プロローグ!そして異世界へ……
「こんな馬鹿げた内容があるか!」
然程広くない書籍室の椅子に座る男は目の前の机をバン!と両手で叩くとそう怒鳴った。
ここはプリム小国のプリム城の王の書籍室。
そして今怒鳴った男は、プリム小国の現国王
アレク=ド=プリム王である。
城と言っても、そんなに大きな建物でもない(某ランドのシンデレラ城くらいか)。そんな城の中にある書籍室の隣は王と王妃の寝室になっていた。
朝一番に届けられたアレム大国からの書状を読んだアレク王は体を怒りに震わせ激怒し、近くに居た執事や廊下に警備していた兵まで驚かせるほど。
隣の寝室で寝ていた王妃のマキエ=ド=プリムも驚いてガウンを羽織り急いで書籍室に入って来た。
「あなた、いったいどうなされました?」
「こ、こんな内容の書状があるか!見てみろ!」
アレク王はマキエ王妃に書状を渡すと、それを読んマキエ王妃も驚く。
「貴国の第一姫君のイレイ=ド=プリム姫を我が国ゲイル=ド=アレム王子のお妃に貰いたい。慰問があれば本夕刻までにアレム城まで姫を連れて来たし」
と書状には書かれていた。
つまりイレイ姫を嫁に欲しい。断りたければ我が国に直接、姫と来たし。これがごく普通の王子からの書状ならプリム王も激怒することもなく、ただ悩んだだけだったろう。
しかしこのゲイル王子の良くない噂はプリム小国にまで流れて来ている。
このゲイル王子は女好きでも有名だ。 隣国に無理難題を押し付け、出来なければ姫をお妃にする。が、すぐに別の姫に乗り換えあきれば姫の母国へと送り返す。
つまりはやりたい放題だ。逆らえは武力行使にもじさない。
だがアレム大国の現国王、タイル=ド=アレムはこれに激怒。(常識のある国王だったんですね)軍はお前のおもちゃではないと、ゲイル王子に一喝。
で、頭をひねって出たのが無理難題をかけ出来なければ姫を貰うと。これならばとタイル王も許可をだしたとか。
しかし何故プリム王が激怒するか?
それはプリム小国からアレム大国の首都アレムまでは早馬を使ってもまる一日は掛かる。
今直ぐに出ても間に合うかどうか。
そんなプリム小国は、 四方を山に囲まれた小国。
その遥か昔には、プリム宝石なる物の採掘でかなり裕福な国だったが、今ではプリム宝石が取れなくなり小国家になってしまった。
「とにかくだ!イレイを起こしてこい!今すぐにアレムの首都に行く。馬と馬車を一番速いのを頼む!」
「はあっ!」
頭を下げる兵はすぐに馬と馬車の用意に取り掛かった。
「あなた‥‥」
心配そうに見つめる王妃に王は王妃を抱きしめると
「心配するな、イレイはあんな奴には渡さない。必ず。」
そう言うと王もすぐに動いた。
◇◇◇
所変わってここは現世。
街から少し離れた山奥、て言っても民家が一つもないわけでわなく点々と近くにある程度のそのうちの一つの家に住む男。
名は乙川 光50歳。因みに独身、結婚歴もなし。
親も、母親は八年前に、父親も五年前に亡くなった。 兄妹は妹が1人いたが東京の方で家庭を持っている。また親戚もいなく友達もいない。
そんな男の楽しみはこの歳にもなっても見てるアニメと車でドライブとソロキャンプに出掛けること。
そんな彼の車は軽自動車だが、キャンプに行く時は父親の残した4WD車(某社のSSR-G最終モデル)に乗り出掛ける事。
ただこの4WD車、父親がメカ好きな為結構いじってある。極め付けがこの車にはかなり優れたAIナビが取り付けてある(某アニメの○ラーダみたいなの)。
なんでも、亡き父親の友人が会社の試作品を取り付けたとか(結局開発は理由が分からないまま、中断したが)。
因みに乙川 光はメカにはあまり詳しくはない。
このドライブにしたってAIナビのアイ(AIナビに光が付けた名前、AIだからアイ)が週一乗らないと捻くれるので、仕方なくドライブに出掛ける。
「デ、キョウハドコイキマス?ヒカリ」
「今日は静岡のキャンプ場までいくか」
「ワカリマシタ。ヒカリ」
そう言うといつもの荷物(キャンプ品、モンキー、ドローンなど)を積んで出発した。
いつもの知れた山道を日も登らない内に走る一台の4WD車。
そんな山道も朝日が昇ると陽に照らされた木々などの葉が黒から白にそして徐々に日が昇るに連れて辺りが明るくなると白から緑へと周りの景色が変わり始める。
僕はそんな時が一番好きで、何処かへ出掛ける時は必ず日が昇る前に出掛ける。
そしていつもの山道の古いトンネルに入って走っている時……
「あれ?ここのトンネルてこんなに長かったっけ?」
僕はアイに聞いて見たが、返事がない。
「アイ?」
「‥‥‥‥ジーピーエスノジュシンガ‥‥」
「アイ?どうした?‥‥‥アイ?」
「デンパガ‥‥‥トドキマセン‥‥」
確かにトンネル内はGPSは受信されないけど、アイがいつもは自分でナビのデーターからこの辺りを走っていると教えてくれるのに何故今日に限って‥‥‥
「故障か?」
そう思いながら走っていると、今度はトンネルの照明がいきなり消えた。
「えっ?どうした?停電か?」
すると今度はトンネル内で雪が、いや違う!光の様な雪が降って来た。
僕は車を止め窓を開け手を伸ばす。手に付いた光の様な雪は、僕の手の平ですぐに溶け水になる
「やっぱり‥‥‥雪‥‥だよな。けどこの春先に雪なんて……しかもトンネル内で……」
そう言っていると風がピューウとまるで誰かが車内に入って来たかの様に吹き込んで来た。
「さ、さむうぅぅぅ」
僕は直ぐに窓を閉め車を走り出した。そしてやっと出口の光が見えた。
「やっと出口か‥‥‥けどなんなんだこのトンネル」
そう思いながら僕が運転する4WD車はトンネルから出た‥‥‥のだが……
僕の目の前の景色は見たこともない緑の木々に覆われた山々に囲まれた砂利道に出た。
「えっ?なあ!あぶない!」
急に砂利道に出た為ハンドルを取られそうになった僕は直ぐに車を止めた。
「はあっー、危なかった。いったいここは?アイ、アイ!」
「ハイ、ナンデショウ?ヒカリ」
「良かった、壊れてないみたいだな」
「コワレル?ワタシガデスカ?」
「そうだぞ。さっきは僕の声にも反応しなかったし。所でアイ、ここどこかわかるかい?」
「ココデスカ?シバシオマチヲ‥‥‥ワカリマセン」
「えっ?わからない?どう言うことだよ」
「ナビノデータニハナイバショデス」
「データのない場所?そんな場所あるかよ。もう一度検索してくれないか」
「ハイ‥‥‥‥‥‥‥ヤハリ、データニナイバショデス」
僕はいったいどこにいるんだよと、僕は周りを見渡したら……
「ここはグリーングリーンワールド。ようこそ異世界から来た人よ」
「えっ?グリーングリーンワールド?て、誰かいるのか?」
「ここだよ、ここ」
僕は辺りをキョロキョロと見渡し車のダッシュボードを見ると、上にある20センチ程のイタチのぬいぐるみが手招きをしていた。
「ここだよ。ようやく気づいてくれた」
目を丸くし驚く僕は、イタチのぬいぐるみを見た。しかしその驚きはぬいぐるみが喋っている驚きではなく、
「なあ今、僕に「異世界から来た人よ」て言ったよな」
「えっ?ええ、言いましたけど」
「そうか!異世界か…異世界、異世界、異世界、異世界!」
「あの〜う。普通ここは驚ろく所なんですが‥‥‥」
そうイタチのぬいぐるみが首を傾げおかしな奴的な顔をしながら僕を見る。
「えっ?あ!驚いたよ。驚いた」
僕は驚いた様に見せたが顔はニタニタして喜んでいた。
何故かって?、それは僕が昔から異世界に興味があったんです。アニメやラノベなんかは異世界物ばかりを見たり読んだりしていた。
そして今、僕の目の前には異世界がある。
「ところで‥‥‥イタチのぬいぐるみ‥‥じゃなく。お前には名前があるのか?」
僕が聞くと
「私ですか?ないですよ。」
「えっ?ないの?じゃあ、名前がないと呼ぶ時不便だし‥‥‥‥チーてのはどうかな?イタチだからチー」
イタチのぬいぐるみはなんか単純、て顔を見せるがしょうがないかなて腕を組んで、
「いいですよ。チー、で」
「じゃあ、よろしくチー」
「こちらこそ。光」
そして僕は再びハンドルを握ると、異世界の道を4WD車で走り出した。