ゲームの時間です
暗闇世界とは、私が前世でプレイしたゲームを参考にして作り出した異空間である。
「ルシス、この地下へ通じる階段はなんやねん」
私たちは黒い海に囲まれた小さな孤島へ到着していた。孤島には草木などの植物は一切生えずに、一面は赤い土で覆われていた。そして、孤島の中心には、私たちを出迎えるように、暗い闇へ誘う地下へと通じる階段が待ち受けていた。
「これは黒の迷宮へ通じる階段なのです。黒の迷宮には、私の作ったゴーレムたちが迷宮内を闊歩していて、侵入者を容赦なく攻撃するように命令を出しているのです。侵入者は襲いかかるゴーレムを倒して先へ進むのです。黒の迷宮は5つの階層から成り立っていますので、まずは第1階層をクリアーすることを目標にするのです」
「地下ダンジョンってことやな」
「そうなのです。しかし、黒の迷宮はそんじょそこらの地下ダンジョンとはレベルが違うのです。1階層に出てくるゴーレムはBランク以上の力を有しているのです。ロキお姉ちゃんとトール親分はDランクと聞いていますので、非常に厳しい戦いになるのです」
「キャキャキャキャ、無理ゲーってヤツやな」
「違うのです。死にゲーなのです」
私が前世でハマったゲームの1つは死にゲーとして有名なゲームであった。私がそのゲームのオマージュとして作り出した世界が暗闇世界だ。しかも難易度設定もできるようにしている。1番簡単な設定が楽園で次に平凡、狂気、絶望の4段階になる。ロキたちには楽園を用意した。
「死にゲーやと。望むところや」
「そうね。覚悟はしとかないとね」
ロキとトールは恐れよりも強くなりたいという気持ちが強いので臆することはない。
「では、横の小屋へ入るのです」
「え?」
「え?!」
2人はキョトンとした。地下へ通じる階段の横には小さな丸太小屋がある。私は丸太小屋へ入るように促した。
「レッツゴーなのです」
「ちょっと待てや」
「ルシスちゃん、黒の迷宮へ入るのではないの?」
「あれはハリボテなのです。本当の黒の迷宮へ入るには丸太小屋へ行くのです」
「ようわからんが入ればええんやろ」
「わかったわ」
2人は渋々丸太小屋へ入る。
丸太小屋にはベットが4台用意されていた。そして、ベットの横には小さな液晶パネルが置いてある。
「ベットしかないやんけ」
「そうなのです。あのベットがフルダイブ型ゲーム黒の迷宮をプレイできる装置なのです」
「ルシスちゃん、ちょっと、何を言っているのかわからないわ」
異空間を改良して作り出したのが黒の迷宮だ。しかし、改良といってもアリエルが作った異空間と原型は同じである。ベットで寝て魂だけが異空間へ招待される。そして、そこで得た力などは本来の自分の体へ還元される。アリエルの異空間との違いは1つだけである。それは自分で出入りが自由なことである。ベットの横に置いてある液晶パネルでログインすれば黒の迷宮へ招待されて、黒の迷宮内にあるセーブポイントを使えばログアウトすることができる。私はそのことを2人にきちんと説明をする。
「なんで魂だけやねん。体ごと行ったほうが便利やろ」
「私もそう思うわ」
2人が言っていることは正しいように思えるが実際は大間違いである。
「私が作った黒の迷宮を舐めないのです」
私は珍しく大声で怒鳴る。
「どないしてん、ルシス」
私が怒鳴ったのには理由がある。
「黒の迷宮は死にゲーなのです。おそらく、お2人は最初に出くわした最弱のゴーレムに瞬殺されるのです。もちろん、魂だけが招待されているので肉体は死なないのですが、死なないかわりに悶絶する苦痛を一定時間体感することになるのです」
2人がプレイするのは楽園モードだが、楽園モードの第1階層をクリアするにはAランクの実力が必要となる。このゲームはソロで挑むのが通常であるが、2人というハンディがあったとしても、初見で最初に出現するゴーレムには勝つことはできないだろう。2人には死の苦痛と恐怖を体験しながら、自分たちに足りない力をつけてもらうつもりだ。ルシス式基礎訓練は生半可な気持ちで挑戦することは許されない。私は2人を強くするために、頭に闘魂と書かれた鉢巻をして、右手にカラーバットを持ち鬼コーチのコスプレをした。
さぁ地獄の基礎訓練が開催されるのです。




