拝啓、晴れの日のあなたへ
拝啓、晴れの日のあなたへ
眩しい光が燦々と私たちを照らし、目を細めて空を見上げる日々が続いています。
私の赤い傘はいつでも外に飛び出す準備ができているのに、すっかりとその体を水で濡らすこともなくなり残念に思っていることでしょう。
私が晴れの日もあの場所に足を運ぶと決めてから早いものでひと月が経ちました。
初めて傘を持たずにあの場所に向かったことを今でも鮮明に思い出します。
はやる心の音を静めようと胸を押さえ、震える足を少しずつあそこへと向かわせました。
一歩、また一歩近づく度に、まだ引き返せると弱い自分の心を奥底に潜めるのに必死でした。
あなたがあそこにいたらいいのに。
雨の日のあなたは晴れの日の今日はあそこにいなかったらいいのに。
いてほしい、
いないでほしい。
真裏な思いが複雑に絡み合いながら、いつもより小さな歩幅の自分の足下だけを見つめながらあなたと初めて会ったあの場所へとたどり着きました。
分かっているのです。
あなたが雨や晴れなど関係なく外に出ることなど。
私が勝手にあなたを雨の日のお方と決めつけていたのです。
だからあなたがあの日あそこにいたのは何ら不思議ではないのに、あなたを目に入れた私が大層驚いたことを知ったらあなたは私を可笑しいとお笑いになりますか。
あなたを視界に入れるだけでこんなにも勇気のいる私が、あなたとお話をすることを望むのはおかしいでしょうか。
ああ、どうか、どうかあなたに話しかける勇気を私にお与え下さいませんか。