6話
昔からそう。
曲がったことが嫌い。
いじめっ子とか許せない。
弱いものいじめとか訳わかんない。
勢いだけじゃだめだよって京さんに言われたなあ。
そんなことをゆっくりと思い出しているけど、その瞬間にも男が私に剣を構えて走ってきていた。
腕を縛られて走れる距離なんてたかが知れてる。
こんなわけわからない所で、わけわかんないやつに殺される人生だったのかあなんて思って、私はゆっくりと目を閉じた。
すると遠くの方から男の叫び声が聞こえた。
「うわああ!」
「何故ここに!?」
「ぎゃあ!」
目を開けて声のするほうを見ると、馬に乗って鎧を着けた兵士たちがやってきた。
いきなりで盗賊たちはもたもたしている。
しかも相手は騎乗していて、速さも高さもリーチがある。
剣を構えるけれど、あっという間に弾かれてしまう。
「やっと見つけたぞ。」
先頭にいた騎士は馬から降りると、氷のように冷たい視線を向けた。
薄い金髪で、ブルーの瞳。
肌の色は白く、透明感がすごい。
濃い青の鎧を身につけていて、顔は恐ろしいほど整っていた。
その騎士が、盗賊に向かって言った。
「メローニ村での盗難、及び殺人、そして婦女子誘拐を行ったとして、貴様ら全員を捕縛する。」
ほかの騎士たちは次々と剣を構えて、盗賊たちを捕まえていった。
「くそっ。何故騎士団にここがバレたんだっ……!」
フードの男たちもかなり焦っている。
「我らはそう簡単に捕まるわけにはいかぬっ……!」
フードの男たちは何か呪文を唱えると、炎の壁が出来た。
「魔術師がいたか。」
やがてその火の壁は青の騎士に向かって、襲いかかる。
「アイスウォール」
左腕を前に突き出し、青の騎士は呪文を唱えると、その目の前に分厚い氷の壁が出来た。
じゅああああぁあ!
水分が蒸発する音が響く。
フードの男が唱えた炎が、青の騎士に届くことはなかった。
しかしその隙にフードの男たちは逃げ出した様だ。
炎をみて他の団員が青の騎士の元に駆け寄ってきた。
「団長、お怪我は?」
そう聞きにきた男性は銀色の髪に、灰色の瞳だった。
「あれぐらいですると思うか?」
「申し訳ございません。」
「シル、奴らを追え。殺すなよ。」
「…承知致しました。」
タタッとシルと呼ばれた彼は、馬に乗り軽やかに駆け出す。
(手の先から火が出た。氷が現れた…。)
金髪の男性が立ち尽くしている私を捉えた。
そして私の方へ歩いてくる。
(馬に乗ってた…。鎧つけてる…。)
そして私の目の前で止まる。
「救助が遅れてすまなかった。間に合ってよかった。」
人形のように完璧な顔で、喋る騎士をみて
あぁ、私の知らない異世界に来たんだ…と私はやっと理解した。