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心頼り  作者: 凛
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4月某日




あの日のことについて話すには、彼女に出会った時のことがら話さないといけませんね。

ふふ…長くなりますよ、覚悟は良いですか?



本当に単純な出会いでした。

ざっと簡単に説明しますね。

私たちの委員会のは、クラスで選抜された各々がパソコン室へ集まるのですが、丁度その時 旭さんの座ったパソコンが壊れていたようでした。

丁度私はその時パソコンを2つ挟んだ、旭さんとは反対側の左の椅子に座っていました。

その間なんとなく横目で旭さんを見ていました。


仕方なく一つ左側へ、つまり私の寄りに移動したのです。が、そのパソコンもまた壊れていたのです。

旭さんは不運が重なり怒るどころかむしろ笑っていたように見えました。


そのとき私はぼんやりと、次はわたしの隣の椅子に来るのだと気づきました。

ですが当時高校に入ったばかりの私からすると旭さんは年上で高嶺の花、なんだか同じ空気を吸うのさえ躊躇ってしまいそうでした。

更に旭さんは狐顔で、(顔で人の性格を判断してしまうのは私の悪い癖ですが)きっと旭さんは意地悪な性格なのだろうと、勝手に判断していたのです。

ですからどうせ何も断らずに無愛想に隣に座るのだろう、などと予想していたのです。(今考えるととても大きな偏見だと思います。)

ですが予想と反して旭さんは躊躇いもせずに私の隣に座り、声をかけてきたのです。


「隣、座らせてもらうね。」

その声が、予想していたうるさい女子特有の甲高い声などではなく、やや低めの声だったせいか私は思わず顔を上げてしまったのです。

「あ、はい、どうぞ」

すると旭さんと目が合いました。


初めて近くで見た旭さんの顔は、遠くで見るより、噂で聞くよりもずっと綺麗でした。

きめ細かい肌、切れ長の目、整った口、凛とした表情に長い黒髪。

私は恥ずかしくなって咄嗟に目を背けましたが、旭さんは笑っていたようでした。

「同じ委員会なんだし、困ったときは何でも言ってね。私、3年G組の田中旭です。」

唐突に、彼女がそんなことを言いました。

彼女は私が思っていたよりもずっと友好的でした。ですが、可愛い女の子は大抵性格が悪い、というのが私の考えでしたのでこのときはまだ警戒していましたが。

私は緊張してしどろもどろの言葉を何とか引っ張りだしました。

「あ、えっと、えっと、1年の、依利、です。」

「依利ちゃん!?可愛い名前だね〜」


キャピキャピしたような話し方をしていても、やはり声は低めでした。ですが当時、私は彼女に対して僅かばかりの嫌悪感を抱いていました。


この手のタイプは苦手でした。

話しかけられたなら返事はするけれど、自分から話しかけることは絶対にないタイプです。

暫くして先生が入室して委員会が始まり、先生の長い話も始まりました。

「あ」

すると突然、となりに座っていた旭さんがパソコンに隠れるようにして私の筆箱を見ているのです。

「もしかしてこのストラップ…」

旭さんが見ていたのは私の筆箱についていたアニメのストラップでした。

「えっ、これ知ってるんですか」

「知ってるよ、今流行ってるもんね~。このキャラ好きなんだ〜?」

旭さんが見ていたのは当時流行っていたアニメのストラップで、旭さんがそういったものに興味を持つこと自体が意外でした。(そんなことよりも人の持ち物をよく見る、という女子特有の癖が気に入りませんでした。)

「ねぇ、あたしこのキャラのポスター同じの2つあるんだけどさ、欲しいかな?」

「えっ、良いんですか?」

「うん。欲しいならあげるよ。もしよかったら明日渡すね。何組だっけ?」

「…あ、すいません。A組です。」

「そっか。ありがと。明日昼休み教室に居てくれると嬉しいな。」


今思うと、旭さんの使うはずだったパソコンが二つ、壊れていたことは偶然だとは思いがたいのです。

今思うとあれは運命だったのかな、なんておこがましいかもしれませんが。

そう思うほどに、不思議な出会い方でした。



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