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拝啓、名も知らぬあなたへ
拝啓、名も知らぬあなたへ
あなたは覚えておりますでしょうか。
私とあなたが出会った日のことを。
あの日は、朝から雨が降っており、私は部屋の中から、雨が窓をつたる様子を眺めていました。
静かに静かに流れ落ちる様子はなぜか見もしぬあなたを思い出させ、私は無性に外に出たくなり、傘を右手に飛び出したのです。
しばらく歩き、雨に濡れた深緑の葉を見つめ、お気に入りの赤い傘に雫が落ちる音にただ耳を澄ましておりました。
そんな折、ふと顔を上げれば、同じように青い傘を片手に空を見つめるあなたが、そこに立っていたのです。
私の顔が赤いのは、私のもつこの赤い傘のせいなのでしょうか。
それとも・・・・・。
知るのはあの日の空のみでしょう。