1 また死んじゃいました…
異世界転生を書いてみたかったので…。
少しだけ、グロ有。注意。
私、「坂口椎名」は、小学4年の頃、下校途中に車が歩道に突っ込んできて、事故にあった。その衝撃で私は異世界人だったことを思い出した。
そう、その異世界では私は聖女だったのだ。魔王を倒すべく、勇者たちと共に死闘を繰り広げ…。
…ってここまで聞くと、なんだ中二病か。と生暖かい目で見ていることだろう。
ほんとなんだよ!と、親や兄に話しても、またか。といつも言われていた。
まぁ普通はそうだよね、現実的に考えて。事故にあった衝撃で中二病を発症したかわいそうな妹という扱いだ。足を折っていたので、入院中は只管寝て、泣きながら起きるということを繰り返していた。
寝ている間に、前世の夢を見て、聖女であった事と壮絶な死を思い出していた。聖女だった時の私は24歳。
なので、頭脳は大人、身体は子供!という某漫画みたいに、大人びた子供が出来上がった。
子供が見てはいけないような内容だったのだが、見たくなくても、見させられてる夢に逃げることもできず、何度も病みかけた。そして、大人の男が怖くて、父や兄を避け、中学になるまで引き籠りになり、部屋から一歩も出なくなった。それすらも、家族は事故によるショックが大きすぎたのだろうと、腫物に触れるように大事にされた。
魔王なんて大っ嫌いだ!
それまでは、勇者や魔王が出てくる某ゲームや漫画が大好きだったのだが、前世を思い出してからは、目にするのも聞くのも苦手になった。
だって、前世は魔王に殺されたのだから…。
この記憶を抱えたまま、中2になった。このままではダメだと、意を決して学校に通おうと両親に伝えると、泣かれた…。そんな私をあざ笑うかのように、登校中に青信号で歩道を渡っている私に向かって、トラックが猛スピードで走ってくる。あぁ、これは助からないな…と、思った。
前世に振り回されるなんて…と必死に日常に戻ろうとしたのに…。前世も今世も、寿命を全うさせてくれないらしい。
気づくと真っ白い場所にいた。
浮いているようで立っている不思議な感覚。ここはどこだろうと辺りを見渡しても、上も下もわからない真っ白い場所…。
えっと…トラックが突っ込んできて…死んだんだよね、私…?
どうしたらいいのかわからないので、しばらくぼ~っとしてたら、突然目の前が光った。まぶしくて手をかざして目を瞑り、光が収まったのを感じて、目を開けた。
すると、光った場所に、今度は男の人がいた。
真っ白い髪に、真っ白いスーツのような服。瞳も白い。
「あなた…誰?」
「…すまない」
「…?」
「また、護れなかった。今度こそ、役目を果たせるように、今度は使役する権利を一時的に譲るよ」
「…何を言ってるのか、私にはさっぱりなんですけど~」
一方的に話す男に、ジト目で睨む私。そんな私に、困ったような表情をしながら首を傾げる男。
いやだって、意味わからないですし。護れなかったって何からですか。使役する権利って何ですか。突っ込んで聞くと、真っ白い男の人は、いわゆる神様というやつで、先ほどの話は、魔王と聖女の戦いに関してらしい。
あ~、夢でみた前世の話ですね。
神様が管理する異世界に、魔王がやってきたのだという。
神様曰く、魔王は別の世界から来たのだという。
そして、世界を少しずつ蹂躙していったので、神様は対抗策として、精霊と相性が良い人間に魔王を消滅させる力を与え、聖女に仕立て上げたのだという。それが前世の私というわけだ。
聖女一人では、戦力不足ということで、神託という形で勇者たちを集め、蹂躙された地域を解放しながら、魔王を倒すべく旅をしていた。あとは魔王を倒すだけ、となり魔王城に攻め込む勇者たちと聖女。魔王に深手を与え、いざ!というときに、異変が起こった。魔王がいた世界から、魔王と同じ力を持つ者が現れたのだ。それも傷ついた魔王のすぐ側に。
勇者たちは慌てた。それもそうだ、魔王は一人と思っていたのだから。魔王一人でも手こずっていたのに、同じ力の者が現れたことで、形勢は逆転した。聖女の癒しも間に合わず、勇者たちは息絶えた。
攻撃する手段を持っていなかった聖女は、傷つけられ嬲られた。聖女は自己治癒能力があったため、簡単に死ぬことができなかったのである。
最期は、魔王たちに飽きられたのか、首を千切られ絶命した。
その後、聖女の魂を回収した神様は、精神的に疲労した聖女を癒すために、私がいた世界、地球に転生させた。心の傷を少しでも癒し、その後、再び聖女として魔王を消滅させるために…。
私が今回事故で死んだのも、魔王のせいらしい。どういうわけか、魔王の力で事故に合い、命を失った。幼い頃の事故もそうらしい。直接手はだせないから、車を操っていたらしい。
なるふど、理由はわからないが、安全なはずの地球でも私は狙われていた…と。
…なんじゃそりゃぁぁ!!そしてまた、魔王がいる異世界に転生ですか!
神様が魔王をどうにかすればいい!そう言っても、神様の世界のルールらしく、神様は命を奪えないらしい。できるのは力を与えて、手助けすることだけ…。使えない…。
「…ねぇ神様、手助けってさっき言ってた使役のこと?」
「そう。世界を維持する精霊を好きに使っていいから。俺の権利を渡しておくよ」
「好きに……ねぇ…。他には…?」
「え…?」
「まさかっ!治癒や補助魔法しか使えない聖女に、精霊の使役を追加するだけで、魔王たちを倒せっていうんじゃないでしょうね!せめて、攻撃魔法とか何か攻撃する力も欲しいんですけど!!あと、消滅魔法が詠唱が時間かかるし、魔法陣の完成も遅いので早くできるようにしてください!また魔王に殺されたくないんですがっ!!」
「あ…そ、そうだね…消滅魔法の速度はどうにもできないんだけど……じゃあ……全ての魔法を使えるようにしよう!あと…サービスもつける!」
「おおお!!ちょっと納得はいきませんが、これで、攻撃する手段が!ありがとう神様!」
魔王に対抗するために、使える権利は全て頂く!私だって、何度も死にたくはないからね!
「じゃあ、これで…」
「あ、待って!」
「…なにかな?」
「神様…あなたの名前はあるの…?」
「名前…他の神からはエリトアール、と呼ばれてるよ」
「そう、エリトアール様…今度は役目を果たせるように頑張るよ。果たせたらお願い聞いてくれる?」
「お願い?」
「そう、お願い…」
「……そうだね、キミには苦労をかけてる。果たせたらその時に…」
「うん、よろしくね」
「あぁ、じゃあ、転生を始めるね」
こくりと頷くと、目の前が白くなる。神様は笑顔で見送ってくれた。
そして、私は、坂口椎名からマリテーヌへとなった。