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プロローグ


 『願い』


 世の中にはきっと、たくさんあるそれ。


 もちろん、私の中にもある。


 けど私のそれは、決して叶わないもの。


 それが事実。


 それが事実、()()()




 ――神様が私の目の前に、現れるまでは。




 ☆☆☆




「ボクの世界に来てよ!」


 いつも通りの下校途中、謎の少年は目の前に現れて、いきなり言った。


 本当に突然のことで、思考が停止してしまった。


 ほら、誰だって周りの風景が真っ白になって、その上で目の前に知らない人が現れたら驚くでしょ。


 しかも、話しかけてまできたら。


 ……つーか、誰だろ、この人。見たことないけど。まさか、新手のナンパ?


「だってほら、君はこの現実から逃げたいと願ってるんでしょっ」


 キャップを反対にかぶって、春の季節には似合わないタンクトップと半ズボンをきた少年はそう言った。


 私は言葉を発することができずに、ただポカンとしているだけ。


 ……現実から逃げたい?


 いや、たしかに願いが叶いそうにないこの現実に嫌気がさしてそう思っちゃってるのは事実だけど。


 普段生きてて嫌なわけじゃあ、ないよ?


「どうしたの? ほら、前にも言ってたじゃん。こんな世界、イヤだ、って。逃げたいって、さ。違う?」


 まあ、たしかにね。


 一時期病んじゃってるときに、言ってたことも、あったかなぁ……?


 でもでも。


 最近は言ってないと思うんだけどさ。


「あのぉ……」


「私なんかが、って? うんうん、謙虚だね。それとも、謙虚に見せているのかな? ま、そんなことはどうでもいいや」


「いや、謙虚とかそういうのじゃな――」


 彼は人差し指を私の唇にあてた。


「だから、どうでもいいんだよ、ね?」


 スッ、と少年は目を細める。怖いくらいに、冷たい。私はそう感じた。


 って、違う!


 勝手に一人で話を進めないでよっ!!


「ボクが求めることは一つ。ボクの世界で実験に付き合って欲しいんだ」


「……はっ?」


 待って待って待って。


 もうすでに話についていけてないのに、いきなり変なこと、言わないでください。

 お願いだから。


 ていうか、先にこのあたり真っ白空間のことについてとかの説明、欲しいんだけど……。


「うん。今度ボクの世界に試練を下そうと思っていてね。それがどれぐらいのものになるのかがわかんなくてさ。サンプルの一つになってほしいんだ」


 だからさ、そこじゃないんだよ。


 実験の話は、まだ置いといてくれないかな。


「えっと、すみま――」


「理由は、あらかじめ被害があると知っている人はどんな行動をとるのかをしりたいから。何してもらっても構わない。討伐組の筆頭に立ってもいいし、のんびり暮らしてもいいし、ね」


 ……ダメだぁ、こりゃぁ。


 自分が話すのに夢中になりすぎて、全く聞いてくれないよ……。


「こっちの世界の神にも許可はとっているから、安心して。それと、試練が終わり次第こっちの世界には戻してあげるから、さ。

 付き合わせた報酬として、できる範囲での願いは叶えてあげるから。地位でもお金でも、ね。

 どうかな?」


 …………。


 ……なんでも、願いを、叶える……?


「どういう、こと、ですか……?」


 そんなことできるのなんて、それこそ神様とかじゃなけりゃあ、無理なんじゃ……。


 ああ、と彼は笑う。


「そういえば言ってなかったね。ボクは神。君を誘っている世界の神様だよ!」


 …………おっと。


 マジで神様なのか?


 返答的に、私のしたかった質問とは違う解釈をしてるっぽいけど。


「それで、どうかな。ボクの依頼、受けてくれるかな?」


 依頼、ね。


 うん。


「…………ごめんなさい、もう一度、説明してもらえませんか……?」


 できれば、説明してないこの不思議現象についても。


 メンドくさそうな顔、しないでよ。


 いきなりよくわかんないとこに連れてきて、よくわかんない説明を始めたあなたの方が悪い気がする。


 ここまで対応できてるだけでも、私、自分を褒めたいくらいなんだから。

 半狂乱になっても、おかしくはないと思う。




 ☆☆☆




 なるほどなるほど。


 つまるところ、アレだ。


「異世界転移ですね」


「うん、まさしくその通りかな」


 やった、神様からお墨付きをもらえた。


 ……じゃないね。はい。


 この少年神様(実年齢は不詳)の話を簡単にまとめよう。


 この白いよくわかんない空間は、どうやら神様が作り出した空間らしい。

 一応時間は流れてるけど、外と比べるとほとんど流れていないに等しいくらいに時間流れが違うとのこと。


 で、何故に私がこんなところに連れてこられたのかというと。


 私を、目の前の神様が行う実験のサンプルに、したいから。


 極論いえばモルモット……だけど、まあ、イコールとは言えないのかな?


 そして、実験のサンプルにするために、私をその神様が管理する世界へ転移させたい、ということだ。


 …………いやいやいやいや。


 いきなりすぎるって。


 違う世界への転移、つまり、異世界転移。


 ……まさか本当にあるとは思わなかったよ、異世界が。


「それで、私がその依頼をのめば、願いをなんでも一つ、叶えてくれると?」


「そう、なんでも、ね?」


 わー。


 願い叶えてくれるんだってー(棒)。


 ……もし本当なら、今の私にとって、渡りに船な内容だけれど……。


 その前に、異世界転移とやらについて、きちんと聞いておかないとだね。


「私を地球へ戻すのは、いつどこにですか?」


 私は尋ねる。


 聞いておかないと、お母さんとお父さんに迷惑をかけてしまう。


 それに、これ以上、悲しませたくない。


「んっとね、さっきまで君がいたところ。時間も同じ時間に返してあげる。

 それと、向こうの世界で年を取らないようにしてあげるから、後々影響が出ることもないと思うよ」


 わーお。


 年取らないんだね。


 あと、同じ時間、同じ場所に帰れる、のか。


 多分、実験が終わったら、かな。


 うぅむ。


 正直なところ、好条件すぎるんじゃないかな、と思う。


 多分。


 死にさえしなければ、私は特に損をせずに帰ってこれるんでしょ。

 ……いや、死ぬ可能性がある時点でリスクは跳ね上がるのか。

 異世界だもんね。戦争とか当たり前にしてるようなところだと、危険でしかないし。


 ……………………でも。


 …………それ、でも。


 このまま、願いが叶うかもしれないチャンスを逃してまで生きるくらいなら。


 この提案をのむのも、悪くはないんじゃないか、って。


 そう思ってしまうのも、また、事実。


 だと、したら。


 ……――選択肢なんて、ないじゃない。


「――受けます。引き受けますよ、その依頼」


 私がそう答えた瞬間、目の前が真っ白になった。


「ありがとう!!」


 なんて。


 そんな言葉が、響いて、消えていった。






 この時はまだ、なぜ自分が選ばれたのかなんて、知る由もなかった。

初めまして、叶奏と申します。

初の投稿です。

よろしくお願いします。


三日おきぐらいには投稿したいと思っています。

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