神聖武装
「アハハハハハ、アハハハハハ。俺様がお前を許す理由などない。自分で死ねないのなら俺が殺してやろうか」
ザフキエルはニタニタと笑みを浮かべる。
「ビエ~ン、ビエ~ン。私は死にたくないのです。ごめんなさいなのです」
私は3度目の仏の行為をする。
「アハハハハハ、アハハハハハ。亜人のガキ!泣いて謝っても時は戻らないのだ。お前の情けない姿を見ていると100年前に俺様がいじめてやった魔王シュプリームを思い出すぜ。あいつも俺様に涙を流して許してくださいと懇願していたぞ。アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ」
私の仏の顔が冷徹な顔に変わった。
『ドカ――――ン』
私の怒りの一撃を受けたザフキエルは空中から一瞬で地面に突き刺さる。
「お前は崇高なるお父様をバカにしたのです」
ザフキエルの上半身は地面に埋もれて足だけが見えていた。私は地上に降り立ちザフキエルの足を掴んで地面から引っこ抜いて投げ捨てた。
「……」
私は無言でザフキエルを睨みつける。
「貴様は何者なのだ。俺様が神聖魔法を使っていなかったら死んでいたぞ」
上空2000mほどの高さから時速300㎞のスピードで落下すれば、全ての生物は体が砕けて死んでしまうだろう。しかし、神聖魔法を発動していたザフキエルはたいしたダメージを負ってはいなかった。もちろん私はザフキエルが神聖魔法を発動していたことには気づいていた。
「神聖武装のことなのですね」
「貴様、神聖魔法の極意である神聖武装を知っているのか」
7大天使と戦ったことのある私が神聖魔法を知っているのは当然である。もちろん、創生5大神に祝福を受けた者しか使えない神聖魔法を私は使えない。
「知っているのです」
「そうか……。だがしかし、神聖魔法を知っていようが知るまいが結果は同じことだ。神聖魔法とは魔法の中では最強の魔法だ。亜人のお前がどれほどの力を持っていようが俺様に勝つことはできないのだ。アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハハハハハハ……」
ザフキエルは揺るぎない勝利を確信しているので高笑いが止まらずに顎が外れそうになる。
「あなたの神聖魔法は私に通用しないのです」
「アハハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ、確かに貴様が強いことは認めてやろう。けれどそれは人界レベルの話だ。井の中の蛙大海を知らず、されど空の深さを知れ」
神聖魔法に詠唱はいらない。ザフキエルが願えば神聖魔法は即座に発動する。
「アハハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ。これが俺の神聖魔法だ。なんて素晴らしい光景なのだ。これぞ地上の楽園ではないか!」
ザフキエルの高笑いが止まらない。神聖魔法の発動は他の魔法を凌駕する。一呼吸する暇もなく辺り一面の空には光り輝く数多の聖なる剣が出現した。そして瞬きをする速度よりも速く聖なる剣は、ゲリラ豪雨のごとく大きな音を立てながら無情に降り注ぐ。1秒も経過しない間にザフキエルの立っている場所以外には聖なる剣の森へと変貌していた。
「神聖魔法は私には通用しないだと……、口だけは達者な奴だったな。俺様に舐めた口を聞いたことを地獄で後悔しろ。アハハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ」
ザフキエルは完全な勝利を確信する。
「えい!」
私は馬鹿面で能書きを垂れていたザフキエルの脳天にチョップをお見舞いした。
「ぐぎぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
ザフキエルは天にも届くほどの悲鳴を上げて白目をむいて失神した。
あまりにもあっけない結末なのです。




