1.眠りによせて
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L'Arc-en-Ciel編参加中
1.眠りによせて
満州。
「点呼!」
「1!」
「2!」
「3!」
・
・
・
今日も銃声と、軍靴の音が鳴り響く。
・・・・・・・・・・・・
「飯だ~!」
「今日も疲れたよな」
「だな」
周囲のざわめきのなか、僕は一言も発さずに夕飯を食べる。
そして胸のペンダントをぎゅっと握る。
これは戦争へ行く僕に君がくれたペンダント。
いつ、何時でも手放すことは…
「おいっ。お前!何を持っている?おいっ!」
あっ…
「おいっ!それはペンダント…?軟弱者が!ここは戦場だぞ?そんなチャラチャラしたものをつけてるんじゃない!おい、貸せ!」
渡さない。渡せない。これだけは…!
「反抗するのか?ふざけるな!」
隊長の足が僕に振り下ろされる。
続いて拳が顔面へとのめりこんだ。
「あぁ。可哀相に」
「なんであんなものを…」
「馬鹿だなぁ…」
これだけは。わたさない。
これだけは。わたさない。
これだけは。わたさない。
これだけは。…わたせない。
「ペッ。この腑抜けが!軟弱者が!」
これでもかというくらい、力を込めて殴られた。
「うっ」
足音が去っていく。
蹴られた所が痛い。
でも…ペンダントは守り通した。
痛む身体を引きずって、宿舎へ戻る。
部屋へ戻ると、もうすでに班の奴らは寝ていた。
でも僕の分の布団がちゃんとひかれている。
顔を洗いに、部屋の隅の洗面台へとむかう。
冷たい水が傷にしみる。
顔を上げた僕の目に飛び込んできたのは…腫れ上がった自分の顔だった。
「ひどいな…」
思わずそんな言葉が口からついてでた。
布団に入る。
握っていた手を開く。
鎖は切れたものの、ペンダントヘッドは残っていた。
そしてもう一度握り直す。
ここでどんなにつらい仕打ちや訓練を強いられようと、それが君の生活を守るのならば僕は甘んじてそれを受けよう。
この君がくれたペンダントを失わない限り、僕は戦おう。
それが君の平和な眠りを守るのならば。
それほどに…僕は君を好きだから。