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出会い

作者: London

春、1人の女性と出会った。


なんとなく見に行った桜並木で花見をしていた大学生のお姉さん。

サークルのメンバー達と料理を囲って楽しそうにしていた。

僕はなぜか「こっちへおいでよ」と、その集まりに混ざることになってしまった。

気まずくて、緊張して、何を話したか全然覚えてない。

宴会も終わりに近づいたとき、お姉さんが僕に一本のテニスラケットを渡してくれた。

一生懸命断ったけど、半ば押し付けるようにして、彼女たちは帰っていってしまった。


「上手になったらまた会おうね」ってお姉さんは笑っていた。

来年のお花見で会えたら返そう。




夏、花火を見に行った帰りに、迷子の女の子を見つけた。


人がぞろぞろと家路につく中、その子は泣きそうな顔でおろおろしていた。

声をかけると、その子はわっと僕に泣きついてきた。

蒸し暑くて、薄暗い夜の中で一人お母さんとはぐれるなんてすごく不安だったんだろう。

花火大会の会場の近くには交番はなくて、僕は彼女をつれて歩き回った。

泣きながら僕の手をぎゅっと掴んでる彼女を見てると、とても辛い気持ちになる。

結局両親と会えたのは、それから1時間後だった。

ちゃんと会えて良かった。それで僕も嬉しかった。

お礼の言葉と一緒に、来年の花火大会にまた来るから会おうねって

初めて笑った彼女の顔を見た。



秋、友達が入院した。


たいしたことないって言ってるけど、骨が折れるってとんでもないことだと思う。

体の自由が効かなくなるってどういう感覚なんだろう。

最初から動けないとかじゃなくて、今まで自由だったものが突然できなくなっちゃうって

考えるとすごく怖い。それが自分のせいじゃなくて、事故とか、他人が干渉して

そうなってしまったのなら尚更だ...

来年には退院して普通に生活できるみたい。

また遊ぼうと約束した。




冬、僕は好きな子に告白をした。


入学してから友達になり、今でもその付き合いが続いていた子。

それで嫌われたらどうしようとか、たくさん迷ったけど僕は言った。

好きだ、って。

彼女にしたいとか、付き合いたいとかもあったんだろうけど

思いを伝えるのが先で、それでいっぱいいっぱいだった。

その子は笑ってありがとうって言ってくれた。

でも、答えは返ってこなかった。

来年の卒業の時にって返事は保留になった、それでも嬉しかった。

まだ僕たちは子供だし、焦ることじゃないってわかっていた。

返事を楽しみにすることにした。



年が明けてすぐ、お父さんが転勤することになった。

家族揃って、遠くの町に引っ越すことが決まった。

準備が慌ただしく行われて、僕はそれをぼーっと眺めていた...

約束は、ひとつも守れなかった。





あれから10年、僕は成人して大人になった。

あの時のことは仕方なかったことだと思うし、記憶ももうほとんどが曖昧なものだ。

告白の返事も聞かずに引っ越しちゃったのはまずかったかな...

でも今思うと、あの子のことが本当に好きだったのかは定かじゃない。

もう顔も覚えてないし、写真もひとつも残ってはいないしね。

向こうの友達とも連絡を取ることがなくなった、小学校の友達って離れちゃえばそういうものだろう。

あのお姉さんからもらったラケットは、今でもたまに使っている。

ラケットを見ていると、会えなかったことを後悔するけど、こうして思い出と一緒に

形となって残っているものがある。それだけでもすごく嬉しく思う。


僕はそれだけでよかった。

初投稿ですが、指摘や不備のある部分等、容赦なく報告してくださると嬉しいです。自分も書きたいことを好きに書いていく所存です。

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