ドッキリは大失敗
「サリエル様、ジョフィエル様、やっと仇を討つことができます」
ザフキエルは背中にある4つの白く大きな翼を広げてシュティルの森へ向かう空路でリベンジを報告する。
「俺様はシュプリームに敗北してから100年間も神ウーラノス様の元で過酷な修行に耐えてきたのだ。床掃除やトイレ掃除などウーラノス様の身の回りの世話とウーラノスを楽しませるために様々なことをやらされた。その辛い修行に耐えることができたのは神聖魔法を習得するためだ」
天界とは神と天使そして神獣が住む世界。天界の序列最下位に属する天使は神の召使として身の回りの世話をしている。ザフキエルは天使の序列で上位3隊であるにもかかわらず、神聖魔術を手に入れるため序列最下位の天使たちと共にウーラノスの元に身を投じていた。しかし、ウーラノスはザフキエルに神聖魔法を簡単には授けることはしなかった。
「神聖魔法とは光魔法の進化バージョンと説明されているが実際は違うのだ。神聖魔法とは天界に住む原初の神である創生5大神様に祝福を受けた者が使えるようになる究極魔法なのだ。創生5大神様から祝福を受けるにはいくつかの方法があるのだ。その中で俺様が選んだ方法は創生5大神ウーラノス様に気に入られることだ。神聖魔法を手に入れるため俺様は100年間もアイツのわがままを聞き入れたのだ。この両腕は元に戻せるはずだった。だがアイツは機械の方がカッコいいというくだらない理由で俺様の両腕を廃材で作ったのだ」
ザフキエルは辛い過去を思い出しながら空を翔ける。100年間の苦しみは全て魔王シュプリームへ復讐するためだった。少し復讐の形は変わるかもしれないがザフキエルは満足している。サリエル、ジョフィエルの仇、自分への仇、そして100年間の苦しみを全て吐き出せる時が訪れたからだ。これはもう八つ当たりと言っても過言ではない。
「……。なんだ?なんだお前は?」
シュティルの森の近くを飛んでいたザフキエルの前に誰かが現れた。
少しだけ時間は遡ります。
「やっと声が出せるようになったのです」
私は過酷なダイエットをする為に黒の迷宮の絶望モードを四六時中プレイしていた。その成果もあり私は元のスリムな姿に戻っていた。
「もう殲滅のポロンさんとは大食い対決はしないのです」
私は心に誓を立てる。
「先にロキお姉ちゃんたちは出発したけれども私ならひとっ飛びでラディッシュへ行けるのです」
ロキたちがキャベッジを出発して1日が経過していた。今からラディッシュへ行っても先に到着するので少しのんびり過ごすことにした。
「あれれ~。上空から天使様の光の魔力を感じるのです。ちょっくら挨拶をするのです」
天使が人界へ直接訪れることはないと聞いていた。しかし、なにかしらの事情があって人界へ訪れているのだと私は思った。天使には非常にお世話になったので、良い子の私はきちんとご挨拶をすることにした。
「こんにちはなのです」
私は上空までひとっ飛びして天使を驚かす。
「……。なんだ?なんだお前は?」
私は天使の姿を見て目が点になるが相手の天使も私が急に姿を見せたので目が点になる。
「わ……私は名もない通りすがりのさすらい人なのです。」
私が目にしたのは7大天使とは全く別の天使であった。7大天使に力を授かったことは秘密なので、適当なことを言って逃げることにした。
「俺様は上位天使である座天使ザフキエル様だ!俺様を驚かした罪は大きいぞ」
ザフキエルは冷酷な目で私を睨みつける。
「座天使ザフキエル様、驚かして申し訳ないのです」
天使相手に揉めるのも良くないと判断して謝ることに徹する。
「お前の謝罪などなんの意味も持たないのだ。そうだ!死をもって謝罪しろ」
「お願いなのです。命だけは奪わないで下さいなのです」
直向きに謝る私に対してザフキエルは横柄な態度をとるので私は少しムカついてきた。
仏の顔は三度までです。




