詩 彼にヘッドホンを貸す
私がヘッドホンをしていると、彼がやって来て、前の席に陣取り、聞いてくる。
「何を聞いているんだ?」
「え? ああ、これ」
ヘッドホンを渡すと、最近、学生の間で流行っているバンドの音楽が、微かに聞こえてくる。
彼も知っているようで、口ずさんできたので、私はくすくすと笑う。
「何だよ? 何かおかしいか?」
「だって、あなたってあまり喜怒哀楽を出さないじゃない? だからノリノリなのが嬉しくて」
私は子どもみたいに、ぺろりと舌を出す。
悪意はないのだが、いたずらしたような気分だった。
「俺だって、楽しい時は楽しいんだよ」
「わ」
急にヘッドホンを耳にかけられ、私は驚いたが、すぐにリズムをとる。
まるで一緒に演奏しているかのようであり、首や指を動かす。
彼から見たら変かもしれないが、何も言わなかった。
「俺の声、聞こえるか?」
「聞こえるよ。そんなに音量を大きくしていないもの」
「そうか」
「好きな人の言葉くらい、ちゃんと拾うわよ」
あ、しまったと思ったが、遅かった。
恥ずかしそうに頬を染めると、彼も頬を染め、机に肘をついてくる。
リラックスした王者のような姿。
まるで2人で演奏会を楽しんでいるような、そんな雰囲気。
一緒にいるのは、彼じゃなくては嫌だった。
「楽しいな」
「うん!!」
私が素直に答えると、彼も嬉しそうに微笑んでくる。
何で私のことを好きになってくれたんだろう?
不思議でしょうがない。
彼を狙っていた女子はかなりいるのに。
聞いてみたくなったが、怖いのでやめておく。
今の関係がベストだった。
彼がヘッドホンの片耳を外し、急に言ってくる。
「好きだからな」
「え…。もう、皆いるのに」
文句を言いつつも、以心伝心したのか、嬉しくなってくる。
かっこいい彼は、私のものだ。
誰にも渡さないからね。




