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炎シリーズ

凱旋する炎  FLAME ALC DE

作者: 血桜大先輩

「やれやれ、俺がまた復活するとはな」


そう言いながら佇む、赤髪で半袖のパーカー、短いジーンズといった風貌の少年・・・・茜崎あかねざき火音ひおんは、高層ビルの上から夜景を見下ろしていた。その瞳には、燃えたぎる炎と、弾ける雷があった


「さて、行くか」


火音は炎の翼を背中から生やすと、夜の街へと飛び立った。


~路地裏~


「おい、金出せよテメエ」


「き、君達!?当たり前の事すらわからないのか!?」


一人の中年男性が何人もの少年に囲まれ、壁に背を向けていた。少年達はその男性を下卑た視線で見ながら、ニタニタと笑っていた。そのうち一人のリーダー格と思われる少年が、手のひらを男性に向けた


「いや、能力者以外は殺していいって言われてるんで。不幸だと思ってください。では」


リーダー格の少年の手のひらに真っ黒な塊が集まっていく。それを中年男性は怯えた目で見つめている


「んじゃ、来世では幸せに」


「ひいいいいいいいい!!!」


中年男性が頭を抱えてうずくまると同時にリーダー格の手のひらから弾丸が発射される…はずだった。リーダー格の手首が誰かに掴まれて上を向いていた。


「テメエ!?」


「お前ら今時オヤジ狩り?流行らないぞ」


火音がその腕を掴んでいた


「そこのイケてるリーマンさんは速く行きな。こいつらには俺がたっぷり灸を据えてやるからさ」


中年男性は一目散に逃げていくと、少年達が火音を取り囲んだ。皆一様に目をぎらつかせ、殺意をむき出しにしている。リーダー格が火音に詰め寄ると、笑いながら言う


「正義の味方気取りも今時流行らないと思うけどな。まあいい。アンタにゃ今すぐ死んでもらわなきゃならん。分かるか?アンタは俺達の崇高な目的を阻害したんだ。だから殺す。合ってるよな」


「ああ、確かにな。でも、一つだけ訂正をいいか」


リーダー格の少年は「アアン?」と言いながら火音を見ると、火音は威嚇とばかりに背中から炎を吹き出した


「レベルサードはそれなりに強いぜ?」


「やっちまえ!!!!!」


少年達が一斉に火音に向かって雷、氷、風、闇を飛ばす。火音はそれを炎の翼を羽ばたかせる行為だけで吹き飛ばし、無力化する。少年達は戦意を喪失したのか、後ろに下がっていく。リーダー格だけが唯一、怯まずにいるが


「これで分かった?お前ら弱い、俺強い。いいか?」


「ふざけるのも大概にしろぉ!!!!」


リーダー格が闇を火音に向けて放つ。それを火音は一層、炎を燃え上がらせて吹き飛ばす


「無駄だっての」


火音は闇の弾丸を消しながら少年達に近づいていき、炎の翼の面積を広げていく。少年達はリーダー格を残して一目散に逃げていく。残されてしまったリーダー格の少年は尻餅をつくと、後ろへと下がっていく


「頼りのお仲間は逃げていっちまったみたいだが、アンタはどうする、今すぐにいなくなれば命の保証くらいはしてやれるけどな」


「う、うわあああああああ!!!!」


リーダー格の少年は叫び声をあげながら逃げていく。火音はそれを見ながらため息を吐いた


「なんだろうねぇ…」


火音はそう言いながら夜の町へと消えていった


~一週間後~


『現在、急増する能力者犯罪ですが―』


「俺はそこまで馬鹿じゃねーよ」


火音はビルについている大型テレビに向かって悪態を吐くと、自分の仕事場兼自宅でもある事務所へと行く。そこは繁華街のビル二階にあり、誰にも見つからなさそうな場所に扉があった


「よー」


「おかえり…」


このクールな少女、金髪で、薄手のジャケットにプリーツスカートの少女は、秋雨あきさめ在処ありかという。在処の能力はレーザーをぶっぱなす能力である


「乱太はどうした」


「…仕事」


「そうか」


火音はそう言いつつリモコンを手に取ると、備え付けてある液晶テレビの電源を入れた。チャンネルはニュースになっている


「最近おおいなー、能力者の犯罪」


「しょうがない、力があれば使いたくなるもの」


「物騒だな」


火音はチャンネルを変え続けると、あるチャンネルで止めた。在処はそれを「?」という顔で見ていた。そのチャンネルは能力者の犯罪について解説をしていた


『彼らはその多くが少年や青年、少女なのです。持った力を振りかざしたいだけなのでしょうな』


「へえ」


「特に意味なかったな」


在処と火音は1人はソファ、もう1人はベッドに転がっているという完全だらけモードに入っていた。そのすぐあとにテレビから警報の様なものが流れた


『地震です、一時避難をお願-』


その瞬間、コメンテーターが串刺しになっていた。出演者達は大パニックと化していた。すぐに報道規制でも敷かれたのだろう、ボートの写真がテレビの画面に写った


「嫌なもの見たわ」


「能力者か?」


在処はつぶやく。テーブルの下にいた火音はテレビの画面を見つめながら、深く息を吐いた。



~次の日~


「電話」


「遠いから在処が出てくれ」


火音は雑誌(見出しは昨日の怪事件)を頭に被せながら言った。在処は面倒くさそうに受話器を取るとしぶしぶという感じで電話に出た


「もしもし、こちら…」


火音と在処、今はいないもう一人たちの職業はトラブルシューターである。分かりやすく言えばトラブルを解決する専門の職業だ。それなりに口コミで話題や噂話になっている


『依頼をお願いしたいのですが…』


「内容は」


『実は私、テレビ局の社長をしておりまして…』


そのあとの話を要約すると、その社長のテレビ局のコメンテーターが昨日、生放送中に串刺しになって死亡した。誰が、なぜ、その様なことをしたのか探ってくれ。ということだった。火音と在処はもう一人がいないがこの依頼を受けた


「やっと仕事ね、能力者かしら?」


「ああ。十中八九能力者の仕業だろうしな」


事務所…というより自宅から出ると、その目的地へと向かった


~テレビ局 p.m.1:30~


「大きいわね」


「だが、誰もいないみたいだな。昨日の今日だし仕方はないと思うがな」


火音と在処は中へ入っていくと、割賦の良い男性に迎えられた。しかし、顔は憔悴しきっており、見るからに切羽詰まっている


「どうも、社長の相澤です」


「秋雨在処です」


「茜崎火音だ」


火音と在処は事件が起こったスタジオへ、相澤の案内で向かった。


「一つを除けばよくみる風景だな」


無論、夥しい血の跡と長い槍の様なものだ。火音が近づいてその槍状の物を見ると所々にヒビが入っていた。それをスマホで撮っておいた


「この棒、壊れそうなんだがな」


「やってみれば?」


在処が言うと、火音はそれを片手でへし折った。その棒は一見、硬そうであったが、なぜか火音はそれを片手で折ることができた


「これ、紙ね。でなけりゃ片手でへし折れなぃ」


「ああ。大体能力の性質は分かった。後は見つけるだけだ。こういう系統の能力者は結構多いから骨がおれそうだな。あいつにでも頼むか」


火音はそう言うと、スタジオを出ていった。在処は相澤の肩を叩くと、そのあとをついていった


~境界線~


きらびやかな街と正反対に、廃墟となっている世界、ここがその境界線である。平和に暮らしたい能力者と無能力者が共存して生活する街と、能力者が我が物顔で歩く世界の境界線である。そこに火音と在処が求める人物がいた


「おーい、レイ」


「なんだい?大体事情は分かっているけどね。串刺しの件についてだろう?」


今、火音と在処の目の前にいる飄々とした風貌の青年は『レイ・アルカディア』という。相手の情報を視ることができる。その能力を使って生計を建てている。


「その通り、さあはやく」


「急かさないでよ。ネタは掴んでいるんだからさ」


一呼吸おいて、レイが話始める


「今回の事件は過激派の末端の仕業さ。彼らの大元は某少女だけど、その中には君と同じ系統、同じ能力者もいるんだよ?」


「いいから今回の事だけを話せ」


「まあいいや。今回の事件は君も感づいているとおり、物体変換系統の能力者さ。紙を槍にしたんだろうね。鉄の方がバレないと思うけど、存在を誇示したかったんじゃないかい?彼の名前は木崎きざき荒野こうや


レイはポケットの中から一枚のメモを取り出した


「ここ場所に彼はいるはずだよ。どうするかは君たち次第だよ」


「ありがとう」


「すまないな」


火音と在処はそう言いながら去っていく。レイはそれを見ながら、一人、薄く笑う


「火音君はやっぱりトラブルを自分から引き込むね。だからこそ、トラブルシューターなんてものをやっているんだけどね」


~次の日~


「ここか」


「火音」


「なんだよ、在処」


「いや、なんでもないわ」


火音はやれやれ、と首を振りながら問題の廃ビルへと入っていく。在処はそれを見ながら少し笑い、火音の後を追いかける


「それにしても、まだ開発されていない場所があったとはねー」


「そろそろだ…ッ!?」


火音は仰け反りながら飛んできた何かをキャッチする。それはプラスチックで出来た矢であった


「感づかれている!」


在処が手のひらからレーザーを出して、右にあった壁を溶かす。そこには部屋があり、中には茶髪の少年が佇んでいた。傍らには紙で出来た日本刀、ハンマーなどがあった


「あんたが今回の串刺し事件の黒幕の木崎荒野か。トラブルシューターの茜崎火音だ。つーわけでしょっぴかせてもらうぜ」


「テメエ達にそんなことができると思うなよ!お前ら!!」


「ウッス!」


木崎がビルから脱出すると同時にモブ達が入ってくると、火音と在処の周りを取り囲む。在処は火音に『先に行け』とジェスチャーをすると、火音は頷いて、炎の翼を生やすと、ビルの窓から木崎を追いかけていく。在処は溜め息を吐きながら、レーザーブレードを作り出す


「うっへっへ・・・・」


「これだから変態は嫌いなのよ」


モプ達が飛びかかると同時に、在処はレーザーブレードをモプ達の急所に打ち込んでいく。それだけで全員うずくまり、皆一様に大事なところを押さえている。


「goodbye」


在処は悠々とビルから抜け出していった


~火音サイド~


「待ちやがれ!!」


「どこの世界に待つバカがいる!」


火音が炎の翼で追いかけ、木崎はそれから布で造られたホバークラフトで逃げる。そのチェイスを2分ほど続けると、木崎が高層ビルの天辺にたつ


「さあてと、そろそろあれをやるか」


「なんだか知らないがやらせる気はねえ!」


火音が炎のナイフを作って飛ばすが、木崎はそれを紙テープの手裏剣で弾く。と、同時に木崎が懐からダイナマイトを取り出すと、思い切りそれを火音投げつけた


「くらえ!」


そのダイナマイトが火音へ迫る。爆発すればひとたまりもない、が火音は動じずに静止した。そして、ダイナマイトが爆発する瞬間に、雷でダイナマイトを空高く打ち上げた。その次の瞬間には爆発していた


「お前は炎の能力者のはずだ!?なのに、何故雷の能力が使えるんだ!?」


「俺は炎の能力と雷の能力が使えるのさ」


木崎は蛮勇を振り絞ると、槍と刀で火音へ飛びかかるが、火音はそれをいなすと、木崎の腹に強烈な蹴りを打ち込んだ


「バカな…」


「さて、さっさとしょっぴかせてもらうぜ!!」


木崎が逃げ出すと、火音は木崎に火の玉を投げつけて気絶させた


「終わった?」


「終ったぞ」


在処も追い付いたらしく、木崎を縛り上げて警察まで連行した。火音と在処は相澤から報酬をもらってウッハウハだった


~牢屋~


「木崎ちゃん失敗したッスか?装置も無効化して、往生際悪いッスねえ」


牢屋の中、一人の少年の声が反響する。その言葉に対して等獄中の木崎は憎々しげに声を出す


「次は、次は必ず!!」


牢屋で木崎がそう叫ぶと、少年は芝居がかった動作で首を振ると、手をかざす


「生憎だけど、処理するように××さんに言われているッスよ。すまないッス」


木崎は驚いたような顔をしていたが、すぐに鉄格子を槍にして外して少年に投げようとする。しかし、少年はそれを避けると、銃口を木崎に向けて発砲する。


「それにしてもッス、なんであの装置が発動しなかったと思えば能力で無効にしてたッスか・・・・・」


少年の目線の先には、死体になった木崎がいた


木崎荒野 再起不能


~木崎確保の一週間後~


「木崎は牢屋で銃殺、か」


「この街に何かがおき始めてる…?」


そう在処は呟くと、ハッと思ったように手をポンとたたく


「あいつは?」


「確か今、猫探しの依頼を請け負ってるはずだ」


他愛のない会話をしながら、この街で暮らし、トラブルを解決する二人(実際は3人だけど)の日常は今日もこうしてすぎていく

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― 新着の感想 ―
[良い点] 火音くんの活躍が再び見れて、嬉しいです。 [気になる点] 誤字脱字が少し。気にしなくても良いレベルかな? [一言] ~過激派・本部~ 紫を基調とした服装に身を包み、同じ色の髪と緑色の左目…
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