8話
「……え?」
「馬で掛けている時少し様子が見えた。奴らに反抗していただろう?この状況で……。」
あぁ。さっきの遠くから見えたのか…。
「えっと…、なにか考えがあったとかそういうのじゃないんですけど…、腹が立ちすぎて、思わず……その…言い返していたり、して…。」
怒られてるわけではないのに、段々と語尾が小さくなって体も縮んでいく。
なんだろう、この悪いことしてごめんなさいの図は。
「はあ……。」
ため息で人って倒れさせること出来るかもしれない。
こんな色気のあるため息初めて聞いた。
「強気なのはいい事だが、限度がある。殺されては元も子もない。」
「…はい。すみません…。」
確かにわたしは考えなしだった。
この人たちがあと一歩遅ければ、さっきの、女性のように殺されていただろう。
改めて自分の言動にゾッとした。
「……こちらこそすまなかった。」
「え?」
驚いて下を向いていたわたしは思わず、金髪美形さんを見上げた。
「元々は連れ去られる前に私たち騎士団が駆けつけ、保護しなければならなかった。たくさんの命を救えなかった…。本当に申し訳ない。」
「そんな…」
この人たちが悪いわけない。
なのに謝ってくれている。
顔だけでなく、心も美しいのか、この人は。
そして蕩けるような微笑みを私に向けて頬にああった手が頭へうつり、ぽんぽんとしてくれた。
「怪我をしているな。引き止めて申し訳ない。早く治療しに行った方がいい。」
「……はい。」
返事をしてわたしは救護施設へ向う馬車へと歩いた。
(なに……、あれ。)
(何あれ!なにあれ!!!金髪美形に微笑まれて頭ポンポン!!!やばい!!カッコよすぎる!恥ずかしい!死んじゃう!!!)
茹でたこのような真っ赤な顔で馬車に入ったわたしは「お顔が真っ赤です!すぐにこちらへ!」と寝かされて馬車で救護施設へ向かったのである。
馬車の中からコンクリートの大きな壁が見えてきた。
まさに要塞って感じの建物。
その建物の中に案内されて、大きな部屋へ通された。
中には女性が複数いた。
看護師さんのようだ。
大きな傷がある人はすぐに手当され、引きずられたりして破れたり汚れたりした服は新しいものを用意してくれていたり、体を洗い流せるようにシャワー室へも案内してくれた。
一通り整って、食事が取れる人は暖かいスープとパンを出してくれた。
いや。これがかなり美味しかった。
川に落ちて寒いし、引きづられて服ドロドロだし。
夜ご飯食べてなかったから本当にお腹ぺこぺこだったんだよね。
空腹は最高のスパイスっていうけど、ほんとそんな感じ。
スープの暖かさが染みて、生きてるんだって実感した。
その後、4~6名ずつくらいに別れて部屋も用意してくれていた。
とりあえず今日はゆっくり休んで、明日以降、話せる人から今回のことについて詳しく騎士団に話して欲しいって言われた。
むしろ私が、教えてくれって所なんだけど……。
この世界が一体どんなとこなのか。
私みたいな人って結構いるのか。
色々確認出来るチャンスだ。
牢屋にいる時に背中をさすってあげた女性と同じ部屋になった。
アリアさんというらしい。
アリアさんはリリアちゃんという5歳の女の子の娘さんがいて、今回娘さんも別に攫われているから、自分が助かったことにすごくは喜べないみたい。
兵士たちに子供たちのことをきくと、別働隊が子供たちの方にも救助に向かっているから、とりあえず安心してとは言われてるみたいだけど……。
まだ暗い表情の彼女に向かって私は出来るだけ笑顔で言った。
「大丈夫ですよ。私たちの時のように、騎士さんたちがあっという間に助けてくれますよ!だから今日はしっかり休んで、リリアちゃんがここに来た時に、力いっぱい抱きしめられるように体力を取り戻しておきましょ?」
「……そうね。ありがとう。」
少しでも笑ってくれて、ほっとした。
そうして、私たちはベットへ入る。
分からないことだらけで寝れるかな?と不安に思っていたのだけど、そんな繊細な女子じゃなかったようで、朝までぐっすり。
よく寝ることが出来た。
朝食を食べ終え、怪我の軽い順に女性が呼びにきて、騎士たちと話をするという流れだ。
私は呼ばれるまで、なんだかんだ落とすことなく持ってきていたリュックの中身を確認した。
・スマホ
・フェイスタオル
・お化粧ポーチ
・裁縫セット
・折りたたみ傘
・お財布
・のど飴1袋
・頭痛薬
スマホ…は電源すら入らない状態。
お財布…は、絶対この世界と通貨違うよねえ。
のど飴と頭痛薬は何かの時に役立つだろうけど、なんだか心もとない中身だな…。