3.冒険者ギルドで、冷たい視線を
ここが、冒険者ギルドか。
思っていたよりも小さいな。
木造二階建て。
少なくとも外見からは、そう判断できる。
ただ単に支部だから、というのもあるとは思うけど。
まぁ、まずは登録だ、中に入ろう。
扉を開けて、ギルドの中へ。
……うーん。
空いてはいるかな。
帰ってきた冒険者さんたちは、すでに酒場とか宿とかに行っているのだろう。
入会の手続きをするところは、っと。
えっと、……あそこかな。
一番右端の受付。
てか、そこだけ受付の方が女の人じゃないんだけど。
なぜか中年くらいの男の人が、受付をしている。
いや、きっとあれだ。
人が足りないからだ。
そう、仕方なしに違いない。
じゃないと、あんな強面じゃ逃げ出す人とかもいそうだし。
「す、すみません。冒険者ギルドの登録をしたいのですが……」
恐る恐る私が声をかけると、受付の男の人は私を見た。
この人の目、とても冷たい。
見下すというか、何というか。
でも、あの神様の冷たさには今一つ、及ばないかな。
あの人の目はヤバかった。
ま、一瞬で笑顔に戻していたけどね。
うぅ……。
冷たい目に見つめながら話をしないといけないのかな。
「アンタが、か。ほかに仕事はないのか」
「はい」
そう答えるしかない。
この世界に来て、右も左もわからないとか、そういうわけではないけれど。
それでも、これぐらいしか生きるための稼ぎ口を思いつかないから。
土地もお金も持っていない、16歳の女子ができることなんて、限られている。
ここで断られたら、それこそ身を売るくらいしかない。
「そうか。じゃあ、登録料の…30ペルナを出しな」
……あれ?
「15ペルナじゃないんですか?」
「……ふん。多少の知識はあるようだな。じゃあ、15ペルナ、出してみな」
よかった。
本当に30ペルナだったら払えなかったよ。
私は、スカートのポケットから15ペルナを取り出す。
「ピッタリあるな。だが、警戒心が足りなさすぎだ」
えっ?
「取引をするときにはまず、相手のモノを見てから、それに見合った対価を出すんだ。
今回の場合は、ギルドカードの作成だな」
???
「見た目から見てどこかのお嬢様なんだろうが、世の中そんな甘くないってことは覚えておきな。
ま、登録料のことは見破ってたからな。今回は見逃してやるが」
おっと。
もしかしてこの人、優しい?
確かに私は今、学校の制服を着ているし、町人には見えないだろう。
「この石板の上に手を置け。カードを作る」
「えっ、でも……」
あなた、今さっき、警戒しろといいませんでしたか?
「心配なら周りのヤツに聞いてみろ」
……まあ、大丈夫かな。
「わかりました」
私は差し出された石板の上に手を置く。
心なしか、この人の視線の冷たさが和らいでいる気がした。