拝啓、雨の日の君へ
拝啓、雨の日の君へ
あなたをお見かけするようになってもう何度目でしょうか。
今でも私は変わらずあなたを見かけると胸がはちきれそうに苦しくなります。たった数秒のこの時の間、苦しくも切ない、そんな気持ちが私の胸を締め付けるのです。
あなたが赤い傘をさして私の前を通り過ぎたあの日からあなたを思い出すたびに、私はこのどうにもならないもどかしさに身をよじらせるのです。
あなたを見かけるのは決まって雨の日で、あなたは必ず赤い傘を持っていますね。
そして私はあの日と同じ青い傘を持ってあなたをお待ちするのです。
雨の日の独特の寒さがあなたを病に伏せさせてはいないだろうか、と心に痛みます。
連日の雨に、皆が眉間に皺を寄せています。
しかし私にとって雨はあなたをお見かけするたった一つの綱なのです。
皆には悪いのですが私はこの雨にとても感謝しておりました。
しかし、ここしばらくはその雨もぱたりと姿を見せることもなく、眩しく明るいお天道様が私たちを照らしてくれていますね。
雨に濡れた葉や花たちはきらきらと輝き素晴らしい景色を広げています。
ああ、しかし私は非道くも早く雨がやっては来ないかと、そんなことばかり考えているのです。
今あなたは何をしているのでしょうか。
あなたは私が青い傘を手に握りしめあなたを見つめるためにあの場所に立っていることを知っているのでしょうか。こんな私をどうお思いでしょうか。
ああ、一言あなたの声が聴きたいのです。




