運命の結果発表
「おかしいのです。ザフキエル様が帰ってこないのです」
ザトキエルはリプロの暗殺に出かけたザフキエルが帰ってこないことに一抹の不安を感じていた。
「まぁ、問題はないでしょう。こちらへ寄らずに天界へお戻りになられたのでしょう」
ザトキエルはザフキエルが負けることなど一片も考えていない。ラファンからの良い結果発表が来るのを楽しみに待っていた。しかし真実は残酷である。私に投げ飛ばされたザフキエルは大気圏を越えて宇宙へと飛んで行った。今も止まることなく宇宙の果てへ向かって飛んでいた。翌々日、ラファンからの悪い結果発表を聞いたザトキエルは真実を受け入れることができない。
「絶対にありえません。ザフキエル様が負けるなどありえないのです。もしかして、私に嘘をついて【原初の5大魔石】を渡すのを渋っているのではないでしょうか」
「心外です。私はそんなせこい男ではありません」
「本当に……、本当に帰って来たのでしょうか」
「本当です」
「そうですか……。でも瀕死の重傷で今死んでいるのかもしれませんよ」
「いえいえ、めちゃくちゃ元気でした」
「……」
まだザトキエルはザフキエルの敗北を受け入れることはできない。
「あ!」
ザトキエルは何か思いついたようだ。
「どうしたのでしょうか?」
「ラファンさん、わたしは大きな矛盾に気付いたのですよ」
ザトキエルは自信ありげな顔をする。
「何に気付いたのでしょうか」
「ラファンさんが元気にここへお越しになったということは、リプロは死んでいたということではないでしょうか。さぁラファンさん、真実を吐くとよろしいのです」
ザトキエルは名推理を披露する。もしリプロが生きて帰ってくればラファンは自由に人界へ来られない。
「たしかにあなたの言う通りかもしれませ。もし、あなたがルシス王女殿下を殺していればね」
「もしかしてキマイラは小娘に殺された……」
ザトキエルにもキマイラが殺されたと情報が入っている。しかし、私が人界へと追放された翌日だったので犯人は別の人物だと思っている。
「それは不可能でしょう。もしもルシス王女殿下の魔力が復活していれば私が見過ごすことなどありえません」
私の膨大なる魔力は復活した。しかし、魔石が黒色から金色に変わったのでラファンも気づけない。
「王女が生きている証拠はあったのでしょうか?」
「いえ、しかし死んだという証拠もないのです。そこでリプロ王子殿下は生きていると判断したのです。この判断は私にとってはとても都合の良い判断でした」
「そうですか……」
ザトキエルはうなだれる。
「あなたは2つのミッションに失敗しました。これはどういうことを意味しているのかおわかりでしょうか?」
「……」
ザトキエルは言い返す言葉が出てこない。
「私はあなたに魔界の秘宝である原初の5大魔石を2つも渡したのです」
「……」
「今すぐにでも返して欲しい……といいたいのですが、私と新たなる取引をしませんか」
「します……。いえ、させて頂きます」
ザトキエルは安堵する。
「私の処遇はたゆっているのです。リプロ王子殿下のお気持ち次第で地獄へ落とされるでしょう。そこであなたの力をお借りしたいのです」
「王女殿下を探せばよろしいのでしょうか」
「さすがですね。私はリプロ王子殿下と取引をしました。魔族は安易に人界へ来ることは許されていません。それはザトキエルさんも同じことですよね。しかし、私たちはお互いの利益のために掟を破っています。リプロ王子殿下にそのこともバレてしまいましたが内密にしていただきました」
「今後王子殿下も人界へ訪れるということでしょうか」
「さすがですね。ルシス王女殿下が見つかるまで定期的にリプロ王子殿下を人界へお連れする代わりに、私の身の安全と自由行動を保障していただきました。しかし、私たちには野望があるのです。リプロ王子殿下を出し抜く為にも先にルシス王女殿下を確保したいのです」
「喜んで力をお貸ししましょう」
ラファンとザトキエルは固い握手を交わしてお互いの親密度を高めた。
私は指名手配犯となったのです。




