膨らむ想い
このアパート、思ってたより面白い。
それが、リナの率直な感想だった。
リナ(管理人さんいるし、
住人クセ強そうだし)
その中心にいるのが——
101号室の管理人、麻衣。
ある日の夕方。
リナは階段の踊り場で、101号室の住人を見かけた。
茜「麻衣さーん」
高校生の女の子。
清楚で、元気で、笑顔がまぶしい。
リナ(あ、この子か)
——茜。
引っ越しの挨拶のときに、名前は聞いている。
茜「この前の廊下、ありがとうございました!」
麻衣「ううん。
気づいたことあったら、また教えてね」
距離、近い。
リナ(……近くない?)
茜は少しだけ頬を赤くしている。
茜「えへへ……」
リナ(はい確定)
その瞬間、
リナの中で何かが“繋がった”。
———
その夜。
203号室に、見慣れない女の子がいた。
ツインテール。
地雷系。
抱えているぬいぐるみが妙に大きい。
リナ(誰)
あずさ「……こんにちは」
リナ「あ、どうも」
紹介はすぐだった。
茜「あ、リナさん。
この子、あずさ。私の友だち」
リナ「へー」
リナは、さりげなく視線を泳がせる。
リナ「ねえ」
茜「?」
リナ「101号室の管理人さんと、
仲いいよね?」
一瞬の間。
茜「えっ!?
な、仲……?」
茜の反応は、
リナにとっては答えだった。
リナ(照 れ た)
横で、あずさがぴくっと反応する。
あずさ「……管理人?」
低い声。
何かを察知した顔。
茜「ま、麻衣さんは……
すごく、いい人で……」
言葉がしどろもどろ。
リナ(好きじゃん)
あずさの目が、きらりと光る。
あずさ「……茜」
茜「な、なに?」
あずさ「……その人」
声が、やけに静か。
あずさ「……好き、なの?」
茜「えええっ!?」
茜は完全に固まった。
その沈黙を、
リナは肯定として受け取った。
リナ(あー、これ)
——片想い。
しかも、相手は年上。
管理人。
近所のお姉さん枠。
リナ(尊)
あずさは、唇を噛みしめている。
あずさ「……なるほど」
完全に何かを理解した顔。
———
その翌日。
リナは共用部で麻衣を見かけた。
麻衣「おはようございます」
リナ「おはようございまーす」
リナは、にやっと笑う。
リナ(この人が……)
茜の。
想い人。
チェックシートを持って手すりや柵の点検をしている
毎日欠かさず点検してる
真面目。
丁寧。
距離感もちゃんとしてる。
リナ(これは好きになるわ)
麻衣が顔を上げる。
麻衣「何かありました?」
リナ「いえいえ!」
リナは、ネイルの先を軽く振った。
リナ「……人気者ですね」
麻衣「?」
首を傾げる麻衣。
その反応が、
さらに“無自覚系”を強調する。
リナ(罪)
203号室に戻りながら、
リナは確信していた。
——麻衣は、
茜の“好きな人”。
そして。
リナ(……あずささんも、
絶対何か勘違いしてる)
誤解は、
誰にも修正されないまま、
静かに、しかし確実に、
膨らんでいく。
リナは笑った。
リナ(このアパート、
やっぱ当たり)




