それに魔法で‥‥
アレムに向けて走り出した4WD車。
その車内ではアレク王があれやこれや運転している僕に聞いてきますよ。
なぜ椅子が柔らかい、なぜこのような形だ、なぜこの乗り物は速く走るのかなどなど、数えればキリがない。まあ、しょうがないと言えばしょうがない事だが。だってね、初めて車に乗るんだもの。僕も小さい時初めて車に乗った時は大はしゃぎしたものだと死んだオヤジが言っていた。
で、アレク王の横に座るイレイはウンウンと頷きながら聞いていたが
「光、この窓はあかないの?」
と聞いてきたのでイレイ側のウインドウをあけるとひとりでに開くウインドウにイレイはビックリして、
「お父様!窓が勝手に‥‥」とイレイはアレク王にしがみついた。
「あ、イレイ驚かせてごめん。僕の方で窓の開け閉めができるんだよ」
僕が言うとイレイはホッとしたのか、
「驚かせないでくださいね、光」
「す、すみません」
「そうだよ!光」
「「えっ?」」とアレク王とイレイ。
で、アレク王が
「誰か他に居るのかね?」と。
するとチーは助手席のヘッドレスの横にピョンと乗ると
「私ですよアレク王とイレイ姫」
と軽く会釈をするチーに2人は目を丸くして驚いたが‥‥暫くするとイレイが体を少し震わせ、
「か‥‥‥‥」
「えっ?か‥」
「か‥‥い」
「か‥い?」
「か、か、わいいいいいいいいいい!!!!!!」
と叫ぶとイレイはチーを両手で自分に引き寄せると自分の顔の頬をチーにスリスリして来た。
「可愛い!、可愛い!、可愛いいい!!!」
「あ、あの〜う、イレイ?」
と僕が言うとアレク王が
「イレイは‥‥その‥可愛い物を見るとこのようになってしまうのだよ」
なんだか、申し訳ない様な表情を浮かべて、僕に話すアレク王。
あ、あの沈着冷静に見えた‥‥あのイレイが‥‥あのイレイが‥‥。
人は見かけによらないものだな。
「く、くるし!ひ、光!た、たすけて」
「可愛い!可愛い!可愛いいい!」
「‥‥‥光!」と、何とかして欲しい表情で僕に話すチー。
「チー、暫くイレイと遊んでやれば」
「えーーー!そ、そんなあ」
必死に助けを求めるチー、哀れ。
そんなイレイを頭を抱えながら見るアレク王は
「あのチーとはなにか?」
と聞いて来たので僕は戸惑った顔をして
「‥‥えっと‥‥ですね‥‥本人は妖精と‥言ってます‥‥」
「ほお、妖精か。して、どんな妖精かな?」
「えっ?どんな‥‥‥」
そう言えば僕はチーのこと余りしらない。て、まだ会ってからそんなに時間経ってないし‥‥‥。
「‥‥すみません‥‥わかりません。‥‥僕もつい先程チーとあったばっかりなので‥‥」
正直にアレク王に話すと、
「そうか、わからないか」
と、なんの妖精か分からず残念な表情をアレク王はしていたが、
「しかし光は妖精に付かれるとは運がいいかもな」
「えっ!運がいいんですか‥‥僕が‥‥」
「そうだ、妖精に付かれた人は幸運が舞い込むと伝えがある」
えっ?僕が幸運?‥‥‥う〜ん、この異世界に転移され、兵に剣を突きつかれた‥‥‥う〜ん、けど‥‥確かにそうかも、イレイみたいや綺麗な人に会えたし‥‥‥。
そう僕が考えているとアレク王が
「しかしこの車と言う乗り物、こんなぬかるんだ道でも速く走るもんだな」
と、言うアレク王に僕は車のスピードメーターを見ると40キロそこそこしか出ていなかった。
まあ、確かに馬車に比べれば遥かに速い。普通の道なら馬車でも速く走れば40キロは出るだろう。けど‥ぬかるんだ道なら極端にスピードは落ちる。走れてもせいぜい12.3キロだろう。それを考えてると40キロはかなり出ているのだ。
だけどこのペースで本当に時間までにアレムの首都までいけるのか?そもそも、そこまで何キロあるんだ?そう思いながら運転していると、
「キケン!ゼンポウ二ショウガイブツアリ!」
「えっ?あっ!」
直ぐにアイの声に反応して道端にはみ出た岩を避けた。
「はあーっ、危なかった。ありがとうアイ」
「ドウイタシマシテ。ケドカンガエゴトシテノウンテンハキケンデス」
「はい、気をつけます」
と言うと後部座席のアレク王とイレイが驚いていた。
「光!今誰と話していたの?」
とイレイが聞いてきた。
「うむ、わしも知りたいぞ」
アレク王までも。
これがもと居た世界なら、AIナビです、で、「あっ!そうなんだ」で済むんだけど‥‥アイを初めて知った時のチーの様子からだとイレイとアレク王も驚くんじゃないか?
けど‥‥ここはやはり正直に‥‥
「えっと‥‥この車に取り付けてあるAIナビのアイ‥‥です‥‥」
車を一旦止めて後ろを振り向いて説明すると
「「えーあい‥‥なび?」」
アレク王とイレイは2人して首を傾げていった。
ですよねぇ。初めて見るんですから。とりあえずアイに挨拶してもらおうか
「アイ、アレク王とイレイに挨拶して」
「コンニチワ、アレクオウ、イレイ」
運転席側のダッシュボード上にある球体がキュイキュイと動いてるのを、運転席の後ろから顔を出し見ていたアレク王とイレイはまたも目を丸くして驚いていた。
「ひ、光。これも妖精なの?」
イレイが指を指して聞くと僕は困った顔をして
「‥えっと‥ですね‥う〜ん‥えっと‥妖精ではないです。はい」
「なに?妖精ではない!では、これはなんなんだ!」
アレク王まで身を乗り出して聞いてきたので
「‥えっと‥‥う‥えっと‥‥き、機械で‥す」
僕が言うとアレク王とイレイは
「機械が喋るのか?」
なあああ!これはどう説明すれば!コンピュータて言っても分かってもらえないし‥‥う〜ん、困ったぞ‥‥‥あっ!そう言えば、チーにああ言ったっけ。
「えっと、か、科学です‥‥」
「うむ?科学‥‥魔法科学か?そうか!魔法科学か。魔法なら納得だ!」
横のイレイも「そうなのね」と頷いている。
あの‥‥魔法じゃないんですが‥‥まあ、いいか魔法で。2人も納得しているみたいだし。
アイの説明を終えてホッとした僕はチーにあることを聞いた。
「チー、アレムの首都までどのぐらいの距離があるんだい」と。
「距離‥‥ですか?」
「うん。わからなければ今のスピードで夕刻までに目的地に着くのかい?」
「夕刻までに‥ですか?‥‥‥‥無理ですね今のままでは」
そのチーの残酷な言葉にアレク王とイレイはガックしと肩を落とした。
「この車と言う乗り物のスピードでも無理なのか‥‥」
「光、なんとかなりませんか?」
イレイが聞くが
ナビがない(地図がない)状態ではこの先の道がどうなっているか‥‥‥そう言えば僕はさっきチーになんて聞こうとしたんだっけ?‥‥
あっ!
「チーて魔法が使えるの?」
「魔法ですか?ええ、ある程度は」
それを聞き僕は手をポンと叩くと、助手席の前のダッシュボード下のボックスを開き何かを探し始めた。
「なにを探しているのですか?」
イレイが聞くと
「‥‥‥‥あった!」
チーにそれを渡すと、まじまじとそれを見るチーに
「それに魔法で‥‥‥‥」
とチーに頼んだ。