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報復

 「小さなルシスが2人もいるやん」

 「2号、やっぱりコイツは殺処分するのです」

 「1号ちゃん、お我慢するのです。度重なるお無礼千万はお殺処分にお相応しいお結論だと思いますが、今はそのお時ではありません 」

 「トール、あなたはちょっと黙っていて、私が2人から事情を聴くわ」



 ロキはトールが喋ると小さいルシスが怒って収拾がつかないと判断してトールを黙らせることにした。



 「あなた達はルシスちゃんのお友達なのかしら」

 「ルシスちゃんではなくルシス様が正解なのです。しかし、お前はルシスお姉様を助けた恩人なのでちゃんづけでも許してやるのです。そして、私にはルシスお姉様から授かった聡明で荘厳な名前があるのです」

 

 「あなたたちのお名前を教えてくれないかしら」

 「私の名は小ルシス1号なのです」

 「私は小ルシス2号です」

 「全然聡明でも荘厳でもないやん。ルシスのネーミングセンスはダメダメやな」


 「トール!黙りなさい」

 「へいへい。お口にチャックでもしとくわ」

 

 「1号ちゃん、2号ちゃん、トールの代わりに非礼をお詫びします。ごめんなさい」

 「ロキが謝ることはないのです。後でルシスお姉様の許可をもらって、大食い糞野郎は殺処分するのです」

 「ルシスお姉様へのお失礼なお発言はお万死にお値するのです」


 

 小ルシスの怒りは止まらない。



 「私から後できつく叱っておくので程々にしてね。それよりも詳しい事情を聞かせてもらえないかな?」



 ロキは笑顔で小ルシスに問いかける。



 「私たちは超越した力を持つルシスお姉様が、愛と情熱と魔力を込めて作り出された完璧究極生命体パーフェクトクリーチャーなのです。私たちはルシスお姉様より劣等生物であるお前達を守るようにと指令をたまわったので、助けに来たのです」

 「私たちを助けてくれてありがとう」


 「くるしゅうないのです。ケケケケケ、ケケケケケ」

 


 1号は嬉しそうに笑う。



 「1号ちゃん、お説明はそのへんにしておきましょう。ルシスお姉様にお狼藉をおはたらいたおヤツをお裁きする時がきたのです」



 この場に居た全ての魔獣人間は光の矢が突き刺さって死んだ。しかし、魔獣人間でないハーメルンは生き延びていた。いや、むしろ生かされていた。



 「……」



 ハーメルンは、突然空から多量の光の矢が降り注ぎ、魔獣人間が全滅する姿を見て呆然と立ち尽くしていた。



 「メインディッシュを残していたのを忘れていたのです。あのうすらトンカチだけは、この私のミラクルパンチでタコ殴りしないと気がおさまらないのです」

 「1号ちゃん、ルシスお姉様のお仇をお討つのは、私にお任せてください。1号ちゃんはお地獄のお業火にお焼かれるおヤツのお悶えるお姿をおめめにお焼きつけるとよいのです」


 

 これは絶対に譲れない戦いなのである。



 「私がやるのです」



 先に動いたのは1号であった。1号は背中の翼をパタパタと羽ばたかせて、右手を伸ばし左手は腰にあてて、猛スピードでハーメルンに激突した。



 『グチャ』

 


 1号はハーメルンに激突するとそのまま地面に落下した。ハーメルンは全く痛みを感じない。しかし、へんてこな虫が体にぶつかったと思い、地面に落ちた虫を足で踏み潰したのである。そして、踏み潰された1号は泥となり、泥からは透明な霊魂が浮かび上がってきた。



 「惜敗だったのです……」

 「いや、惨敗やろ」



 その一言を告げると霊魂は消え去り、トールは大声でつっこんだ。


 「2号ちゃん、これはどういうことなのかしら」

 「1号ちゃんはルシスお姉様がお最初にお作りした人造人形(ゴーレム)なのです。お偉大なるルシスお姉様がお作りになる人造人形(ゴーレム)には、人造魂がお組み込みされていますので、自由意思があるのです。これはまさに完璧究極生命体パーフェクトクリーチャーとお言えるでしょう。しかし、1号ちゃんは初期ロットのお試作品なので、お非常にもろくお壊れやすくお弱いのです」

 「ポンコツやんけ」


 「トール黙りなさい」

 「聡明なるルシスお姉様がおポンコツをお作りになることなどお絶対にありえません。何かお深いお考えがおありになるのでしょう」


 「そうなのかもしれないわね。でも1号ちゃんは死んでしまったわね」

 「やっぱりポンコツやん」


 「愚昧な頭脳をお持ちな大食い糞野郎さんには、明哲な頭脳をお持ちなるルシスお姉様のお考えをお理解するのはお不可能なのです。全ての叡智をお知りなるルシスお姉様は、人造人形(ゴーレム)の継続蘇生化にお成功しております。お1時間もお経過すれば1号ちゃんはお復活するでしょう」



 私の作った人造人形(ゴーレム)は、自由意思があり壊れても1時間経過すれば復活するようになっている。これこそまさに完璧究極生命体パーフェクトクリーチャーである。

 


 「あの鬱陶しいルシスは復活するんかい」



 トールは嫌そうな顔をする。



 「トール、黙りなさい。ごめんね、トールが失礼なことを言って」

 「ロキさん、お気遣いありがとうございます。しかし、お問題はおありません、私は1号ちゃんと違ってお礼節をわきまえております。どのようなお失礼なお態度をとられても、ルシスお姉様が保護対象者とお指名されたお相手をお殺すことなどないのです。しかし、お少々おムカついてきましたので、このおムカついたお心をお沈めるためにも、1号ちゃんをお踏みになりルシスお姉様へおいたをはたらいたあんちきしょうをお懲らしめたいと思います」



 2号は怒りの形相でハーメルンを睨みつける。ハーメルンはまだ事態を飲み込めずにおどおどした顔で怯えていた。



 「あなたはお大きなお罪を犯してしまったのです」

 「誰だ、誰が声を出しているのだ」



 ハーメルンは2号の姿に気付いてはいない。



 「私はルシスお姉様からお力をお少しだけお頂いたのです。私が使えるお魔法はルシスお姉様の1000分1にお満たないお威力しかありませんが、あんちきしょうをお懲らしめるにはお十分なお力だと思います。ルシスお姉様においたをはたらいたことお地獄でお後悔するのです。炎祭り(バーンパラダイス)



 2号は詠唱を省略した魔法名を呟いた。するとハーメルンの体は炎に包まれて、地獄の熱さにダンスを踊るように激しくのたうちまわるのであった。




 因果応報なのです。



 

 

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