告白
それは夏休み直前のことだった。
「私と付き合って」
放課後、学校の校舎裏で俺、鹿島慶介は告白されていた。
俺はその告白を断る。
「ごめん」と言って、だが彼女は食い下がり、
「付き合って」とまた繰り返した。
けど俺の気持ちは変わらない。
「悪いけど」とまた断る。
告白を断るのは心が痛むが俺にはもう好きな奴がいる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばしの無言の時間が過ぎ、彼女がまた口を開く。
「付き合って」
・・・・・・デジャブ、
「本当に悪いけど」
三回目の告白の拒否。
さすがに三回も降れば終わりだろうと思い一様返事をしたのだが、彼女は諦めなかった。
「付き合って」
「無理だから」
「付き合って」
「・・・・・・あの」
「付き合って」
「あのー?」
「付き合って」
「いやだから」
「付き合って」
「だからさ!」
「付き合って」
「いや・・・・・・」
あまりのしつこさに俺は言葉を失った。
俺に告白してきた彼女、氷川雪は同じクラスメートでかなり美人で評判の子だ。
細い体に色白の肌、整った顔立ちと綺麗な黒髪ロングという日本テイストな美人。
噂によると彼女のファンもいると聞いたことがあるほどだ。
そんな彼女が俺に告白をしていて、それを俺は断っている。
こんな光景を他の人に見られたら死刑ものだろうが、俺には好きな奴がいる。
だから告白を断っているのだが・・・・・・
「付き合って」
こいつは聞く耳を持って無かった。
何でこいつこんなにしつこいんだよ?そもそも俺に告白してくる意味も分からない。
俺は氷川とロクに喋ったこともないのだ。
「あの氷川・・・・・・何度も言うようにお前とは付き合えない」
さっきの話に戻しまた断る。
「付き合って」
この野郎、仕方がないこうなったら正直に言うか、今までより少し声のトーンを低くして、真面目な感じで・・・・・・
「実は俺には好きな奴がいるんだ。だからお前とは付き合えない」
自分に好きな人がいることを言うのは少し嫌だったが、これでどうだと言わんばかりに言ってやった。
すると流石の氷川も黙った。
少しして、「その好きな人って?」と初めて付き合って以外の言葉を発した。
ここで隠す意味も無いので、正直の答えようと思い、息を整え、覚悟を決める。
「俺の好きな奴は・・・・・・」
「好きな奴は?」
「二次元のキャラが大好きなんだーーーーーーーーーーーーーーーーーぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
空気が一瞬固まる。
ふふふどうだ氷川!!声も出ないだろう。
そう!俺の好きな奴、それは二次元のキャラなのだ!ア●ナも雪●下も御●さんも!あっもちろんインデ●クスも!最近なら白●京とか空●子とかも好きだ。
とにかく二次元のキャラで、特にラノベのキャラが俺は大好きなんだ。
二次元ラブ!!愛してる!!だから俺には三次元の彼女など必要ないのだ。
一方俺のカミングアウトを受けた氷川は、自分が何を言われたのか分からないという感じでポカーンとしている。
引いたか?だがそんなことどうでもいい、どんなに美人でも三次元になど俺には興味が無い。
「じゃあそういうことだから、お前とは付き合えない。じゃあな」
問題解決、俺は氷川に背を向け歩き出す。
「待って」
だが完璧に引かれる行動をした俺を氷川は呼び止める。
「まだなにか?」
「私と付き合って」
彼女の眼には迷いがなかった。
おかしい普通じゃない、この氷川雪という女はほかの女と違う。
普通の女ならドン引きし、軽蔑をする筈だ。
言った俺が言うのもなんだが、二次元のキャラが好きだからお前とは付き合えない、なんて言う男は屑だ。
あれ、俺って屑だったのか?そんなことを思っている俺を他所に、氷川はじっと俺の返答を待っている。
「なっ何で俺なんだ。言っちゃうと俺とお前じゃ釣り合ってないだろ」
すると氷川はすぐに答える。
「それは貴方が・・・・・・」