第4話 毒盛り作戦
リーナの薬草を調べることにした。
毎朝持ってくる薬草の中に、毒性のあるものが混じっていないか。あれば使える。千年以上、毒草の知識だけは誰にも負けない自信があった。昨日も同じことを考えた気がするが、今日こそはと思った。
棚に並んだ薬草を1つずつ確認した。
鎮静。鎮静。解熱。鎮静。傷薬。解熱。解熱。鎮静。
全部、治すか落ち着かせるかのどちらかだった。
リーナが薬師だった。当たり前のことだった。
「詳しいのね」
振り返るとリーナが立っていた。いつ来たのかわからなかった。
「……知識があるだけだ」
「どこで覚えたの?」
「遠いところで」
リーナが棚に荷物を置きながら言った。
「じゃあ手伝って。今日、調合が多くて」
「……なぜ私が」
「詳しいんでしょ」
返せなかった。
調合は、思ったより面白かった。
いや、面白くはない。作業だ。ただ、リーナの手順が理にかなっていて、どこを改善すれば効き目が上がるかが見えた。私は黙って手を動かしながら、配合の比率を少し変えた。
リーナが気づいた。
「今、変えたわよね」
「最適化した」
「……どういう意味で?」
「このままでは効き目が薄い。苦味成分をもう少し——」
「ちょっと待って。教えて」
気づいたら説明していた。リーナが真剣な顔でメモを取っていた。
そこにゴルダが来た。
窓から顔を出した。私とリーナが並んで薬を調合しているのを見た。目が潤んだ。
「魔王様……! 薬師に……!」
「知らない子供だ」
「でも魔王様、その調合の仕方は——」
「知らない子供が薬を作っている」
「…………」
リーナがゴルダを見た。ゴルダを見て、私を見た。
「知り合い?」
「知らない人間だ」
ゴルダが窓枠に額を押しつけて嗚咽した。リーナが「大丈夫?」と窓の外のゴルダに声をかけた。ゴルダが「なんでもないです……!」と言った。全然なんでもなさそうだった。
私は調合を続けた。
できあがった薬をリーナが確認した。
少し嗅いで、色を見て、首を傾けた。もう一度嗅いだ。
「……ちょっと待って」
「何だ」
「これ、効き目が倍くらいある」
「最適化した結果だ」
「倍って……天才じゃない」
「……当然だ」
言ってから、気づいた。
リーナがこちらを見ていた。にやっとしていた。
「今のは忘れろ」
「覚えたわ」
「忘れろと言っている」
「覚えた」
リーナが調合した薬を棚に並べながら、独り言のように言った。
「また来週も手伝って」
「……来ない」
「来るでしょ」
(所要時間、半日。成果、ゼロ。ただしリーナに弱みを握られた)
来週も来ることになりそうだった。




