本気のダイエット
走る走るローガンは走る。後ろを振り返らずに全速力で走る。人間の姿のローガンは以前の最弱の体なのですぐにバテる。
「ローガンさん、何をしているのでしょうか」
ローガンは走りつかれてローガンサンの中央付近でバテて倒れ込んでしまった。
「モライス……。はぁ~はぁ~、俺様を助けろ」
「もしかしてケレースさんに負けて逃げてきたのではないでしょうね」
「あんな雑魚に負けるかぁ!ケレースをぶち殺す途中に邪魔が入ったのだ」
ローガンは目を見開いてソールとマーニのことを説明した。
「オリュンポス王国3英傑の金烏玉兎ですか……。確かに神力に目覚めたばかりのあなたでは荷が重いですね」
まだローガンは人知を超えた神力の力と合成魔獣の剛腕を上手く使いこなすことができていない。
「勤勉な俺様なら後1日もあれば問題ない。だから今日だけは逃げることに徹するぜ」
ローガンは今まで何事にも逃げて来た。逃げの嗅覚だけは一級品と言っても良いだろう。
「今後あなたには蒼穹の神の手のリーダーとして頑張ってもらわないといけません。一旦天空神教の総本山があるコラフラウワアーへ退却して体制を立て直しましょう」
「任せたぜ。ガハハハハハハ、ガハハハハハハ」
ローガンは九死に一生を得たが、パースリでの2日天下が終了した。一方、キャベッジでは修業を終えたロキとトールは自信に満ち溢れた顔で宿屋に戻っていた。
「ルシス、ちょっとは痩せたみたいやな」
「はいなのです」
私は結局大食い対決では一度もポロンに勝てなかったが、ロキとトールに怒鳴られたポロンは素直にダイエットに取り組むことを了承して、私とポロンの大食い対決の幕は降りたのであった。私の体重は横綱級から大関級にまで落ちたが、まだお腹が邪魔で地面を見ることができず歩くのにも一苦労している。
「それにくらべてポロンはすぐに痩せたやん」
「エルフ族は痩せやすい体質なのです。一時的に太ってしまいましたが、大食い対決を辞めれば時間の経過とともにすぐに元の体系にもどるのですよ」
ポロンは私の方をチラ見してからほくそ笑む。ポロンは初めからダイエットなど必要なかったのである。私はポロンの手のひらで踊らされていたのであった。
「悔しいのです!」
大食い対決は私だけにリスクのある戦いであり、ポロンにはリスクは無かった。たしかに私の前世の記憶では太っているエルフなどほとんどいなかった。もともとエルフは太りやすいがすぐに痩せるので、スリムな体系を維持しているのである。太っているエルフは稀な存在であった。
「ルシスちゃん、その体での移動は大変だと思うから痩せてから追いかけて来ると良いわ」
「そやそや、馬が可哀そうやで。キャキャキャキャ」
トールは嬉しそうに笑う。
「トール、違うわよ。パースリに行くと戦闘になる可能性が高いのよ。今のルシスちゃんだと動きにくそうだから痩せてから合流した方が良いと言ったのよ」
「似たようなもんやんけ。キャキャキャキャ」
「ルシスさん、私のせいで申し訳ないのです」
ポロンは深々と頭を下げる。ポロンは悪気があったわけではない。
「負けた私が全て悪いのです」
勝負事は負けた者が全て悪い。そして勝った者が正義であるので私はポロンを憎んでなどいない。
「そう言ってもらえると気が晴れますわ」
「そやそや。ポロンは何も悪くないで。キャキャキャキャ」
「ルシスちゃん、私たちは明日の朝にラディッシュへ向けて出発するわね」
「わかったなのです。パパっと痩せて追いかけるのです」
馬車でラディッシュへ向かうには2日間はかかるだろう。しかし、私はマッハの早さで空を飛べるのですぐに追いつくことは可能である。後は痩せることに専念するだけだ。
私はやればできる子なのです。後2日で必ず痩せるのです。




