表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家賃3ヶ月分滞納してたら何故だか私が管理人に  作者: うみのうさぎ
光に集いし者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/13

勘違い地獄

遥は、廊下の角で足を止めた。


 ——聞こえてしまった。


茜「麻衣さん、本当に優しくて……」


 声の主は、102号室の茜。


 相手は——


リナ「わかる〜」


 203号室のリナ。


 その距離感と声のトーンで、

 遥は嫌な予感しかしなかった。


……あ


 壁越しに聞こえる会話。


茜「この前も、ポスト直してくれて……」


リナ「それさ、完全に脈アリじゃん」


茜「えっ!?

  そ、そんな……」


 茜の声が上ずる。


遥(違う)


 ——それは管理人の仕事。


 でも、言えない。


 遥は、その場を動けなくなった。


 ———


 その日の夕方。

 共用スペース。


 麻衣が脚立に乗って、

 非常灯の点検をしている。


麻衣「……っと」


 その下で。


あずさ「……」


 ツインテールの少女が、

 ぬいぐるみを抱えて見上げていた。


あずささん


 目が、

 やけに真剣。


あずさ「……尊い」


 小声。


遥(あ、だめだ)


 そこへ、リナが合流する。


リナ「管理人さん、脚立気をつけてくださいねー」


麻衣「ありがとうございます」


 何も知らない声。


 リナは、あずさに小声で話しかける。


リナ「……やっぱ本命だよね」


あずさ「……うん」


 即答。


遥(合意取れてる……)


 その横で、茜がやってくる。


茜「麻衣さーん!」


 全員の視線が集まる。


 麻衣が振り向く。


麻衣「どうしたの?」


茜「えっと……その……」


 言葉に詰まる茜。


 ——完全に、恋の空気。


遥(違う)


 でも、誰も否定しない。


 否定する人が、

 一人もいない。


 ———


 夜。

 203号室の壁越し。


リナ「ねえ、遥」


遥「……なんですか」


リナ「茜ちゃんのこと、どう思う?」


遥(爆弾)


遥「……どう、とは」


リナ「可愛いよね」


遥「……はい」


 嘘ではない。


リナ「管理人さんも、

   絶対そう思ってる」


遥(思ってない)


 喉まで出かかった言葉を、

 遥は飲み込んだ。


 代わりに、

 胃が痛くなった。


遥(全員、勘違いしてる)


 ——麻衣は管理人の仕事を真剣にしている。

 ——茜は麻衣の善意に喜んでいるだけ。

 ——リナは善意で茜の恋の背中(誤解)を押している。

 ——あずさは茜の恋では無いと知った上で妄想を膨らませている。


 そして。


遥(私だけ、わかってる)


 それが、

 なぜか一番つらい。


 ———


 翌朝。


 共用部の掲示板に、

 麻衣の字で貼り紙があった。


『今週末、

 共用部の簡易点検を行います。

 立ち会い不要です』


 それを見て、

 茜が顔を赤くする。


茜「……立ち会い、いらないんだ」


 リナが微笑む。


リナ「遠慮してるんだよ」


 あずさが、

 ぎゅっとぬいぐるみを抱く。


あずさ「……健気」


遥(違う)


 遥は、掲示板から目を逸らした。


遥(このアパート、

   そのうち爆発する)


 けれど、

 誰かが止めなければならない。


 ——誰かが。


 そう思いながら、

 遥は自分が一番、

 動けていないことを自覚していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ