誕生神ガイア
フェルは階段を上り１階へ辿り着く。
「……」
フェルの姿を見たマネッジは唖然とした。
「ウィアードーは」
マネッジが口を開いた瞬間に、マネッジの体は燃え上がり灰となる。
「やさしいね」
リプロがフェルに声を掛ける。
フェルはまだフェニックスの能力を使いこなせていないので、フェニがフェルの力を強化している状態である。今もフェルがマネッジへ炎を放り投げた瞬間にフェニが炎を強化して一瞬でマネッジを灰にした。これはフェニの独断でなくフェルの指示である。フェルは恐怖と苦痛を感じさせずにマネッジを殺してあげた。それはフェルの優しさである。
「……」
フェルは唇を噛みしめて怒りを抑えていた。本当は同胞にした同じ苦痛を与えたいという気持ちがあった。しかし、亜人は温厚で平和な種族である。フェルは再生と炎の悪魔フェニックスの能力を授かったことにより攻撃性は増してしまったが、亜人の温厚な気持ちは失っていない。
「ここを燃やすの」
フェルは静かに天国への階段を出る。そして、フェニに炎を強化してもらい天国への階段へ特大の炎を投げ付ける。大きな爆発音を上げながら燃え上がる天国への階段。そのすさまじい音に驚いた住人たちは豪華な屋敷から表に出る。一方、亜人たちは何も気にする様子もなく清掃を続ける。
「おいクソ亜人ども、火を消せ！」
住人たちは奴隷の亜人たちに消火を命じる。亜人たちはバケツに水を入れて消火活動に努めるが焼け石に水だ。
「このままではヤバいぞ。門番に連絡しろ」
亜人は走って門番へ現状を報告する。すると血相を変えたロックが姿を見せる。
「これはもうダメだな」
ロックの判断は正しいが本質は捉えていない。フェニが強化した炎は全てを焼き尽くすまで燃え続ける。この炎を消すには水氷魔法では無理だろう。ロックの指摘通りに15分後には天国への階段は全焼した。
「ライスさん、ここで何が起きたのでしょうか？」
ライスは50代の長身男性で、特権地域に住む階級の高い信者である。
「大きな爆発音が聞こえたので外へ出ると天国への階段が燃えていた。俺にも何が起きたのか全くわからない」
「そうですか……。いったい何が原因で爆発が起こったのでしょうか。ケレース様をお呼びして詳しく調べてもらいます」
大きな騒ぎとなっていたのでフェルとリプロの姿に誰も気を留めない。
「ライスさんの屋敷が燃えています」
「あぁ～私の家も燃えているわ」
住人たちが呆然と燃え上がる天国への階段を眺めている間に、フェルは次々と特権地域の豪邸を燃やしていた。
「ロック、俺の家だけでも消火しろ」
「火の勢いが尋常でありません。家は諦めて避難をした方が良いでしょう」
フェルの魔法滅びの業火は、対象物を完全に灰にするまで火は消えないのでロックの判断は正しい。
「ダメだ！俺の家だけでも消化しろ」
ライスは大声で叫ぶ。亜人たちはバケツリレーをして消火活動を続けているが全く意味はない。5分も経過しないうちにライスの家は全焼した。
「マイホームがぁ～」
ライスは地面に跪いて天を仰ぐ。
「これはどうなっているのでしょうか」
ライスが天を仰いだ先に真っ白な大きな翼を広げた人物がいた。
「ガ……ガイア様」
ガイアとは天空神５枢機卿の１人の神人である。
※誕生神ガイア 身長150㎝と小柄 少年のような幼い顔立ち 白眼白髪 浅黒い肌 合成魔獣を創造する能力を持つ。キマイラを作ったのはジュピターではなくガイアである。
「私の作品が壊されたと聞いて飛んで来たのですが、これはどういうことでしょうか？」
ガイアは急降下してライスの前に立つ。
「俺……、いえ私にもわかりません」
ライスはガイアを目の前にして緊張して体がカチコチになる。
「ガイア様、特権地域の門番を任されているロックと申します。お初にお目にかかれて光栄でございます。今回の出火の原因は現在調査中のため、原因がわかり次第早急にご報告したいと思います」
ロックはガイアに気に入られようと仕事を頑張っているアピールをする。
「あなたたちのくだらない話など、どうでもいいのです。パースリはゼーウス法王様より賜りし大事な拠点です。あなたたちは身を挺して火災を止めなさい」
「そ……そんな無茶を言わないでください」
「万物合成」
ガイアは魔法名を詠唱する。万物合成は簡易的に合成魔獣を造る魔法であり、魔石を埋め込むことで魔法も使えるようになる。
「やめてください」
「嫌だぁ～～」
ロックとライスの間に光の渦が発生した。渦はどんどん大きくなり、ロックとライスを飲み込んだ。
「この青の魔石の力を授けてましょう」
ガイアは渦の中に青色の魔石を投げ込んだ。すると光の渦は青く光り輝いて1人の合成魔獣を吐き出した。
なにやら大変なことになっているのです！
