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さらわれた姫は、自由を謳歌する事にした。  作者: 花籠 密
1章 魔王城での生活
8/14

8︰エリベルトとポンコツ教師 2

本日2回目の投稿です。

それとまた1件ブックマークが増えておりました!

本当に…ありがたい…(泣)

 「いい子だ…エリベルト…」

 「なっ?!

 お前寝言でまで俺を子供扱いする気か?!」

 

 彼女の夢の内容が知りたくて振り向いた彼は、つい悲痛な叫びをあげた。

 まさか夢の中でまで子供扱いされるとは、それこそ夢にも思わなかったのだ。

 ムッとしてずかずかとベッドの所まで歩み寄ると、寝ている彼女の真っ白な頬を思い切り引っ張った。

 

 「フン!散々子供扱いしやがって。間抜けな顔だな!」

 「……Zzz」

 

 全く微動だにしない彼女を見ながら、更にみょーんと頬を引っ張る。

 予想外に伸びるので少し驚いたのは彼だけの秘密だ。

 しかしこれでも彼女は眉一つ動かさなかった。

 

 「…これでも起きないのか?

 こんな無防備でよくここまで生きてたな」

 

 とうとう手を離してやると、少し赤くなった頬が白い肌のアクセントになっていた。

 髪も肌もシフトドレスも白い彼女は、目を閉じてしまえば真っ白になるのだと彼はそこで初めて気づいた。

 

 「…いい子、な」

 

 ポツリと、言われた言葉を呟いた。

 今こうして無防備な寝顔を晒す彼女の方こそ、彼からしてみればいつもよりずっといい子だった。

 彼女を抱きあげようとして、けれど出来なかった自らの手を彼は見つめた。

 ルーカスやサディアスとは比べ物にもならない、小さくて本当に子供のような手だ。

 例え年齢は上で自分ではもう子供ではないと思っていても、周りから子供扱いされるのも仕方ないのかもしれない。

 

 「あーあ。早く成長したい…。

 そうすれば――」

 

 そうすれば。

 そこまで口に出して彼は思考をとめた。

 今、自分が何を言おうとしてたのか疑問に思ったのだ。

 そうすれば。そうすればどうだと言うのだろう。

 

 「………」

 

 自分の手と、静かな寝息を立てるエリノアを見比べた。

 …成長すれば。

 そうすれば、彼女の事も抱いて運べたのに。

 そうすれば、子供扱いされることもなかったのに。

 そうすれば、男としてみてもらえるのに。

 

 「ッ!」

 

 衣擦れの音がしたと思うと、何かが彼の腰に巻きついてきた。

 いや、何かなんて惚けている場合では無い。

 今この場にいるのはエリベルトとエリノアの2人だけだと、彼はよくわかっていた。

 

 「エリノアお前っ、寝相が悪いにも程があるだろ…!」

 「んーーー。うるさいな…」

 「う、煩いだと?!

 大体魔王を抱き枕にしようなどどう考えても可笑しい――」

 「今日のポンタは硬い…」

 「は?」

 

 怒りも恥もストンと抜け落ちて、彼は真顔で後ろを見た。

 そこには、不機嫌そうな顔で寝ているエリノアが居る。

 

 「…おい、ポンタとは誰だ。

 エリノア、お前まさかそのポンタとやらと同衾する仲だったのか…??」

 「んんーーー…」

 

 質問したところで夢の世界に入っているエリノアがまともに答えることは無い。

 ぐるぐると頭の中を様々な想像が巡って、彼は腰に巻きついている腕を剥がそうとした。

 しかしそれに反抗するように腕には力が込められていく。

 エリノア自身は全くの無意識なのだがやられた方はたまったものじゃない。

 冷めていた熱が再び顔に集まってくるのをエリベルトは感じていた。

 今日はドキドキしたりハラハラしたりと彼の心臓は大変忙しい。

 

 「一体何なのだエリノア!!!!

 俺の心臓を壊そうとでも言うのか!?」

 「んあっ?」

 

 苦し紛れに叫んだその声で、とうとうエリノアが目を覚ました。

 ぼんやりとした瞳で固まっている彼女の腕を退かすと、彼は片手を腰に当て、もう片方の手の人差し指をビシりと彼女の目の前に突き出した。

 

 「反省しろエリノア!!!!

 お前が俺にしたことを教えてやろうか!?」

 「何なんだ一体…」

 

 寝起きで怒鳴られ、額を抑えながら彼女は上体を起こした。

 そして自分がベッドの上にいることがわかると、何かを察したようだ。

 

 「あー……。教えてくれると助かる」

 

 苦笑いしながらそう返した彼女に頷くと、彼は腕を組んだ。

 

 「…いいだろう。

 まず、お前は俺に勉強を教える筈だったにも関わらず、寝た」

 「そんな気がする」

 「しかも俺に寄りかかって寝た。魔王であるこの俺に」

 「………それは済まなかった」

 「更に俺直々にベットまで運ばせた。

 極めつけに運んでやった俺に寝言で「いい子だ」などと言い放ち、抱き着いてきたかと思えば他の奴と勘違いだ!!!!

 ポンタとは誰だ一体!!!!俺はエリベルトだこのポンコツ教師!」

 

 鼻息を荒くして捲し立てる彼を見ながら、彼女は頬をポリポリとかいた。

 

 「あー…。迷惑をかけたな。私は昔から寝相が悪いらしくてな。

 ちなみにポンタはアシュヴィにいた頃に一緒に寝ていた、ケット・シーの人形だ」

 「…人形?」

 

 ポンタ=男だとばかり思っていたエリベルトは、目を丸くして聞き返した。

 この歳で人形と寝ていたということが恥ずかしいエリノアは、ほんのり頬を染めつつ頷く。

 

 「…………はぁ…。心配して損したではないか…」

 「心配?なんの心配だ」

 「そんなものエリノアが誰かと――」

 

 言いかけてピシリとエリベルトは硬直した。

 たった今、自分はエリノアが他の誰かと居ることが嫌なのだと分かってしまったからだ。

 

 「エリベルト?」

 「う、うるさいっ!!!!」

 「はぁ?」

 「誰が心配なんかするか!」

 「いやお前が自分で言ったんだろう…」

 

 慌てて言い返すエリベルトに呆れるエリノア。

 やれやれと息を吐き出すと、彼女は辺りを見渡した。

 

 「…まだ結界が保たれてるのか」

 「ん?あぁ。中々効果が切れないな。いつまで待てば切れるんだ?」

 「そんなのお前次第だろう」

 「どうやればいいんだ」

 「もう充分だと思えば勝手にキャンセルされるはずだぞ?

 別にこのまま結界の中に居たいと思ってたわけじゃあるまいし、敵がいる訳でも無いから数分で切れるとばかり思ってたんだが」

 

 不思議そうに首を捻るエリノアと違い、エリベルトは焦っていた。

 ある一つの可能性が頭の中を過ってしまったからだ。

 

 『このまま2人で居たかった』

 

 無意識にそう願っていたとすれば、あるいは。

 

 結界をキャンセルした後も、彼女が部屋を出ていった後も、ルーカスが部屋にやってきてからも、彼は顔を強ばらせていた。

 

 ――ルーカスがそんな彼をじっと見ていたとも気づかずに。

短めを意識したのに結局普通に2000字を超えてしまいました…。

書いてるとやめどころが難しいです笑

どんどん妄想が膨らんでしまって…

私事ですが、ゲームのイベントが忙しいのでもしも書き溜めてある分が終わってしまった場合、暫く投稿が空くかもしれません。


良かった、続きが読みたい、と思った方はブックマークや評価の方お願いします!

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