4話
「………ふぇっくしょん!!!!!」
さらに鼻水がでた。
ここにいても仕方がないか。
とりあえず早く帰って、着替えたい。
もう一度シャワー浴びなきゃ。
夜ご飯だってまだでお腹減ってるし。
脇腹痛いし。
掴まれた二の腕痛いし。
「なんだったの………」
腕を掴んだであろう人物はいなかった。
釈然としないけど、海はここを立ち去ることにした。
数十メートルあるくと少しの明かりと人の声がした。
それだけでほっとする。
「~~~~っ!!?!」
「~~~~~~~~~~!!!!」
「~~~!!!」
ん?なに?
喧嘩?
せっかく人がいそうなのに、喧嘩中だったら気まずいなと思いながらも人の気配がする方へ近づいて行った。
ガサガサと草木をかき分けて、ようやくその人たちが見える所までいくと、体は固まった。
「いやああぁあああ!!」
「うるせぇ!だまれ!!!」
ガツンと何かを殴る音がする。
転がっている女の人に向かって、男が頭を蹴り飛ばす。
「ままぁ!!」
「来ちゃダメえぇ!」
「ガキは別のところだ!連れて行け!」
他の男が嫌がる子供の意志に関係なく別のどこかへ連れていく。
「やめてくれ!妻と子供を離してくれ!!」
「ぴーぴーうるせぇなあ。大人の男には用がないんだよぉ。」
「ぁあぁぁあ!」
そう言って笑いながら男は、女の人の旦那さんと思われる男性の胸に躊躇いなく剣を突き刺す。
「あなたあぁぁあ!!」
「おらいくぞ。手間かけさせるんじゃえねえ!」
なに。これ。
撮影?
いやいやいやいや。
違うよね。
よく見ると周りには家がある。
小さなキャンプ場の小屋のようなものだ。
そこが燃えている建物もある。
遠くから似たような悲鳴も聞こえる。
よくわからない。
何…………?
建物が焼けるにおい。
錆のようなにおい。
これは、なに……。
思考が追いつかない。
思わずその場にへたり込む。
木の枝を踏んで、パキンと音が響いた。
「ん?……なんだ、そんなところにも女がいたのか。」
さっき男性を刺した男がにやりと笑って近ずいてきた。
「なんだあ、お前。変な格好してるなあ。」
じとりと嫌な目で上から下まで舐めるように見られた。
「まあ、女であることは間違いない。川まで逃げたのか?逃げられなくてザンネンだったなぁ。」
ヒヒヒっと笑いながら髪の毛をがしっと掴まれて、無理矢理立たされる。
「ッッッいっつ!!!」
思わず顔をしかめる。
「……やめて!なにするの!!」
恐怖より痛みが勝った。
何も考えずに反抗的な言葉がでてしまった。
しかし男はじろりと睨むと海の言葉を無視して乱暴にそのまま歩く。
広場の中心らしき場所には、キャンプファイヤーのように木が燃やされていて一際明るかった。
そこには泣いている女の人達、子供たちが集められていた。
女の人と子供は別れていて、子供は木で作られたような檻の中に放り込まれていた。
「おらよ!」
「きゃっ!」
無造作に女性側に放り投げられる。
すぐに両手に縄をかけられた。
他の女性たちもそうだった。
周りを見渡すと、私たちとは反対側に山が出来ていた。
よく見るとそれは人だった。
殺された男の人たちが山のように積み上げられている。
それを踏み潰して笑っている男もいた。
「これでこの村のやつらは全員だな」
「あァ、お頭に報告しろ」
「わかった」
1人の男が立ち去った。
命令したやつが女性たちを見下しながら言う。
「ちっ。金が入る仕事とはいえ、女には手を出せねえなんてつまらねえーなあ」
「こんなにいるんだ、何人か俺たちの好きにしたって分からねえよ」
ニヤニヤと笑いながら別の男が言った。
「確かにそうだな」
そう言って女性たちを品定めするように見回すと、私で止まった。
目が合う。
「ちっと変な格好だが、中身は変わらねえもんな。」
物凄く嫌な予感。
思わず後ずさる。
と言ってもその距離はたかが知れている。
その動作が男のやる気をそそったのか、嬉しそうに私の足首を持ち引きずった。
かと思えばロンティーをまくりあげ、手を突っ込み、私の胸を触りだした。
「ちょっ!やめて!触らないで!」
私は男を蹴りあげる。
蹴りがいい感じに男の腹部にヒットした。
「ぐふっ!………んの、アマぁ!調子乗りやがって!」
ばし!と頬を殴られた。
口の中が血の味がする。切れたみたいだ。
あまりに強く殴られて、目がチカチカする。
「女の癖に逆らいやがって!いまにヒーヒー言わせてやるからな!!!」
なんだろうこれ。
夢じゃない。夢ならこんなに痛いわけがない。
こんなに触られて鳥肌なんかたたない。
一体自分に何が起こっているのだろう。
ジーパンをおろされそうになったとき
「てめぇら何やってやがる!!!!」
「お、お頭………!?」
1人の男性がいた。
頭にバンダナを巻いて、目には眼帯を付けていた。
髪は肩につくぐらいまで、のばされていた。
あえて伸ばしているというよりは、放置して伸びたといった感じだ。
「女子供に手を出すなと俺は言わなかったか?」
「す、すまねえお頭!!!」
お頭と呼ばれた男は男を蹴りあげる。
そして腰からスラリと剣を抜く。
剣を手下の男の首に付けると
「次はない。こいつらは大事な商品だ。」
「へ、へい……。」
その男は私をじーっと眺めた。
「まあ、悪くない。」
顎に手を当てながら言う。
「気も強そうだしな。俺の好みだ。それに黒目に黒髪も珍しいな……お前、俺の女になるか?」
「………なるわけ、ないでしょ……」
「ふん。この状況でそんなこと言えるだなんて大した玉だなあ、お嬢ちゃん。まあ、いい。あまり時間もない。お前ら積み込め!引渡し場所に行くぞ!!」
そう言うと私たちは馬車の荷台に乗せられた。
積み込まれたという方があっているかも。
ガタガタと揺れる馬車は、私たちのことなどお構い無しにスピードを上げて走る。
車やバスと違ってクッションなんてない。
お尻が痛いし、うっかり舌を噛みそうだ。
そんな状態で一体どれくらいの時間が経ったのだろう。
「おい!降りろ!」
乱暴な言葉と共に、どこかで降ろされた。
何処かの建物の中で、牢屋のような所に入れられた。
鍵をかけられ、男たちは去っていく。
馬車の中では暗いしよく分からなかったけど、改めて自分の他の女性たちを見た。
10代~30代前半の女性たちだ。
髪の色は凄いカラーリングしたね?ってくらい赤、青、黄色、緑と様々だ。
黒髪はいない。
私、染めてない!真面目ないい子!
とかそういうのは置いといて……
みんな肩を寄せあって泣いている。
乱暴に扱われたのか、服が破けている人もいる。
すすり泣く声が聞こえた。
ほんとに、ここは一体なんなのか。