合法ロリを得た勝ち組なのに、何故か堅物な男の話。
あるところに小さな村がありました。
男の子はそこのたった一人の神父様によって教会で育ちました。
彼に親はいませんでした。
母親は病で亡くなっていました。
父親は、病を治す為の高価な薬を買うために強盗に入り、捕まりました。
しかもその際に、人を殺していたのです。
父親は何年も牢に入ることになり、その村では有名人でした。
男の子は村の人々に虐げられていました。
同い年ぐらいの子供達とは、遊ぶことはできませんでした。
それでころか、石を投げつけられることすらあったのです。
大人たちは、男の子が昼間に外を歩いているとひそひそと陰口を叩きました。
男の子は、知らず夜に出歩くようになりました。
夜の散歩が日課となったある日のこと。
男の子は美しい女の子と出会いました。
その女の子は、長い艶のある漆黒の髪と血に濡れたような赤い瞳に、
陶器のような肌を持っていて、子供が着るようなには贅沢なドレスを着ていました。
男の子はその子のことが天使のように見えました。
そうして彼は彼女に、おずおずと話しかけました。
最初はぎこちなかった会話も段々弾んで彼は、自分のことを話すようになりました。
本が読むのが好きなこと。
一緒に暮らしている神父様が大好きなこと。
自分は、この街の人達にいじめられていること。
将来この村を出たくて、学問や武術の勉強を頑張っていること。
親が犯罪者のせいで酷い目に遭っていることと、
そのせいで些細な罪でも許せないこと、将来は本当は神父になりたいことは話しませんでした。
女の子も自分のことを話しました。
甘いものが好きなこと。
本を読むことも好きなこと。
お裁縫が苦手だが、頑張っていること。
同い年の人間と余り話をしたことはないこと。
女の子は一生懸命姿はとても可愛らしく、お人形さんのような印象から一変しました。
二人はすっかり意気投合して、これからも会おうと約束しました。
それから何年にも二人は逢瀬を重ねました。
ところが、男の子が女の子と出会ってから不思議なことが2つ起きました。
1つ目は村で1年に、1人2人死人が出るようになったこと。
2つ目は男の子が少年から青年になっても女の子の姿は変わらなかったことです。
そこで、神父様に男の子はいつまでたっても年の変わらない人間はいるか聞きました。
神父様は、冗談だと思って笑って首を振りました。
だが、飽くまで伝聞だがと続けて、
血をすする化け物なら姿は変わらないそうだ、
彼らはとても美しく、何よりも目が真っ赤なところが特徴だと言いました。
男の子は女の子の目が赤いことを思い出しました。
その晩、男の子は眠れませんでした。
女の子は彼にとってたった一つの宝物のような存在だったのです。
村人達に酷く罵倒され、時に暴力をふるわれた時際、慰めてくれたのは彼女でした。
彼女がもし、いなければこの村で生活することに耐えきれず首を吊っていたかもしれないと思いました。
同時に、犯罪者の息子として村人に罵られてきた自分の生涯を想いました。
彼にとって、清廉潔癖であることは人生の目標であり、人を殺すなんてとんでもないことでした。
来年に神父になるための学校に入ることも決まっていました。
男の子は悪は倒されなといけないという思いと女の子への想いで葛藤しました。
ある日のこと、いつもどうり男の子が夜の散歩をしていると、がさりという大きな音がいました。
男の子が近づいてみるとそこには女の子がいました。
女の子はその鋭い牙を村人に突きたてていました。
村人は恐らく死んでいるんでしょう、灰色の顔色をしてぐったりしていました。
女の子が啜り損ねた村人の血がたっぷりと美しいドレスについています。
何をしているんだと男の子は叫び、銀のナイフを構えました。
貴方と離れたくないからこの村の人の血を吸っていた、
ここの人たちは貴方を酷い目に遭わせたのだから死んでも仕方ないでしょと彼女は言いました。
酷く無邪気な微笑みがこの場に不釣り合いでした。
男の子はたった一人の友達を失いたくなくて女の子の素性を聞かなかったことを後悔しました。
おお神よと男の子は思いました。
彼はしばらく身じろぎも出来ませんでした。
それから、銀のナイフを取り落とすと自分が神父になる資格を失ったことを知りました。
男の子は女の子に近づくと、
ドレスにたっぷりと染みている血が自分につくのも気にせず抱きしめて言いました。
これからは俺の血を吸えばいい。
ここの村から離れて、2人で長い長い旅に出かけようと言いました。
女の子は心底嬉しそうに笑うと頷きました。
そうして、2人は誰にも言わずに旅に出ました。
薬師の男と美しい女の子の変わった組み合わせの二人の噂を貴方も聞くことがあるかもしれません。