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用済勇者の異世界生活  作者: さめたおかゆ
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現状確認と予想もしてみる

 今までの生活で二人の存在には気付いていた。

 自分との関係の考察も出来ているけど、とりあえずは初めてはっきりと見えた二人についてだ。


 最初に目が合ったのは優しげな表情で此方を見ている美人。

 あまりに整った顔立ちのせいで若干驚いてしまった。

 今まで見た中でも上位三人に入る。

 長い髪を手で押さえながら覗き込んで此方に話しかけてきているがやっぱり何を言っているのか分からない。


 師匠に色々な国の言葉を教えて貰ってたから語学には自信があったのに少し悔しい。

 まあ一から頑張るしかないのか〜。


  めんどくさいな〜。


 まあ仕方ないか〜。


 さておき、続いてもう一人の青年。

 こっちはびっくりする程ぱっとしない。

 美人の後だったから思わず二度見してしまった。

 何故お前がこの美人と一緒に居るんだ?と不思議に思ってしまったが、この青年から漂う人の良さ。

 清廉潔白感が止めどない。

 溢れ出る善良性。

 胸焼けがしそうだ。


 侮れないかもしれない。


 それよりも気になるのは、青年が目元になにかを装備している。


 クリスタルドラゴン鱗を削り出して両眼の前に一枚ずつ黒色の縁で固定して耳にかけているそれは瞳を守る為の物なのか?それとも魔道具なのか?


 初めて見る道具だからすっごい気になる!


 鑑定持ちだったら今すぐ分かるのにちくしょう!


 それにしてもクリスタルドラゴンは力尽きると粉々に砕けてしまうから、生きている間に鱗を剥がさないといけない。


 しかし竜種の中では弱いと言ってもSランクモンスターである事には変わりないので、鱗の入手が中々困難なんだけど。

 さらにはそこからあのサイズまで削り出すのは、熟練の鍛治師でも中々難しいだろう。

 相当な技術が必要な筈。


 顔に固定するための縁の素材も気になる。


 金属かモンスターの素材か?


 わからないな〜。



 しかしこの二人は貴族とか大商人とかなのかな?


 でも今まで使用人がいた感じはしないし、だからといって冒険者には見えない。


 貴族だったらやだな〜。

 貴族は苦手なんだよな〜。

 めんどくさいし。


 師匠と旅をしている間は貴族関係の面倒ごとは少なかったけど、勇者として活動し始めてからは最悪だった。

 小賢しい手で籠絡しようとしてきたり、権力に物を言わせて脅してきたり、貴族の娘や爵位持ちの女性がハニートラップを仕掛けてきたり。


 何度かハニートラップに引っかかりそうになって仲間達にボコボコにされたな…


 やめだやめだ!思い出したらムカムカしてきたのでこの話はやめ!



 よく見ると二人が着ている服そんなに派手では無いけど、洗練されていて作りも良さそう。

 変わり者の貴族説も捨てきれないが…

 っ!?

 今気づいたんだけど、下に履いてある布団がふかふかだ!


 すっごいふかふか!!


 どのくらいふかふかかと聞かれれば、それはもうふかふか!! 


 国王様に呼ばれて城に泊まった時の客室のベッドもこんなにふかふかじゃ無かったぞ!

 これはもしかすると王族関係者かもしれない?

 使用人が居ないのはなんらかの理由で隔離されているからか?

 それともただ単に王族関係者の庶子とかでお金だけ与えられてるとかか?


 謎は深まるばかりだけど、そんな事より、そろそろずっと気になっていた事を確かめなければいけない。

 まず第一段階として、さっきから目の前の二人に話しかけようと悪戦苦闘としているけど、結果。


 「あ〜」


 とか。


 「う〜」


 とか。


 「だぁ〜」


 しか言えない。


 せめて名前くらい名乗ってみたかった。


 それはそれは二人とも驚くだろうし。


 驚いた顔も見たかったし。


 まあ出来ない事は仕方ない。


 非常に残念だけど。



 さあ!気を取り直して!ここからがメインイベントだ!


 この動かし辛いこの身体を駆使して二人に手を伸ばすのだ。


 …



 ……




 ………





 ……………思い通りに行かなさ過ぎて心が折れかけた。


 だがこんなもの師匠からの無茶振りに比べればなんのその!


 「だぁぁぁぁ〜(動けぇぇ〜)!」


 視界に自分の両手と思われる物が現れる。


 笑顔の二人がそれぞれの手を握ってくれるのが見えた。


 視界がはっきりしない時から感じていた温もりが両手に伝わってくる。


 確認も出来たし認めてしまおう。


 視界に入った両手はそれはもう小さかった。


 有り体に言えば赤子の手だった。


 どうやら俺は転生してしまったらしい。


 そして目の前の二人は絶対に俺の両親だ。


 不思議とそう理解できた。


 そして両手を伸ばすのに疲れてしまったのか急に睡魔が襲ってきた。


 おやすみなさい。

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