた。


「明智殿のおかげで今俺たちは織田に滅ぼされずに生きてる。明智殿が命を懸けてまで俺たちに与えてくれたものを捨てる訳にはいかない。いくぞ!」


「オオ!」


場は一斉に湧き上がった。


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