2.近くの町で、身分の証明を
ユーレシ町まではあまり迷わずに到着することができた。
これも知識のおかげ。
こちらもVRの画面みたいな地図が、四角いウィンドウで出てきたのだ。
スマートフォンで地図アプリ見ている感じで、スイスイ進むことができた。
もしかすると、世界一周旅行に行けるかも。
とすると、世界の常識の知識もやりたいことに使えるかな。
戸籍のない世界みたいで、前いた世界ではできなかったから。
だからといって、この世界で叶うとは限らないけど。
ていうか、そっちの方が可能性が高い、か。
さてさて。
そんなことを考えているうちに町の門の前にたどり着いた。
けっこう並んでいる。
冒険者、かな。
時間帯的にちょうど被ったらしい。
違う街に行こうかと思ったけど、少し遠いらしい。
村は……、治安が悪いといけないからやめとこ。
結局、この列に並ぶしかない、か。
仕方なく、私はその列に並び始めた。
にしても長いなぁ。
なんとなく気になって、前の方を見てみた。
見た感じ、思ったよりもスムーズに進んでいる。
門番さん?が二人で、えっと、通る人はカードみたいなのを見せているのかな。
……いや、ちょっと待て。
そのカードって、身分証明書じゃないか?
うん、通るのに身分証明書が必要と、世界の常識の知識さんのおかげでわかる。
ちなみに、身分証明書がない場合はお金を払って、仮のものを発行してもらうのだ。
そして、私は肝心の身分証明書を持っていない、と。
学生証はあるけど、そもそも文字が違う。
この世界のお金も、持っていない。
うん。
この状況、ヤバくない?
「次、お嬢ちゃんだ。何か身分を証明するものをだして」
しかも、考えているうちに、いつの間にか一番前まで来ているし。
どうしよ。
「持ってないのか。だったら仮のものを発行するから、手数料の3ペルナ出して」
マジでヤバイ。
ええっと、考えろ、私……っ!
「どうした」
「あ、あの、お金を落としてしまって……。所持品の買取はできませんか」
こう言うしかないよね。
こんなことなら、帰り道に何か採集でもしてこればよかった。
「うーん。今の時間、混んでるからなぁ。一時間ぐらい後なら受け付けてやれるんだが」
門の兵士さんも迷惑そうな顔をしている。
ちょうど混んでる時間帯だしな。
「わかりました。ご迷惑、おかけしました」
何か採って、一時間後にまた、来よう。
***
一時間を少し過ぎた頃。
私は無事に門の中に入ることができた。
追い返されて(ほとんど私が悪いよね……)から、ユーレシ草原で採集をした。
採れるものは採る、って感じで。
ユーレシ草原は魔物がほとんどといっていいほどでないことはわかっている。
だから、それほど周りに注意しながらじゃなくていいのが唯一、よかった点か。
魔物は隣のユーレシ林まで行かないといないらしい。
相場という、変わるものの知識はさすがになかったから、どれだけでいくらくらいか、とかがわからなかった。
薬草類と普通の雑草の違いは、もらった知識から何とか判別できたけれど。
結構頑張った。
なんせ、一時間で20束以上集めたんだ。
正確には24束かな。
一束は12本だ。
ま、3束で1ペルナだったから、9束で足りたけど。
ペルナはお金の単位だ。
円、と同じくらいの相場だ。
今から、冒険者ギルドに登録をしに行こうと考えている。
ギルド登録に必要なお金は15ペルナ。
手元にあるお金も15ペルナ。
これでまた、無一文。
そうなると、今日は野宿かな。
今から依頼を受けても、間に合わない可能性のほうが高い。
他のギルドだと色々面倒な手続きがいるらしいから。
これからのことも考えると、やっぱり冒険者ギルドが一番いい。
身分に関係なく登録できるからね。
「はぁ。……よし、行こう!」
実は本日から、違う作品の投稿も始めました。
ジャンルが全く異なるのですが、ぜひ読んでください。
「私は奇跡を探している」が題名となります。