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忍び寄る恐怖

 「1号ちゃん、ただいまなのです。キャベッジは問題なく平和でしたか?」

 「いえ、ルシスお姉様。天空神教の信徒が合成魔獣を率いてキャベッジを襲ってきたのです。でも、問題はないのです。私がぱぱっとさらっと退治したのです」



 1号は誇らしげに言うが、製造責任者の私はすぐに理解する。



 「うん。2号ちゃんが退治したのですね」

 「さすがルシスお姉様です。私の策略と2号の魔法で無事にキャベッジとポンコツ3人衆を守ることができたのです」


 「1号ちゃん、口は禍の元なのです」

 


 1号の口が悪くて性格がひねくれているのには理由がある。その原因は……ずばり私だ!

 私は3年間の修業の最後の1年間は、自由に修業することができたので、最強のゴーレムを作ることに挑戦した。もちろんゴーレムを作るのは遊びではない。7大天使の能力(スキル)をどのように使いこなし、さらに応用することが求められる。そこで、私はカマエルの能力(スキル)全知全能で作り出したアカシックレコードにて、最強のゴーレムの作り方を調べる。ゴーレムは、いくつかの素材と特殊な土、そして魔力を込める魔石を入手すれば作ることができる。でも私が作り出したかったのは最強のゴーレム、すなわち完璧究極生命体パーフェクトクリーチャーだ。一般のゴーレムは単純な命令に従うロボットだが、私が作り出したいのはロボットでなく自我を持つアンドロイドである。そこで、自我を持たせるためにアズラーイールの能力(スキル)生殺与奪を応用して、人工の魂を作り出すことに成功した。これにはアズライールも驚いていた。


 しかし完璧究極生命体パーフェクトクリーチャーを作る道のりは簡単でない。人口の魂を作り出すことには成功したが、人工の魂に宿る自我のサンプルが必要となる。0歳児の赤子のように言葉や文字などを1から覚えさせるのも1つの手段だが、成長するのにかなりの時間が必要となる。そこで私は自分の細胞を人工の魂に組み込んだのである。私は8歳の子供だが、実際は16歳の女子高生の記憶も存在する。8歳の子供の心と思春期の不安定な16歳の心、2つの心が宿る人工の魂は、純真無垢な心を持つ優等生を生み出すことはできなかった。そう……1号は私の悪い部分が強調されて生まれたと言えるだろう。

 そして、理由はもう1つある。それは育て方の問題だ。完璧究極生命体パーフェクトクリーチャーを作るには様々な素材が必要となる。しかし、修業の場である異空間(アナザーワールト)には素材は存在しない。そこで私はある人物に頼んで素材を運んでもらえるようにお願いした。ある人物は快く承諾してくれたが、遊び相手として1号の貸し出しを要求する。私は断る理由もないので承諾したが、性格を形成する大事な時期とは知らずにある人物へ貸し出したのは間違いだったのだ。




 「以後気を付けるのです」



 1号は私にはとても従順で可愛らしい存在だ。



 「反省できて偉いのです」



 私は1号の頭をナデナデする。



 「デヘヘヘヘヘ、デヘヘヘヘヘヘ」



 1号は頬を赤くして喜ぶ。



 「ルシスお姉様、1号ちゃんだけおずるいのです」



 2号が顔を真っ赤にしてしかめっつらをしていた。



 「2号ちゃんも私を迎えに来てくれたのですか」

 「おもちろんです。私はお首をお長くしてお待ちしていたのです」



 1号は試作品だったので、戦闘要素を備えずにぬいぐるみを作る感覚で作成した。だが2号は違う。2号は私の分身体として、戦闘要素に特化した要素を取り組み、なおかつ1号の失敗要素を改良して作り上げたはずだった。しかし、私は16歳の女子高生。しかも、異世界転生アニメや小説ゲームなどが大好きのオタク女子だ。2号には1号とは違い礼儀正しい淑女にするつもりだったのだが、言葉の頭に()をつければ丁寧な言葉になるという私の浅はかな知識により、なんでもかんでも()をつけて喋るようになった。



 「2号ちゃん、ラスパのメンバーを守ってくれてありがとなのです」



 私は2号の頭をナデナデする。すると2号は頬を赤く染めて喜んだ。



 「お2人は役目を無事に終了できたので、お菓子の国(スイーツランド)へ戻るのです」

 「わかりました。しかし、御用のある時はいつでもお呼びくださいなのです」

 「おわかりました。1号ちゃんとお同様にお御用のある時はおいつでもお呼びください」



 私が指パッチンをすると2人の姿が消えた。

 お菓子の国(スイーツランド)とは、私が何度も夢に出てきたお菓子で作られた国を再現した異空間(アナザーワールド)である。2人はいつでも自由に現実世界とお菓子の国(スイーツランド)を行き来できる能力(スキル)が備わっているのである。私は2人をお菓子の国(スイーツランド)へ戻してから、キャベッジの門を通って宿屋の部屋へ戻る。



 「ルシスちゃん、おかえりなさい」

 「ただいまなのです」



 ロキは笑顔で出迎えてくれたが、早く帰って来たことに全く触れないので、ドッキリは失敗に終わる。



 「ルシスさん、おかえりなさい。お勤めご苦労様でした」

 「ありがとうなのです」



 ポロンも笑顔で出迎えてくれた。



 「ルシス、待ってたで。俺たちに何か言いたいことがあるやろ」



 トールは冷徹な目で私を見る。



 「え~とですね」



 私は冷や汗をたらりと流す。なぜならば、思い当たる節があるからだ。2号は頼りになる存在だが、1号の影響で口が少し悪くなる一面もある、一方1号は態度と口が悪いので、トールを怒らせる原因となる可能性を感じていた。けれども2人は双子のように仲が良いので1人だけ呼び出すのは忍びなかった。



 私は今から説教をされるのであろう……。

 

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