我慢の限界
「ウィアードー、今日も来たのか」
天国への階段へ入ると白の祭服を着た中年の男性がウィアードーに声をかける。
「マネッジ、今日は将来有望な子供を連れて来ましたよ」
ウィアードーは嬉しそうにリプロを紹介した。
「ほほう、その年で亜人に興味を示すとは良い傾向だな。ウィアードー、頼むからお前の悪趣味には染まらせないでくれよ」
「ご忠告ありがとうございます。しかし、私は劣等種族である亜人に愛を与えているだけなんですよ」
ウィアードーはニタニタと笑う。
「あの行為が愛とは片腹が痛いわ。今日は子供をつれているのだから自重しろよ」
「……」
ウィアードーは沈黙で返事をする。
「ほら、これが地下へ降りるカギだ」
「ありがとうございます」
ウィアードーはカギを受け取る。
「亜人さんたちが全然いないね」
リプロは天国への階段へ入ると鉄の檻を見て私の姿を探すけれども全ての檻は空であった。
「リプロ君、この施設の1階はクソ亜人の居住区になっているのですよ。だから全ての亜人は今私たちへの奉仕活動をしているので檻の中は空になっているのです。そして、今から私たちが向かうのは地下1階の更生施設です。パースリへ運ばれてきたクソ亜人どもは更生施設にて私たちへ奉仕できるためのマナーを覚えさせるのです。でも多くのクソ亜人どもは、マナーを覚えることができずに殺処分されるのです。本当にクソ亜人は自分たちの立場を理解していないので困ったものです」
「……」
リプロは返答をしない。
「さぁ、カギを預かりましたので地下へ向かいましょう」
ウィアードーは天国への階段の1階の少し奥にある楕円形の扉へカギを差し込んで扉を開く。すると異臭が鼻を突く。
「本当にクソ亜人は汚らしいですね」
「……」
リプロは返答しない。
地下1階へ通じる階段は下へ降るほど真っ赤に染まっている。階段の壁には赤い手のひらの形の模様が幾つも重なって不気味な壁紙となっている。おそらく、これは亜人が逃げ出そうと階段を駆け上がった時にできた模様だと思われる。リプロは血に染まる階段を見てとても不愉快になる。
「ハハハハハハハ、緊張してきたのかな?」
「……うん」
ウィアードーはリプロの口数が少なくなったことを緊張していると捉える。
「血と糞尿が混在した異臭と血まみれの壁、子供の君には少し刺激が強すぎたみたいだね。でもね、この異臭も血まみれの壁もクソ亜人の懺悔の証、私たち天空神教に仕える信徒は、この懺悔の証を神聖なるオブジェとして歓迎しないといけないのです」
「……」
「リプロ君、先へ進みましょう。そうすればもっと素晴らしい光景が待っていますよ」
ウィアードーはスキップをしながら軽快に階段を降りて行く。下へ降りるにつれて異臭は酷くなり足が滑りそうなほど階段が血で染まっていた。
「リプロ君、楽園へようこそ」
階段を降りるとそこは大きな円形の広間があり、様々な拷問器具が乱雑に置かれていた。そして、広間のあちらこちらに四肢の無い亜人が無数に転がっていた。
「た……助けて」
「こ……こ……殺して」
亜人たちはまだ息がある。しかし、いつ死んでもおかしくない状況だ。
「ハハハハハハハ、ハハハハハハハ」
ウィアードーはリプロを置いて駆け出した。そして、スキップをしながら亜人たちを踏みつける。
「リプロ君、一緒に踊らないかい?とても楽しいよ」
「僕は良いのです。それよりも最近入った亜人の女の子を見たいです」
リプロはこの場にはあまり長居をしたくない。早く目的を達成してこの場所から離れたい。
「そうだったね。あのクソ亜人はとても反抗的だったので、手足を斬り落としてゴミとして広間に捨てようと思ったのですが、私の好みのタイプでしたので更生のチャンスを与えてあげました。ここには各個人の専用の躾部屋がありますので、私の躾部屋へ案内してあげましょう」
地下にゴミのように転がっている手足のない亜人たちは、反抗的な態度をとったので制裁として手足を切断されていた。手足を斬り落とされた亜人は使い物にならないので死を待つだけである。そして、地下には各個人の専用の部屋があり、その部屋に各々が気に入った亜人を収容して躾をおこなっている。ウィアードーは自分専用の部屋にリプロが探している亜人を閉じ込めていた。
「さぁ、どうぞ。ここが私専用の躾部屋ですよ」
地下1階は円形の広間になっている。その周りを囲むようにいくつもの扉があり、その扉には使用者の名前が刻まれていた。ウィアードーが扉を開くと10畳ほどの部屋があった。リプロはその部屋の扉が開いたと同時にウィアードーを消し炭にした。
リプロは部屋の中を見た瞬間に我慢のリミッターが外れたのです。




