真実を知る
「ガハハハハハ、ガハハハハハ。もうハーメルンがキャベッジを地獄の底へ落としている頃だろ」
「たしかにそうだ。しかし、お前もキャベッジへ行くべきだっただろう」
ジュピターとケレースは1mmも敗北などありえないと考えている。
「俺が行くまででもないわ。ところでバッカスはどうしているのだ」
「アイツも俺との約束を破って早朝まで酒を飲んで爆睡している……」
ケレースの悪い予感は的中した。
「ガハハハハハ、ガハハハハハ。アイツは天空伸12使徒の面汚しだ。ゼーウス法王様に報告して神力を剥奪させたほうが良いだろう。ガハハハハハハ」
「それはお前も一緒だろう」
「全然違うわ!」
ジュピターは鬼の形相で怒鳴る。
「俺は愛情を注いで作り出した合成魔獣をハーメルンに託したのだ。我が子のように可愛い合成魔獣を預ける俺の気持ちがお前にわかるか。いや、わかるまい。それに引き換えバッカスは何をしていたのだ。お酒を飲んでいただけだろう。今回の功績は俺1人の力によって成し遂げられたのだ。何もせずに酒を飲んでいたバッカスにはそれ相応の罰が必要だ」
「お前の言い分はもっともだ。だが、今回は俺が力を貸したことを忘れてはいけない」
「お前のへんてこな実などなくてもハーメルンは圧勝劇を演じているはずだ。お前は余計なことをしただけだ。ガハハハハハハ」
ジュピターはケレースをバカにするように高笑いをする。その姿を見たケレースは拳を握りしめて怒りを抑え付ける。
「俺は朝までハッスルしていたのだ。もう少し寝かせろ」
ジュピターは二度寝に入る。
『ドンドン、ドンドン』
激しく扉が叩かれる。
「ジュピター様、お休みのところ申し訳ございません。急用です」
「ケレース、俺は寝るからお前が話を聞いてやれ」
ジュピターはケレースに丸投げして眠りに就いて、ケレースは顔をしかめながら扉を開けて対応する。
「どうしたのだ。俺は今忙しいのだ」
「あ!これはケレース様。お忙しいところ申し訳ございません。実はハーメルン様の付き人である男が信じられないことを述べているのです」
「ハーメルンの付き人だと。そんな奴は知らないが話くらいは聞いてやろう」
「キャベッジへ向かったハーメルン様の部隊が全滅したそうです」
「……」
あまりのできごとにケレースは言葉がでない。しかし、自分の聞き間違いだと思いもう一度聞き直す。
「ちょっとよく聞こえなかった。もう一度の述べてみろ」
「キャベッジへ向かったハーメルン様の部隊が全滅したそうです」
「合成魔獣だけが全滅したということだな」
「いえ、ケレース様の神の果実を食べた魔獣人間も逃げた男一人を除いて全滅したそうです」
「あ……ありえないだろう」
ケレースは膝から崩れ落ちた。
「お……俺はゼーウス法王様にどのように報告すれば良いのだ。作戦が失敗したなど言えば俺は神力を失ってしまう。嫌だ。嫌だ。嫌だぁ~」
ケレースは絶叫する。
「やかましいぞ!俺の睡眠の邪魔をするな」
ジュピターはベットから飛び起きて怒鳴る。
「お前のせいだ!お前が寝ているからこうなったのだ」
ケレースはジュピターの胸ぐらをつかんで睨みつける。
「ど……どうしたのだケレース。お……落ち着け」
ケレースの殺気立った顔を見てジュピターはビビった。
「落ち着けだと!これが落ち着いてなどいられるか」
「わかった、わかった、俺が悪かった。一体何が起きたのか教えてくれ」
「キャベッジへ送り込んだハーメルンの部隊が全滅したのだ!」
「それは本当なのか」
ジュピターは信じられない。
「ジュピター様、逃げて来た男から説明をさせましょうか」
「そうだな。その男が嘘を言っている可能性もあるからな」
「わかりました。すぐに連れて来ます」
シンクは急いで戻りローガンを担いで戻って来た。
「ジュピター様に説明しろ」
ローガンはオーバーリアクションで見てきたことを全て説明した。
「それが事実ならば、あの破壊者はCランクいや、もしかしたらBランク相当の腕前になるはずだ。俺1人では荷が重いな」
ジュピターは冷静に戦力差を分析する。
「どうしたら良いのだ。このままでは俺の管理責任が問われてしまう……」
ケレースは不安で押しつぶされそうだ。
「ケレース、まだ作戦は終わっていないぞ」
「だまれ!全てお前のせいだ」
「落ち着け!俺たちがここで争っても意味がないだろう」
「……」
ケレースはぐうの音も出ない。
「ケレース、俺達は目測を誤っていたのだろう。キマイラを倒した時にアイツらをBランクの破壊者だと判断すべきだったのだ。相手がBランクならば俺とバッカスが協力しても勝負がどちらに決するかはわからないだろう。だけどお前が居れば問題はない。どうだ、お前も一緒に来ないか」
「そ……そうだな。まだ失敗だと決めつけるのは早計だった。3人で協力をすれば作戦を成功で終えることができるだろう。シンク、すぐに兵を準備するのだ」
ケレースは新たな天空神軍を徴集させた。
これからが本当の戦いなのです。




