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EVM 〜侵獣大戦〜  作者: 低脳イルカ
一章
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一章❷

どうも低脳イルカです。

もし良ければ誤字脱字の指摘、矛盾、

作品の評価や感想などをお願いします。


 プロダクション部門。そこはEVMの生産工房の集合体。

 ここではバトル部門で消費される全てが生み出されている。


 今日は取り敢えず一番街と二番街に行く。

 一番街は武具全般、二番街はアクセサリー全般だ。

 他に三番街のスキンや四番街の消費系アイテムなどがある。


 今日の戦いで武器、アクセサリーをロストした俺は、ここで後日の第二次予選用の武具を買い込まなければならない。


 そしてそこからが始まりだ。

 EVMの武具はただ買って装備するだけではなく、その後に使い込み、習熟度を上げることでほんの少しだが威力などが増加する。

 更に、習熟度を最大にまで上げ『打ち直し』をする事で、1段階上の威力や属性、武器アビリティを獲得する。

 その面で行くと、俺の武具は無銘の中で最高品質だった。

 本当に惜しい武具を無くした…。


 さて、一番街にも様々な武具屋があり、俺は和風武器のブロックへ向かう。ジョブがサムライと言うこともあるけれど、刀が馴染んだと言うのもある。


 勿論ジョブが何であれ、洋武器だろうが中華武器だろうが装備することができる。しかし、適正武器にはほんの数%だが補正がかかり、更に、和風武器に特化したアビリティが和風ジョブにはいくつも存在する為、どうしても和風武器の割合が多くなる。


 また、EVMのメインストーリーに存在する侵獣達は土地に縁のあるモノが多く、『世界救済クエスト』以外は、基本的にその土地固有のジョブが活躍するよう設定されてある。


 それでも洋武器がジャパンサーバーの3割を締めるのは、漫画やアニメ、ゲームなどで海外のジョブを見て、それに憧れたからだろう。しかし、血縁システムは日本人には日本の神様や仏様をあてがって来る。


 無論一度拒否して、好きな神様や英雄を血縁にすることができるが、一番最初に充てがわれた血縁が、最良の結果を齎らすと情報屋達は言う。


 まぁ、それでも嫌なものは嫌だし、ゲームだから、振り切って海外の血脈を求めるのは何も悪くない(それを知らない場合もあるだろうけど)。けれど、ジャパンサーバーの100位迄のランカーは、俺も含め8割以上が和風ジョブを選択しているのも事実だ。


「佑午兄ちゃんの鎧はあそこのあれだよね?」


 桜色を基調とした花柄の振袖に葡萄色の袴、そしてヒールが少し高いブーツを履いた大学生の卒業式を連想させる真魚。


「『戸丸』の紺糸威胴丸、大袖・兜付き」


 こちらは真魚と同じ服装だが、振袖は水色に色取り取りの金魚柄の振袖、袴は淡萌黄色だ。2人とも華やかで、週の注目を浴びている。


「お、真夜よく覚えてるな〜」


 それに比べて俺はといえば、明治大正の服装の様な、白地のシャツに藍鉄色の着物、下は藍白を基調とした縦縞模様の袴に下駄姿だ。


 周囲の目の何なのこいつ感が凄い。


 撮っている奴もいるが、俺たちは肖像権機能をオンにしているから、録画をしても背景に混じって透明に写る。


「佑兄はそれを買ってから全然変えない」


「まーなー。今風にアレンジされているのもいいけど、何にせよ戸丸の防具は動き易いからな〜」


「そもそも、日本の防具は全体的に動きやすいじゃん」


「まぁ、そうなんだけど?あと、あそこは一見さんお断りでカスタムに応じてくれるから」


「ふーん。私は赤糸威鎧から変える気は無いけど?」


「いや別に他のが悪いってわけじゃ無いんだぜ?」


 戸丸は『紅丸』と言う和風鎧の老舗から出て、俺の駆け出しの頃からお世話になっている防具屋だ。


「っと着いた。先に一報入れといて良かった〜」


「ほんと、一見さんお断りっていうか一見さんが見つけてくれるか分からないところよねココ」


 一番街和風武具街の端の端、脇道をいくつも抜けた先の脇道の奥にある。

 しかも、暖簾も看板も出していないから、紅丸の親方が本気で心配して上客を何人か回したくらいだ。逆にいうと、紅丸の親方から信頼されていて、上客を回してもいいくらいの腕があると言う事だ。


 俺が戸丸と出会ったのは、既にその時、200位圏内にいた真魚と真夜の伝手で紅丸に赴いた時、良ければこっちを使ってやってくれと紹介状を渡された事が始まりだ。


 とんとん。とんとん。


「千草さんいる〜?」


「いるよー入りなー」


 中から一際明るい声が聞こえて来る。


「ほーい」

「お邪魔しまーす」

「お邪魔です」


 ザサっと戸を開け中に入ると、長屋2件分の和風の住居に防具の素材に囲まれた俺と同い年かちょっと上の眼鏡を掛けた女性が座っていた。


「でー如何どうしたの一体?急に来るなんて珍しいね?」


「んー予選会始まってるでしょ?」


「それ用に大至急1領作ってもらいたいんだ」


「今までのは?それを修繕すれば早いよ?」


「それが…ロストしたんだ」


「えぇ!!?何でっ!?あそこまで育てたのにっ!?」


 作業していた手からボトッと材料と経の大きい針が落ちる。


 俺の紺糸威胴丸、大袖・兜付きは、大元をベースに様々な素材を注ぎ込んだ改良品だ。


 刀の威力を上げるために行う打ち直しを、面倒という観点から行わない鎧で何回も行った結果だ。時間も金も掛かった。


「ど、どうして…」


 色々ショックが大きすぎたようだ。


「り、理由は?」


「ん〜今日修行に出かけた餓狼の谷で、レアボスが出てさ。

 それのブレスを食らったら全部ロストしたんだ」


「なっ…何であんなとこに行ったの!?」


「何で餓狼の谷を知ってんの?」


 生産系は基本的に外に出ないから、バトル部門には来ないはずなのに…。


「生産系の掲示板に、そこで防具をボロボロにされる人が続出しているって載ってたの。そこで能力アップする為にバトルの連中で破産した奴が何人も出てるって…」


「はぁぁぁぁん!!?」


 俺はバッと真魚真夜コンビを睨む。

 真魚真夜コンビは即座に目を逸らす。


 それを見て千草さんは察したのか


「うん。なんか経緯いきさつが分かった気がする…」


「そんなに時間無いだろうから、『即製丸』を使うよ」


「マジで!?あれって高いんじゃ…?」


「ウチは1人って事でちょっと割高にしてるし、時間も貰ってるから即製丸のストックは結構あるからね…。その代わり…」


「その代わり?」


「こ、今度…で、でででデートして?」


「「「ブフォッ!!?」」」


 兄弟で吹いた。


「マジでマジでマジで!?」


「ちっ…ちちちち千草さん!やめときなって!絶対直ぐにラブホに連れ込まれるよ!?」


「ダメッ!絶対ッ!!おクスリよりもヤバいやつッ!」


 ちょっと待て妹達よ…それ酷く無いか?しかし…。


「OKです!」


「「このダ兄!!黙ってろ(て)!!!」」


 妹達が吠えて、千草さんを説得するが千草さんは両手をふくよかな胸の前に出してグーにしている。俯き加減だが、紅潮しているのは顎から首にかけて明らかに分かる。しかし、決意は口元に現れている。


「やる…。私、最高の1領を作ってみせる!!」


 この一言を最後に妹達も折れた。


 そして、狼達との戦いから白狼戦までの記録を見せて、俺の持つ全ての鎧用素材を渡した。


「この素材達を1つも無駄にしない。私に出来る極限の1領を約束する。

 けれど、時間が必要だから2時間後にまた来て」


「分かった。有難う千草さん」


 最後に握手を交わしたその手は、燃えるように熱かった。


 ◆◇◆◇◆


「このダ兄…」


「エロ兄…」


 妹達の罵声など今の俺には届かない。

 ヤッバい…もうドッキドキだわ…。


 そんな胸を押さえながら、刀剣が並ぶ街を見て回っている。

 イマイチグッと来るものがない。刀に関しては馴染みの刀匠がおらず、選ぶのに苦労している。


 かれこれ30分程見て回ったが、一向に良い太刀と脇差が見当たらない。


「佑午兄ちゃん…五番街行こうよ…」


「五番街?あぁ、質・骨董品街か〜」


「私鑑定スキル持ってるから、良いのあれば見繕える」


「そっか、じゃぁ、そうするか」

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