2色の魔石
「3号ちゃん、順調に進んでいますか」
「こちら3号です。ロキさんの魔石の2分割に成功致しました。次は魔石の回路を繋ぎ新しい属性へ魂を植え込みます」
「ご苦労様なのです。引き続き慎重にオペを進めるのです」
「はい。ルシスお姉様」
「4号ちゃん、そちらはどうなっているのですか」
「こちら4号です。トールさんの魔石の2分割に成功致しました。こちらも魔石の回路を繋ぎ新しい属性へ魂を植え込みます」
「ご苦労様なのです。引き続き慎重にオペを進めるのです」
「はい。ルシスお姉様」
私は表向きにはオペをしているマネをしていた。しかし、実際は違うのである。2人を仰向けに寝かせたのにはきちんとした理由がある。胸を切り裂いて魔石を改造することは可能だが、この世界は魔法や能力などが存在して、前世の世界とは違うのである。私は2人のお腹を切り裂くのではなく別の方法で魔石の改造をしていた。
私は1mmにも満たないゴーレムを作るのに成功していた。その極小のゴーレムに魔石の改造を行える能力とガブリエルの能力である以心伝心を改良して作った遠感の能力を備え付けた。これにより魔石の改造に特化した完璧究極生命体が誕生したのである。
私は3号と4号にロキとトールの鼻の穴から体内に侵入して、魔石の改造をするように指令を出した。そして2人はロキとトールの体内へ入り、魔石の改造にほぼ成功したと言えるであろう。
「2号ちゃん、汗」
「はいなのです」
私はオペの筆頭医師として責務を果たしている。しかし、2人にも目で見える形を示すために、白衣を着てメスを持ち汗を拭いてもらうなどの演出をしているのであった。雰囲気作りはとても大切なことである。
「ロキお姉ちゃん、トール親分、オペは無事に終了したのです」
3号と4号が2人の鼻の穴から出てきたのでオペは無事に成功した。
「え?いつの間に」
「ほんまでっか」
2人が驚くのは当然だ。2人は全く痛みも感じていない。
「3号ちゃん、4号ちゃん、術後の様子を説明するのです」
「……」
「……」
あまりにも小さい3号と4号を視界で確認することは難しい。そしてそんな小さい2人が言葉を発しても声が小さくて何も聞こえない。
「ルシスちゃん、ちゃんとわかるように説明して」
ロキはベットで横になっているうちに、オペが終わったと告げられても納得することはできない。
「実はかくかくしかじかなのです」
私は3号と4号のことを説明した。
「ほんまでっか」
先に声を上げたのはトールだ。信用しろと言う方が難しいのかもしれない。肝心な3号と4号は見えないうえに声も小さくて聞こえない。
「トール、ルシスちゃんを信じるしかないわ」
「……そやな」
トールは渋々納得する。
「2色となった魔石は直に体と馴染むと思うのです。実際に2色になったかどうかは体で感じ取ると良いのです」
「そらそやな。試せば一目瞭然やな」
トールはベットから起きて外に出る。
「トール、気が早いわよ」
ロキも慌ててベットから起きてトールを追う。
「ロキ、これを見ろよ」
トールはロキに右手を差し出した。
「すごいわ」
トールは右手から火花を散らしていた。
「俺は自分の属性である土属性の身体強化に全力を注いできた。だから属性外である天属性(天変地異の属性、雷や地震など自然界に起きる現象)はまったく練習してないねん。でも、これを見ろよ。天属性の雷をイメージしたら簡単に手から火花が散ったわ」
「すごいわ。私も試してみるわ」
自分の属性以外の魔法も使うことはできる。生活魔法程度の威力なら、属性外の魔法を練習する者は多い。しかし、破壊者は命がけの戦いに身を投じる。中途半端な力しか発揮できない属性外の魔法を使うことは死に即決する。だから、それぞれが得意分野の魔法に磨きをかけて、お互いのできない所を補い合うのである。
ロキは氷をイメージする。すると手から水滴が現れて、パキパキと音を立てながら凍り付く。30秒ほどが経過するとロキの右手は凍り付いていた。
「すごいわ。でも、これからが大変ね」
「そやな。今から新たな属性を自分のモノにするのにはかなりの時間がかかるはずや。でも、問題ないやろ。2属性を使いこなせれば確実に強くなるはずや」
2人は今まで1つの属性を極めるためにこれまでの人生を費やしてきたと言っても過言ではない。そして、また新たに1から別の属性を伸ばすのには同じ時間がかかるかもしれない。しかし、伸び悩んでいた2人には吉報でしかないのであった。
私にはまだ秘策があるのです!




